のろや

善男善女の皆様方、美術館へ行こうではありませんか。

その男・榎忠

2006-04-10 | 展覧会
たいへん遅まきながら、KPOキリンプラザ大阪の

『その男・榎忠』展 へ行って参りました。

榎忠、エノチュウ とは何者か というと、
半刈りにしてハンガリーに行った 人物です。
半刈り とはどういう状態か というと、こういう状態です。



copyright:Tyu Enoki  photo:Manabu Takahashi


CGではございませんよ。
しかも、頭部だけではなく、 全 身 半 刈 り なのでございます。
当時ハンガリーは共産圏な上、パスポートの写真と実物の顔が違う ということで
ものすごく警戒されたんだそうでございます。(そりゃあね)

氏はこの半刈り状態で4年間過ごされたということですが、さらにすごいことには
その間に、何と左右を入れ替えたのでございます。
つまり、今まで延ばしていた側の体毛をすっかり剃り落とし、今まで剃っていた側の体毛を延ばしていったのです。
この4年の間、(それ以前/以降と同様に)普通に会社勤めのサラリーマン生活を続けていたというのですから、いよいよもって素晴らしい。

展覧会場では、氏の足跡をつづった映像作品『その男・榎忠』が上映されており
その中でエノチュウ氏御本人が、半刈り当時、道行く人たちや会社の顧客がいかに反応したかを 振り返っておられました。
関西弁で、トツトツと。
「大人はもう、見ないふり。子供は たーっと駆け寄って来て、”おっちゃん、カツラずれてんでー”って言うたりね」

のろは 榎忠氏については、この 半刈りハンガリープロジェクト しか知りませなんだ。
故に今回、氏のメジャーデビュー作から最新作までまとめて接することができたのは、大変有意義なことでございました。

氏が半刈り以外にどんなすごいことをなさってきたかと申しますと、
まあ目にしていただいた方がようございますね、↓こういうことでございます。

榎忠作品集

ううーむ カッコイイですね。
親ごさんは 非 常 に 心配していらしたそうですが。(そりゃあね)

氏の作品のほとんどは、そのままの形では残しておけないものです。
大きすぎる、広すぎる、期間限定である、氏の 身体の変容 が作品である、等の理由で。
いきおい、今回展示されているものは、作品そのものではなく作品の写真や映像、あるいは
かつて作品を構成していたものの断片といったものたちです。
(ひたすら地面を掘り続けるというプロジェクト『大地の皮膚を剥ぐ』の際に出て来た化石 なんてものもございました。これもまた美しかった)
まさに体をはったパフォーマンスや、「もの」だけでなく展示する「場」からしてトータルに構成された、作品の数々。
写真や映像の記録として見るだけでも、そのインパクトは強烈で
見る者の心を刺激します。
大概のものごとには参加資格を持たぬような心地で生きているのろですら
「ああ、ぜひとも、この場に居合わせたかったものだ!」と じりじり思ったのでございます。

どの作品も、シャレのめしているようでありながら
生半可なシャレ心ではとうていなし得ない徹底性を発しております。
その上、冗談めいた衣装にくるまれているものの
実は社会的な重いテーマや時事問題を扱っているのでございます。

かくも強烈にユニークな活動をなさるアーティストにーーーその真剣さ、几帳面さ、そして情熱にーーーのろは憧れと敬意を抱かずにはいられません。
こういう方の作品やパフォーマンスに接すると 
生きることに カツが入ります。
「のろよ、漫然と生きていてはイカンよ。いま・ここで・君に・できることを、せにゃならんよ」と
言われているような気がするんでございますよ。
(「のろや」御常連の皆様にはすっ かり耳タコの名前でございましょうが、飽きもせずまた言いますよ、はい、 クラウス・ノミ 氏も、のろにとってはこの系譜のアーティストなのでございます)

生きることにカツを入れたい方、または単にメヅラシイものが見たい という方にも
ぜひお運びいただきたい展覧会でございました。

と 申しましても、会期が4月16日までなんでございます。
レポート遅すぎでございます。申し訳ございません。のろ自身が行けなかったものですから・・・(言い訳)
2006年5月9日(火)~5月13日(土)に、氏の作品集出版記念展が催され
今回展示されなかった作品も発表されるとのことですので
「こんなギリギリに言われたって行けねーよバカヤロー!」とお怒りの方はこちらへどうぞ。
会場はノマル・プロジェクトスペース キューブ&ロフト(大阪)でございます。