花邑の帯あそび

1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…

「結び文文様」について

2011-11-02 | 文様について

presented by hanamura ginza


まもなく立冬。
柿の実が色づく季節となりました。
橙色の柿の実を見かけると、
もうすぐ冬がやってくるのだという実感が湧いてきます。

明日の文化の日には、
晩秋の景色を眺めにお出かけ
というのもよいかもしれませんね。

七五三も間近ということで、
神社に行くと、お宮参りに来た華やかな衣装を身にまとった子供の姿も
見ることができそうです。

お宮参りをはじめ、初詣に成人式と、
これからの季節は、神社やお寺に行く機会が多くなります。

お参りも、もちろんですが、
初詣のときには、おみくじを引かれる
という方も多いのではないでしょうか。

神社やお寺にある木や縄には、
細く折りたたんだおみくじが
結ばれている光景をよく目にします。
木や縄に結ばれた幾つものおみくじの白い紙は、
遠くから眺めると、真っ白な花が咲いているようにも見え、
渋い色合いの境内の景観とのコントラストが美しく、
和の趣きが感じられる一場面ともなっています。

このようにおみくじを折りたたんで、木や縄に結ぶのは、
神社の木や縄には神が宿るとされ、
おみくじを結ぶと、その人の願いが結ばれるとされているからのようです。

おみくじに代表されるように、
日本人は、古来より結ぶということに、さまざまな意味や願いを込めてきました。

昔は、伝言を記した手紙もおみくじのように結び、
相手に渡していました。
この場合も、相手に気持ちが伝わり、
気持ちが結ばれるようにとの意味合いが込められていたようです。
この手紙は「結び文(ぶみ)」といわれています。

今日はこの「結び文」の文様について
お話ししましょう。

結び文がはじめて用いられたのは、
平安時代の頃です。
日本独自の文化を目指した「国風文化」が発展し、
かな文字やカタカナが考案されたこともあり、
当時の貴族たちは競うように歌や文章を紙に記しました。

また、恋文などの手紙のやりとりも、
頻繁に行われていました。

当時の手紙には、
横長の紙を用いて書いたものを細長く折って白い紙に包んだ「立て文」
あるいは「捻(ひね)り文」、
手紙を薄い紙で包んだ「包み文」、
そして「結び文」という形式がありました。
その中では立て文が一番正式な書面に用いられ、
その次に捻り文、包み文となります。
結び文は、立て文の略式とされ、
恋文のときによく用いられました。

恋文は、結婚するまで、相手の顔をみることもできなかった当時の人々にとって
自分の想いを伝え、相手を知ることができる唯一の方法でした。
そのため、結び文に書く内容はもちろん、
結び文に用いる紙の質や色、
紙に染み込ませた香の匂いにもこだわり、
自らの趣味や素養をアピールしたのです。

源氏物語にも、この結び文はたびたび登場しますが、
やはりここでも、結び文に記された文章だけではなく、
紙の質や色合い、香の薫りなども細かく記されていて、
送り主の趣向も描写されています。

やがて、江戸時代になるとこの結び文は
恋文だけではなく、儀礼などの普通の手紙にも用いられ、
封じ目には「〆」と墨が引かれるようになりました。

この時代に結び文をモチーフにした文様も考案され、
結び文が配された小袖などがつくられるようになりました。
平安時代の典雅な文化を想起させる文様として、
人々に注目されたようです。



上の写真の名古屋帯は
その結び文が散らされるように配された型染めの帯です。
小粋な意匠のなかに、雅な雰囲気も感じられます。

ちなみに、結び文やおみくじの他にも、
日本ではさまざまな場面で「結んだ」ものをみることができます。
お祝いの席やお悔やみのとき、お見舞いのときに渡す熨斗袋にも
水引きとよばれる紐が結ばれていますね。
この水引は、用いる場面によって色や結び方が異なり、
一度結んだら解けない「結び切り」には
「一度しかあってはいけないこと」という意味が込められ、
結婚式や弔辞などに用いられます。
一方、解けば何度でも繰り返し結ぶことができる「花結び(蝶結び)」には
「何度もくり返し起きてほしいこと」という意味が込められ、
出産や開店などのお祝いごとなどに用いられます。

そういえば、おでんの具に入っている昆布も、
結び文のように結ばれていますね。
おせちに入っている昆布も同様に、結ばれています。
もともと昆布は「よろこんぶ」という言葉を連想させるため、
縁起の良い食べ物とされていますが、
その昆布を結ぶことで、喜びを結ぶという意味合いをもたせているのです。

冬が近づくと、温かなおでんが一際おいしく思えますね。
晩秋の景色を眺めながら、おでんをつまみ、喜びを結ぶのも良いですね。

当ブログも今日はこのへんで結びとさせていただきます。

上の写真の「結び文(むすびぶみ)文様 型染め 名古屋帯」は花邑銀座店でご紹介している商品です。

花邑のブログ、「花邑の帯あそび」次回の更新は11月9日(水)予定です。

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