presented by hanamura ginza
5 月も半ばを過ぎ、
初夏めいた陽射しになってきています。
沖縄では、梅雨入り宣言がだされたようですが、
東京でも爽やかな風に、少しずつ湿気が混じるようになってきました。
白い蕾をつけた紫陽花が、いちはやく梅雨の訪れを知らせています。
さて、初夏の風物といえば、
紫陽花や初鰹、藤の花などが思い浮かびますが、
田植えを終えたばかりの田んぼもまた、初夏の風物のひとつといえますね。
陽射しに照らされてきらきらと輝く水面や、
風に揺れる小さな苗、
田んぼに響く蛙の合唱といった田園の風景を思いおこすだけでも、
郷愁が誘われますね。
里山の田んぼには、水車が設置されているところもあるようで、
ゆっくりと回る水車の光景は、
眺めているだけでも涼しげです。
現代では水車を見ることは少なくなってきましたが、
水車を使用している田園では、
水車が回りはじめると夏の訪れを感じるようです。
水車は、世界各地で古くから使用されてきた原動機のひとつです。
ヨーロッパでは、電動機が発明されるまで、
脱穀や製粉などに用いる大切な動力となっていました。
また、日本でもすでに平安時代のころより
田んぼに水を張るための灌漑用水車が用いられ、
鎌倉時代になると農業に欠かせないものとして、
広く普及していきました。
江戸時代中期には、農業でけではなく、
精米用や製粉、酒造り、菜種の油しぼりの動力源としても
水車が用いられるようになり、
各地で水車が回る光景がみられるようになりました。
大切な動力として、1 年中休むことなく回りつづけていた水車には、
「精出せば凍る間もなし水車」
という句も残されています。
当時、浮世絵師の葛飾北斎があらわした「富嶽三十六景」の中には、
こうした水車と富士を組み合わせた絵が残されています。
「穏田(おんでん)の水車」とよばれる作品で、
現在の東京都渋谷区の神宮前周辺にあった
穏田(おんでん)川にかかる水車の情景が描かれています。
その絵の中では、回り続ける水車に、
どっしりと佇む富士を組み合わせることで、
動と静のコントラストが
叙情豊かに表現されています。
着物の意匠では、水辺をあらわし、涼を誘うものとして、
水車の文様が多く用いられています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0f/ab/9460c8a569d35fa34274d4c99d63c463.jpg)
上の写真は、
昭和初期につくられた絹縮みの意匠です。
船や貝などの水辺をあらわす文様とともに、
水車の文様があらわされています。
カラフルに染められた水車の意匠がかわいらしいですね。
このように、季節のモチーフがあらわされる着物もまた、
これからの季節を彩る大切な要素のひとつですね。
※上の写真の上の写真の「波文に水車と船文様 型染め 絹縮み 名古屋帯 」は花邑銀座店でご紹介している商品です。
●花邑 銀座店のブログ、「花邑の帯あそび」次回の更新は 6 月 5 日(水)予定です。
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