ヌマンタの書斎

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長時間労働の是非

2017-05-18 13:07:00 | 経済・金融・税制

長時間労働は良くない。

そんな事は分かっている。良くないからといって、やらない訳にもいかないのが実情だ。なにせ、グローバリズムに歩調を合わせて以来、日本経済はコストダウンと人件費抑制が至上の課題となって久しい。

マスコミはあまり報道したがらないが、所得格差の広がりはグローバリズムがもたらした成果である。グローバリズムは大企業や資産家を潤す一方で、中産階級を没落させる。自由競争の名のもとに、大資本による零細潰しが横行する。

地方都市の駅前通りの惨状が、それを証明している。大店法による規制があった頃は、小さな店舗でもやっていけた。しかし、自由競争と規制緩和をぶち上げたグローバリズムは、小さな店舗から売り上げを奪い、潰していった。

裏通りの町工場は、その仕事をより安い人件費の国の同業者に仕事を奪われ、潰れた工場の跡地にはマンションが建てられた。かつて日本の中小企業を育ててきた銀行は、手のひら返して中小企業を潰していった。

このことは、中小企業、零細事業者をメインの顧客としてきた、私のような小さな事務所の売上に甚大な影響を及ぼした。事務所を維持するために、従来断わっていた手間のかかる仕事もやらざるを得ない。

結果、どうしても労働時間は長くなる。大手が手を出さない採算性の低い仕事が増えた以上、致し方ない。いくら政府が法令で長時間労働を規制しようと、背に腹は代えられないのが実情だ。

今回の背景にあるのは、広告代理店業界の帝国といっていい電通の過労死事件である。二十代の若さの娘さんを失ったお家族の辛さが深刻であることは分かる。

だが、本当に長時間労働だけの問題なのだろうか。これは電通に限らないが、景気のいい会社では、業務命令があろうとなかろうと、長時間仕事をしたがる傾向が強い。嫌々働いているのではなく、喜び勇んで会社に居ついている労働者が少なくない。

これは私自身にも身に覚えがあることなので、実感として良く分かる。いくら長時間労働はダメだとしても、働きたがる者には通用しない理屈である。

ただ、心身のストレスが過度になっている場合は別だ。これは実のところ、本人が一番分かりづらい。だからこそ、上司による適切な管理が必要となる。件の電通の女性社員も、周囲が彼女の体調などをもう少し配慮していれば避ければ事故であったかもしれない。

私自身、かなり労働時間は長いほうだが、もとより怠け癖がある上、自身がトップなので、自己管理は可能である。病歴が長いので、このあたりの自己管理には日頃から注意している。

むしろスタッフが無理してないかの配慮のほうが難しい。それなりにベテランなので、プライドが高く、迂闊に休めといっても聞いてくれない。プロ意識が優先されて、無理していることも多々ある。これは、経営者としてマズイと思っている。

でも、労働時間を規制して片付く問題ではないのも確かだ。私は代休を必ず与えることで、対応しているけど、それで十分なのかは迷うところだ。

今回の労働時間の規制程度では、まず解決しないと思います。私自身がたしかな解決法をもっている訳でもないだけに、忸怩たる思いはあるのですがね。

コメント
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