今年こそ景気回復の年となって欲しい。
この思いは私一人ではないと思う。実際、ここ数年間の景気の低迷はひどかった。私はたびたび、日銀の金融政策の怠惰を批判しているが、金融政策だけで景気回復する訳がないことぐらいは分かっている。
はっきり言えば、日本の景気低迷の根底にあるのは需要不足である。簡単に言えば、欲しいモノがないであり、将来が不安だからお金を使えない、である。だから銀行の預金残高はここ数年増加の傾向をみせていた。
にもかかわらず、政府は景気刺激策をとらずにきた。いや、チマチマした刺激策ならやっていた。デジタル放送のごり押しでTVの販売を増やそうとしたのも、その一環であった。結果は安い韓国製に圧倒され、むしろ日本の家電メーカーを失墜させただけであった。
私の実感からすると、一番効果があったのは、民主党政権下での高速道路1000円であったように思う。鉄道と船舶、航空会社には逆風であったが、あれは確かに景気を活性化する効果があったと思う。
だが、それ以外の景気浮揚策はどれも失敗であったと言わざるを得ない。子供手当?あれは満額支給にならなかったため、むしろ増税につながり手取り収入を落としたのが現実だろう。あまりに準備不足であり、稚拙な政策であった。
あまりのひどさに衆議院選で民主党が下野し、替わって登場した自公・連立政権に対する期待が高すぎたが故に、株価は上昇し、円安が急激に進んだ(実態経済に近づいたと思う)だけで、アベノミクス自体に大した中身はない。
アベノミクスの最大の欠点は、民間の投資が増えることを期待しての投資減税が主体であることだ。これは資金難に汲々とする民間企業にとって、あまりにハードルが高すぎる減税なのだ。
なにせ投資しなくては減税を受けられない。投資どころか赤字体質の改善が先と考える企業に、この投資減税は絵に描いた餅に過ぎない。困ったことに、異次元の緩和だかなんだか知らないが、黒田・日銀がいくら笛を吹けども銀行が民間に資金を提供する気配はない。
せいぜいが変動から固定金利への借り換えか、さもなきゃ消費税増税を見越した駆け込みの住宅ローンの拡充程度なのが実情だ。言っちゃなんだが、歌を忘れたカナリアみたいに、銀行は企業に融資する仕方を忘れてしまったらしい。
従って現在、投資を拡大しているのは一部の勝ち組企業だけで、不況に苦吟する企業には無関係の話と化している。これが今のアベノミクスの実態である。
はっきり言います。投資減税では景気回復の牽引車とはなり得ません。現在の日本に必要な景気刺激策は、需要を拡大させるものでなければならないのです。投資する余裕のない企業にとって必要なのは、投資ではなく売上(消費)の拡大。
つまるところ消費を拡大させねばならない。そのためには預貯金を抱え込んでいる高齢者の財布の紐を緩めねばならない。つまり高齢者を安心させることこそが必要なのだと思います。
財務省は十年前から「貯蓄から投資へ」を掲げていますが、将来に不安を抱える高齢者が、その貯蓄を取り崩して投資に充てる可能性は極めて低いでしょう。私は景気回復を真剣に願ってやみませんが、財務省主導の景気刺激策は失敗はしないまでも、本格的な景気回復にはあまり役立たないと言わざるを得ないのです。
ただ、景気とは雰囲気でもあるので、民主党政権下でとことん冷え込んだ雰囲気を明るくさせているのが、今の安倍・自公政権であることは認めています。おそらく消費税増税前の駆け込み需要だけが、今のところ頼みの綱だと私はいささか悲観的に考えています。
はずれて欲しいのですがね、私の悲観論は。