花邑の帯あそび

1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…

「蛸唐草文様」について

2012-08-08 | 文様について

presented by hanamura ginza


8月もまもなく半ばですね。
暦の上では、立秋を迎えましたが、
相変わらずの暑さが続いています。

入道雲が浮かぶ青空の下、
道を歩いていると、
汗が吹き出てくるにつれ
アイスが恋しくなってきます。
最近では、とくにいろいろな味のアイスが増え、
塩バニラや白クマなどのものめずらしいものもたくさんあって、
選ぶのにも迷ってしまうぐらいです。

また、旅行に行くと、
巨峰やシークワーサーなど、
その地方の特産品が
アイスのフレーバーになっているものがあって、
そのようなアイスに出会うと
旅の気分もいっそう盛り上がるものですね。

そういったご当地品のアイスのなかでも、
とくにめずらしいアイスといえば、
岩手県でつくられている「たこアイス」ではないでしょうか。
この「たこアイス」はアイスの中に、
蛸の切り身が入っているそうですが、
どんな味がするのか、
こわいもの見たさでチャレンジしてみたい気もします。

それにしても、蛸をアイスに入れるとは、
古来より蛸を食してきた日本ならではの
アイデア(?)ともいえますね。
日本は、世界中で採れる蛸の60%を消費している
といわれるほど身近な食材です。

弥生時代の遺跡からは、
蛸壺形の土器が多数出土するなど、
日本人と蛸の関係にはとても古い歴史があります。
八本の足をもつ蛸は、
末広がりとも結びつき、
縁起が良いものともされてきました。

日本の伝統文様のなかには、
この蛸にちなんだ
「蛸唐草(たこからくさ)」とよばれる文様があります。

今日は、その蛸唐草文様についてお話ししましょう。

蛸唐草文様とは、渦巻き状の唐草の片側に、
抽象的な葉の文様を付けてあらわされる文様です。

蛸唐草文様の原型とされる唐草文様の由来は、
古代エジプトでまで遡ることができます。

唐草文様は、古代エジプトから古代オリエント、古代ギリシャ、
古代インド、古代中国を経て、飛鳥時代に日本にもたらされました。

古代エジプトでは、蓮をモチーフにした「ロータス」と呼ばれる
唐草文様がつくられましたが、
各国でその土地の文化と結びつき、
さまざまな唐草文様が誕生しました。

蛸唐草のような、葉の付いた唐草文様が見られるようになったのは、
10世紀初頭の中国です。
当時中国でつくられた陶器には、
そのような文様が多く描かれていました。

日本にこの文様が伝えられたのは、
鎌倉時代のようです。
やがて、この葉の付いた唐草文様の形が
蛸の足のように見えることから、
「蛸唐草」というよび名が付けられました。

この蛸唐草文様が人気となったのは江戸時代の中頃です。
当時、佐賀県や長崎県を中心とした肥前国でつくられていた伊万里焼には、
この蛸唐草文様を描いた器が多く作られています。

伊万里焼の陶器は、
当時人気になった屋台の料理屋でも使用され、
伊万里焼の人気に伴って蛸唐草も広く知られるようになりました。

ちなみに、当時作られた伊万里焼は、
現代では古伊万里と言われ、
コレクションされている方も多いのですが、
伊万里焼に描かれる蛸唐草文様は、
時代が下るにつれて、
渦や葉の文様が大きくなっていくようで、
時代が古いものほど蛸唐草が緻密のようです。

蛸唐草は、着物や帯の意匠にも用いられていますが、
その数は多くありません。
花邑に入ってくる素材のなかでも
目にすることは比較的めずらしいといってもよいでしょう。



上の写真は、生紬の地にその蛸唐草を
大胆に型染めであらわしたものです。
のびやかな曲線が煤色の地に美しく映え、
シンプルながら、存在感がある名古屋帯です。
伊万里焼にあらわされる連続的な蛸唐草文様とは
またひと味違った魅力が感じられますね。

こちらの名古屋帯は、最近作られたものですが、
蛸唐草文様は、現代でも人気があります。
蛸唐草文様があらわされた陶器を
好んで選ばれる方も多いほどです。
シンプルだからこそ、
色褪せない魅力があるのでしょう。
蛸唐草という名前にも親しみが持てますね。

さて、実際の蛸の話に戻りますが、
蛸の成分に含まれているタウリンは、
夏バテを防ぐとも言われています。
今年は残暑が厳しいといわれていますので、
意識的に蛸を食すのもよいかもしれません。
そのままお刺身にしたり、
お酢にさらしたり、
たこ焼きにしたりと
その調理法はさまざまです。

まさにひっぱりだこといったところでしょうか。

※上の写真の「煤色地 蛸(たこ)唐草文様 生紬 名古屋帯」は、花邑銀座店でご紹介している商品です。

花邑 銀座店のブログ、「花邑の帯あそび」次回の更新は 8 月 23 日(木)予定です。

帯のアトリエ 花邑-hanamura- 銀座店ホームページへ
   ↓


最新の画像もっと見る

コメントを投稿