花邑の帯あそび

1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…

「薔薇(ばら)文様」について

2010-04-20 | 文様について

presented by hanamura


ようやく暖かくなったと思ったら、
また寒くなってしまう不安定な日々が続いています。

近年では今年ほど、
春の到来を待ちわびている年はないでしょう。

この季節に咲く花たちや、
その花の蜜を吸う鳥や虫たちも、
春の訪れをじっと待っているようです。

春を謳歌するように咲く
色彩豊かな花たちの姿は、
昔から人々を魅了してきました。

そうした花々は文様のモチーフとしても
数多く登場します。

今日は、その花の中でも
最もポピュラーな花といってもよい
薔薇(ばら)の文様についてお話ししましょう。

薔薇は結婚式や誕生日などの祝い事に
贈られる花として最も人気があり、
現在では誰もが知っている花ですね。

その華麗な姿は、
古代から人々を魅了してきました。
古代のギリシャでは
薔薇は「花の女王」とされ、
ギリシャ神話の中では
愛と美の女神ヴィーナスに捧げられたりもします。
また、クレオパトラはとても薔薇を愛し、
寝室には薔薇の花びらを散りばめていたようです。

このように「薔薇」というと、
西洋の花というイメージが強いのですが、
原産地は現在の中国とミャンマーなどの中近東です。
そこから、世界各国に伝えられました。

薔薇は日本にも古くから伝わり、
平安時代に編纂された「万葉集」や「古今和歌集」にも
詠まれています。

また、日本は昔から薔薇が多く自生する国でもあります。

しかし、昔は梅や桜のように
文様のモチーフとなることは
少なかったようです。

侘び寂びを好み、潔さを尊しとした
武士の社会が長く続いた日本では、
華麗で豪華な薔薇は、
敬遠されたのかもしれません。

しかし、明治維新を迎え、
西洋の文化が日本に多く伝えられるようになると、
日本でも薔薇が多く栽培されるようになりました。
そして、着物や帯の意匠として
文様化されました。



上の写真の薔薇文様の名古屋帯は、
大正~昭和初期頃につくられた着物をお仕立て替えしたものです。
当時作成された薔薇文様の中では、シックな色合いと意匠で作られています。

大正時代には、
西洋文化への憧れや浸透とともに
華やかな「大正ロマン」が流行し、
薔薇文様は西洋を象徴する花としてたいへん人気を博しました。

この時代につくられた薔薇文様の着物や帯には、
鮮烈で斬新な意匠のものが多くみられます。

日本において、
薔薇の華麗な姿は春を告げるとともに、
新しい時代の到来をも告げる象徴となったようです。

※写真の名古屋帯は花邑銀座店にて取り扱っています。

花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は4月27日(火)予定です。


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