残念ながら、はずれ。
私がわりと当てにしているのが「このミステリーが凄い」のランキングだ。その2002年の第四位が表題の作品。昨今、やたらと長編が多いミステリーに挑むがごとき短さで、これはこれで評価できる。
問題は中身だ。アイディアてんこ盛りなのは間違いない。幻の蒸気機関車に、密室殺人、風水に、政治家と企業家と材料は多彩にそろえている。しかも、ミステリー・ファンならにやけずにはいられないほど、いろんなアイディア、パロディが組み込まれている。
だからこそのランキング4位だと思うが一つの小説としてみると、物足りなさが強い。アイディアの一つ一つに必然性が薄くて不満を抑えきれない。章を短く区切り、読みやすいのは確かだが、その掘り下げが不足していて、印象が薄すぎる。
本当に多彩なアイディアを盛り込んでいるだけに、この物足りなさは致命的といっていい。ライトノベルだって、もう少し掘り下げるぞ。
そんな訳で、今年一番の「がっかり賞」なのです。だからお奨めはしませんが、読みやすいので時間つぶしには役立ちます。