花邑の帯あそび

1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…

「扇子文様」について2

2010-05-18 | 文様について

presented by hanamura


風薫る爽やかな季節になりました。
ここ東京では、五月晴れの日がつづいています。
この季節は、気温が高くても
湿気がなく、とても過ごしやすいですね。
吹く風もとても心地良いものです。

さて今回は、前回に引き続き、
「風」を送る道具、
扇の文様についてのお話です。

扇は、日本ならではの繊細な技術力と、
美意識が融合した身近な「道具」です。
また、「道具」としてだけではなく、
その美しい姿から、
美術品としても扱われてきました。
扇文様の中には、
そうした美術品としての扇子を意匠化したものもあります。

竹や檜、黒壇などでできた扇の骨の上には
和紙をはじめとして絹布などが貼られていますが、
この扇面の部分を「地紙」とよびます。
地紙には持つ人の美意識に訴える、
さまざまな絵や文様などの意匠が描かれます。

地紙にそうした意匠が表されるようになったのは
平安時代の頃のようです。
地紙をキャンバスのようにして、
絵や文様のほか文章や詩などが表現されました。

昔は、さまざまな意匠の地紙を売り歩く
「地紙売り」が家々を訪れ、
地紙の貼り替えなども行っていたようです。

江戸時代の絵師で有名な、
「風神雷神図屏風」を描いた俵屋宗達は、
京で「俵屋」という絵画工房を営んでおり、
この「俵屋」が作った地紙は
とくに市井の人気を得ていたようです。

この地紙のみを意匠化した扇文様を
とくに「地紙文様」とよびます。



扇は、室町時代の貴族の間で「扇流し」という
風雅な遊びにも用いられました。
「扇流し」とは、流れる川に扇を落とし、
川の流れに浮かぶ扇の様子を愛でる遊びです。

この「扇流し」を意匠化したものが
「扇流し文様」で、流水に扇が散らされた様子が
意匠化されています。

また、江戸時代には
「花扇(はなおうぎ)」とよばれる豪華な扇が作られました。
「花扇」とは、
ススキ・女郎花・桔梗・撫子・菊・萩・蓮という
七種類の初秋の草花を扇形に束ねて、
水引きで飾ったものです。
七夕の日に公家から皇室に献上され、
飾られていました。

この花扇も扇面が花束のようにあらわされ、
「花扇文様」として意匠化されました。


そのほかにも扇文様には、
三つの扇を繋げて円にした「三つ扇文様」や
4つの閉じた扇子を菱形に配した「扇菱(おうぎびし)文様」、
公家たちがハレの日に用いた檜でできた扇子、
「檜扇(ひおうぎ)」をあらわした「檜扇文様」などがあります。

このように扇の文様の数々をみていくと
さまざまな場面で用いられてきた扇の姿を知ることができます。
風流で趣きのある扇文様は、
着物や帯の意匠としても数多く用いられていますね。

さらに扇文様には、破れた扇面を意匠化した
「破れ扇」という文様もあります。
扇を使っていくうちに、
扇面は、やがて汚れ、破けていくのが自然の摂理です。



破れ扇(やぶれおうぎ)文様は、
「もののあはれ」を美とした
日本ならではの実に風流な文様といえますね。

花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は5月25日(火)予定です。


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