花邑の帯あそび

1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…

「ペイズリー文様」について

2013-05-08 | 文様について

presented by hanamura ginza


さわやかで過ごしやすい日が続いていますが、
立夏を迎え、陽射しがだいぶ夏めいてきました。
風に揺れた木々の若葉が、
陽光に照らされて、
きらきらと輝いています。

すくすくと葉を広げる「目にまぶしい」若葉をみると、
木々のもつ生命力があらためて感じられます。

樹木は古来より世界各地で生命を象徴するものとされてきましたが、
信仰の対象になってきたのもうなずける光景です。

古代のエジプトの神話やインドの聖典、聖書には
生命の樹とよばれる樹が登場し、
仏教における宇宙樹、イスラム教における天上の樹など、
樹木はその姿を少しずつ変えながらも、
広い地域の異なる文化で同様に信仰されてきました。

今日お話しするペイズリー文様は、
その生命の樹が由来となってつくられた文様だといわれています。

ペイズリー文様は、
サーサーン朝ペルシャ ( 224 年~651 年) で考案された文様が
もとになっているとされています。

ペルシャのルネサンス期ともよばれるこの時代、
ペルシャでは芸術に対する意識が高まり、
さまざまな芸術品や工芸品が生み出され、
宮殿のデザインも凝ったものになっていきました。

そのなかで、ペイズリー文様は草花文様や幾何学文様とともに
宮殿の壁画などの装飾に用いられるようになりました。

このペイズリー文様は、
ペルシャと交流が盛んだったインドにも伝えられ、
カシミール地方で織られていたショールや、
更紗の意匠に取り入れられ、シルクロードを渡って世界中に広められました。

そして、抽象的なかたちから、
勾玉や、仏陀の足跡、マンゴー、水滴や炎、糸杉など、
その国々により、さまざまな解釈がなされてきました。
いずれにしても、生命の力をあらわした文様だと考えられていることから、
「生命の樹」とよばれることもあります。



上の写真は、
印度でつくられた更紗布からお仕立て替えした半巾帯です。
唐花と組み合わされたペイズリー文様が全体に散らされた、
素朴でかわいらしい雰囲気の更紗です。

19世紀にインドがイギリスの植民地とされると、
インドのショールを模倣したショールが
スコットランドのペイズリー市でつくられるようになりました。
東洋趣味の流行も伴って、ペイズリー文様のショールはたいへんな
人気となったようです。

「ペイズリー」という名前も、このペイズリー市からつけられた名前のようで、
その時代にペイズリー文様がいかに多くつくられ、広められたのかを
この名前からうかがい知ることができます。






上の写真は、
昭和初期ごろにつくられた和更紗からお仕立て替えした名古屋帯です。
ペイズリー文様で、日本の伝統文様である七宝をあらわしています。
和洋折衷な意匠が面白く、洒落た雰囲気です。

このように、ペイズリー文様が国を越え、時代を越えて
文様として広く永く用いられてきているということにも、
ペイズリー文様の持つ生命の力が感じられます。

※上の写真の「ペイズリー文様 印度更紗 半巾帯」と、「唐花七宝文様 和更紗 名古屋帯」は花邑 銀座店でご紹介している商品です。

●花邑 銀座店のブログ、「花邑の帯あそび」次回の更新は 5 月 22 日(水)予定です。
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