ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

ならずもの国家アメリカ クライド・プレストウィッツ

2013-07-17 13:29:00 | 

最上位に立つことは孤独を意味する。

あまり私には縁がなかったが、まったくないではない。高校の時、学力テストで学年最上位にランクされたことがある。ちょっとだけ誇らしかった。でも内心の複雑な思いのほうが重く、浮れはしなかった。

なにせ中学時代は学年で下から一けた台の落ちこぼれ君であった私である。上から見下ろされる気持ちは十二分に分かっている。妬みや嫉みがあることも知っていたし、陰口や根も葉もない噂が出るであろうことも知っていた。

なんとなれば、私自身がかつて口にし、やっていたことでもあるからだ。

もっとも最上位のランクは私自身の努力の賜物であり、カンニングなどの不正はなく、正真正銘実力であることも分かっていた。落ちこぼれであった自分でも、努力次第でこれだけ出来るとの自信をつけたことも確かだ。

でも思い上がる気はなかった。率直に言って私の高校は、あまり進学勉強に熱心ではなく、むしろ授業のレベルを落として生徒を付いてこさせるような姿勢があったことが窺えたからだ。

これは予備校などで他の高校生の話などから比較しても、おそらく事実だと思う。実際予備校の実力テストでは私なんざ、中位の上あたりでウロチョロしているのが精一杯であったのが実情だ。

大学進学が念頭にあった私は、たかだか実力テスト一回だけの結果なんざすぐに忘れるべきだと、自らを戒めていたぐらいだ。

ただ、その時はじめて最上位に立つ者は、周囲から浮き立ち、ある種の孤独感を感じざるを得ないと知ったことは、今も忘れずにいる。でも、その孤独感は優越感と裏腹であることを自覚していた。私に落ちこぼれの経験がなければ、ここで思い上がっていたかもしれない。

その後のことだが、私は勉強はほどほどにして、高2のクラスの仲間と遊ぶことを優先するようになり、成績も少し落ちた。落ちたといっても学年で一桁台の成績は維持していたので、それで十分と思い込んだ。おかげで浪人することになるのだが、あまり後悔はしていない。あの時の遊び仲間と過ごした時間は、一生で一度きりの貴重な時間であったと自覚しているからだ。

その後数年間は勉強への熱意は忘れ、留年しないで済む程度の成績に安住する堕落した大学生であった。ところが社会人になってから、間もなく難病を患い2年後には失職。自宅療養の退屈さにめげて、税理士試験を目指したことで、再び勉強を始めた。

病気が治った時の就職に有利だと考えていたのは確かだが、勉強をやり過ぎて再発を繰り返したあたりから目的が変わってきた。あの頃は精神的におかしくなりかけていた。寝ても覚めても自分の病気のことしか考えられなくなり、狂気の淵を彷徨う自分を自覚せざる得なかった。

だからこそ、勉強をしている時間は幸せだった。勉強に集中している時だけは病気のことを忘れられた。おかげで過労による再発を繰り返し、主治医から勉強を止めるよう勧告されたこともある。でも、従わなかった。ほとんど意地で勉強を続けた。

おかげで当時週一で通っていた某簿記学校の全国模試で一位になったこともある。勉強の成果が出ていることに満足はしたが、たかが模試である。参考でしかないと思っていたが、周囲の目線はだいぶ違ったようだ。

同じ教室の受験生たちからライバル目線で見られるのは構わないが、妙な憧れ目線で見られるのには閉口した。国家試験合格ならまだしも、模試での一位なんて途中経過を示すに過ぎないからだ。

ただ、久方ぶりで最上位に立つ優越感と孤独感を味わえたことに不思議な感慨を持っていた。同時に奇妙な苛立ちも感じていた。同じ教室で同じように勉強している受験仲間たちに対する苛立ちである。なんで、もっとしっかりと勉強しないのだ?

やるべきことを、適切な方法で十分時間をかけてやればいいだけだろう。なぜ、やらないのだと怒りにも似た苛立ちを感じていた。まァ、所詮他人は他人と割り切って、自分のやるべきことに集中するため、そんな苛立ちのことは押し隠したが、気持ちの奥底で燻っていたのは確かだ。

あれから20年ちかくがたった。今にして思うのだが、20世紀後半から今日に至るまで覇権国として世界に君臨する、自覚なき世界帝国アメリカも似たような苛立ちをもっているのだろうと、この本を読んで思い至った。

表題の書は、アメリカ政府の中核で仕事をし、その後ワシントンを離れた後に世界各地を回って気が付いた違和感を契機に、改めてアメリカという国を捉えなおしてみたプレストウィッツ氏の力作だ。

本の帯に「ブッシュとネオコンの陰謀を撃て」なんて刺激的な科白が並んでいたが、本の内容はだいぶ違うと思う。レーガン政権の内部に居た時は分からなかったことが、下野して世界をまわるようになって気が付いたアメリカの孤立。

アメリカが積極的にかかわれば係るほど嫌われ、逆に距離を置いて離れると憧れられる不思議。世界を知ったつもりのアメリカと、その世界を理解していないと思われているアメリカ。

このギャップこそがアメリカを孤立させるが、その孤立に誇りと確信をもっているが故に治せないアメリカの矛盾。良くも悪くも、アメリカにすり寄ることで繁栄を謳歌してきた日本にとって、理解しがたきアメリカの孤立を知る良きテキストになると思います。大作ですが、機会がありましたら是非どうぞ。

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モンスターズ・ユニバーシティ

2013-07-16 12:30:00 | 映画

迷うことなく断言できるが、学生時代は楽しかった。

そりゃ、辛い事は一杯あった。厳しい現実を突きつけられて打ちのめされたこともある。時代錯誤のしごきに殺意さえ感じながらも、疲労困憊で倒れ込むことしか出来なかった放課後の部活。

それでも楽しかったと云えるのは、一緒に馬鹿が出来る友達がいたからだ。社会に出て働き出して、嫌が応にも思い知らされるのは、そうそう馬鹿が出来ないことだ。一緒に馬鹿をする友達がいない、あるいは作れないことだ。

思えば馬鹿をやるのは楽しかった。下北沢の南口の繁華街でパチンコで稼ぎ、わずかな勝ち金で居酒屋で飲み騒いだ高校時代。大学の部活を終えて吉祥寺のパフェになだれ込み、ビックフラッペの早食い競争をやって文字通り頭を抱えたお馬鹿な私たち。断言しますが、かき氷の早食いは危険です。

あの当時、馬鹿を一緒にやっていた奴らとは、今も付き合いがある。数人行方不明の奴もいるし、20年近い空白があった奴もいる。それでも久しぶりに会えば、いつのまにやら昔の雰囲気に戻れる。

金では買えない貴重な財産、それが学生時代の思い出だ。

ところで表題の映画は「モンスターズ・インク」で人気者となったサリーとマイクの学生時代を描いたものだ。モンスターズ・インク社のトップ社員であるサリーとマイクの出会いと葛藤を笑いを交えながら真剣に描いている。

多分、誰もが一度は体験する理想とする自分と現実とのギャップ。怖いって言えない本当の自分を押し隠す苦悩。そして夢と理想に挫折した時に必要なものは何か?

最高な怖がらせ屋になりたくて入学したモンスターズ・ユニバーシティでサリーとマイクは如何に出会い、如何に苦悩し、そして未来をどう見つめ直したのか。

もちろん笑いの場面は沢山あります。でも子供だって未来を考え込んでしまうような結末は、案外と一作目よりも出来がイイ映画かもしれません。子供向け映画ではありますが、大人だって十分楽しめる深い内容です。

これお薦め。2D、3Dに拘らずに是非、観て欲しい映画ですよ。

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戦争なんて 風船爆弾

2013-07-12 11:51:00 | 社会・政治・一般
世界初の大陸間弾道ミサイルは日本が作ったという。

まァ、正確に言えば弾道ミサイルではなく、風船爆弾である。とはいえ、人類史上、初めて大陸を超えての大長距離攻撃であることは間違いないので、欧米の軍事専門家の間では、多少の異論はあるようだが評価は高い。

これは太平洋戦争末期に、なんとかしてアメリカ本土への攻撃を目論んだ日本陸軍の苦心の作であり、9000個を超える風船がジェット気流に乗せられてアメリカ本土まで飛来して、360余の爆弾を落として山火事を数件起こしたとされる。ちなみに当時は気球爆弾と呼ばれている。

それにしても9000個の爆弾で、わずか数件の山火事しか成果がなかったのだから、なんとも効率の悪い兵器である。当然ながら日本軍内部でも評価は低く、その資料は奥深くしまわれてしまった。

だが、当のアメリカ側の評価は違う。なんといっても人類初の大陸間攻撃であり、実際に成果もあった。人的損傷なしに敵地を奥深く攻撃できるのだから、もし飛来させる風船爆弾を十万単位として攻撃するば、十分成果を得られただろうと推測している。

これは生産余力にあふれるアメリカだからこそだろうが、少なくてもそのアイディアに対する評価は低くはない。あまり知られていないが、安全な超高空からの爆撃を繰り返したB29の絨毯爆撃だが、目標破壊率は2%に満たない。

日本の家屋が木造であったがゆえに、絨毯爆撃は延焼により大いに効果を上げたのは確かだが、軍事拠点などを狙った精密爆撃には不向きなのが現実。実際、迎撃されて墜落したB29の損失を思うと、アメリカ軍首脳としては風船爆弾とて決して無駄には思えなかったのだろう。

ただ、この風船爆弾の評価が高い理由は、大気圏上層部のジェット気流を活用した点にある。これは高層気象学の研究所長の大石和三郎氏が発見し、いくつもの実験を得てデーターがあったからこそ可能なものであった。

ジェット気流という高高度の偏西風の存在を発見し、その現象を解明していたからこそ軍事転用が可能であった。もっとも発見当初、国外ではこの重要性に気が付かなかった為、大石論文の存在は忘れ去られていた。その後、高高度を飛行する航空機が開発され、上空で不思議な気流の存在があることが分かってからドイツの学者が発表(1939年)していた論文が注目を集めた。

その後、アメリカ軍がB29による高高度飛行にジェット気流が有益だと分かってから、一気に研究が進み、現在でも旅客機の飛行ルートはジェット気流を大いに活用するようになっている。それほど有益な発見であったが故に、この風船爆弾の評価は低くないのだろう。

大石氏の論文はドイツ、アメリカよりも20年近く前に発表されているので、現在ではジェット気流の発見者は大石氏のものとされている。このような気象学の基礎研究あってこその風船爆弾であった。

もっともアメリカも風船爆弾自体は使おうとは思わなかったようだ。そのかわり、多くの観測気球を飛ばしてジェット気流の研究を重ね、それを飛行機をより早く飛ばすことに活用するように努めた。そのデーターは、今日でも航空業界で活用されていることを思えば、大石和三郎の名はもっと知られても良いと思います。

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泡沫の夢

2013-07-11 11:57:00 | 社会・政治・一般

韓国の朴大統領がシナを訪問して、親密ぶりをアピールしていることから、反日連合を危惧する向きがあるようだ。

心配無用だと思う。

実は予想されていたことに過ぎない。はっきり言えばアメリカのオバマ大統領が朴大統領の反日路線を支援してくれないと分かった以上、シナに媚びるのは必然に過ぎない。一応申し添えておくと、オバマ大統領は親日という訳ではなく、中立の立場でいたいだけだ。

ただし、シナとコリアは歴史的に対立と服従を繰り返してきた因縁浅からぬ仲。そもそもシナは対等の外交関係なんざ認める訳がない。上か下か、中華思想によるかぎり、対等の関係なんざあるわけない。

如何に南コリアが経済発展しようと、コリアに対する精神的優越感に変わりはなく、利用価値としての南コリアしか認めようとしない。

一方、2千年来初めてシナに対して経済先進国としての自信を強めた南コリアは、当然対等の関係であるはずと思い込む。いや、シナに進出している韓国企業の振る舞いから判じるに、むしろ優越感を振りかざしているのが実情であろう。

この両国が親密度をアピールするのは、対日本、対北コリアに利する為であろう。当然のことだが、シナと南コリアでは対日政策はもちろん対北コリア政策も異なる。いわば、同床異夢なのは明白であり、実効性の高い政策をとることは、まず無理だと思う。

シナには多くの先進国が資本投下をして、工場や商業施設を作ってきた。シナ固有の人治主義に振り回されて苦労しているのは西側先進国だけではない。同族といって良いはずの台湾でさえ難儀している。その苦労は韓国企業も同じなのだが、韓国側の横暴さからのトラブルの多さも有名だ。

なにせ韓国の企業風土は野蛮で名高い。女性蔑視、シナ人蔑視は当然で、なによりも体罰さえ横行するブラック企業だらけ。給与未払いで会社幹部だけが逃走した韓国企業は数知れず。

会社が倒産しての賃金未払いは、日本企業でもあったはずだが、なぜか風聞の悪さは韓国企業がぶっちぎりで激しい。これは韓国企業が進出している他のアジア諸国からも聞く話でもある。上から目線というよりも、差別的な蔑視が根底にあるのが韓国企業の特徴だ。

これは日本にあっても同様で、日本各地の飲み屋街には通称コリアン・クラブと呼ばれる飲み屋がある。ぶっちゃけ韓国版高級キャバクラなのだが、ここで働くのはコリアの女性ばかり。日本人もシナ人もフィリピーナも決して働こうとしないのがコリアンクラブだ。

理由は簡単、働くホステスさんたちに対して、店側のあまりに蔑視的な態度がコリア以外のホステスさんたちから反発を買っているからだ。どこの国でも「おらが国が一番」との想いはあるが、コリアはあまりに極端すぎて、それが他民族に対して蔑視としてでる。

従って、シナとコリアの反日共闘も、コリア側の横暴に辟易したシナが引いてしまう可能性が高いと私はみている。ただ、転んでもタダでは起きないのがシナ。なにかしら実利を得ようと画策するはず。

ちょっと面白そうなので、今後も注視しておきたいと思います。

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花のズホラ飯 水沢悦子

2013-07-10 14:03:00 | 

私も結構ズボラなところがある。

とりわけ家では、ナマケグマの本性丸出しで、至ってズボラになる。ただし、好きなことには、ズボラなりに頑張りたい。だから料理にはひと手間かける。

ただ、残念ながら準備というか下処理に時間をかけられない。ここを丁寧にやれば美味しいと分かっていても、仕事から帰宅して、空腹を抱えた私には無理な相談だ。

幸い私は若い頃に山登りに傾唐オていた。しかも山小屋ではなくテント泊まりの登山に慣れていたので、下処理に時間を食わない料理のほうが得意だ。必然的に炒め料理が多くなる。

困ったことに炒め料理は油を多量に使う。テフロン加工の調理器具を使うなどして油の使用量を抑えてはいるが、白状すると油を使ったほうが美味しいと思っている。とはいえ、今年初めに心臓にダメージを負ったばかりである。

だから最近は、蒸し料理を増やすようにしている。これなら油を使わないし、肉の脂分を落ちるので実に健康的である。ただ、味が淡白になりやすいので、味噌やポン酢などを使って旨味が出るようにしている。最近流行の塩麹もいいと思う。

たまに気が向くとキムチを使うこともある。本来、辛い物は苦手なのだが、蒸すことで少し辛みを抑えられるので、キャベツと豚肉を蒸す時、キムチを加えると辛みが緩くなるので、夏場にはよく食べる。まァ、ポン酢のほうが美味しいとも思っているが、味のバリエーションを増やすほうが楽しいしね。

そう、やっぱり食事は美味しく、楽しく食べるのがいい。とりわけ私のような一人暮らしの人間は、やもすると単なる栄養補給になりがちなので、食事は作る過程も含めて楽しく食べることを心がけている。

すると、自然と独り言が多くなる。しかも往年の名物プロレス・アナ古館風で。

「おぉ、冷蔵庫の底で眠っていたキャベツ君に冷たい水のビンタをくらわすと生き返るぞゥ~」
「ここで必殺の蒸気攻撃を加えると、頑なな人参野郎も蕩けるぜ」
「最後のとどめは、万能の最終兵器マヨネーズだァ」

他人に聞かれたら、間違いなく危ない人扱いであろう。だから、よっぽど疲れているか、落ち込んでいるときしか口にしないようにしている。でも、こんなバカらしい独り言でも、口に出しているうちに元気が少しだけ出てくる。そして、手抜きというよりもズボラな料理でも、美味しければ食べて元気回復である。

表題の漫画のヒロイン花ちゃんも、この手の独り言の名人だ。旦那さんが単身赴任で一人寂しく過ごす花ちゃんの元気の素が、美味しい食事だ。でも、根がズボラなので旦那不在をいいことに、家のなかはゴミ屋敷状態。料理だって、手の込んだ繊細なメニューなんてお断りである。

でも、元気娘花ちゃん30歳は、冷蔵庫を漁って手持ちの具材だけで、なんとか美味しい食事を作ろうと奮闘する。ただし、ズボラにだ。その際の独り言がオカシイ。

この漫画が楽しいのは、無理せず今の状態で最大限、楽しもうとしている心意気にこそあるように思う。手の届く範囲で得られる幸せを、胸いっぱい楽しむ心意気。けっこう大切なことだと思いますよ。

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