読書な日々

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『カコちゃんが語る植田正治の写真と生活』

2017年10月18日 | 評論
増谷和子『カコちゃんが語る植田正治の写真と生活』(平凡社、2013年)

文字通り、植田正治の長女である増谷和子さんがこの写真家とその家族のことを語るように書いた本である。本職は写真家のようだが、これを読むと文才もあるように見受けた。

植田正治は境港に1913年生まれ。米子中学の3年生から写真に熱中した。19才で日比谷の写真店で修行したり、写真学校に通って後、境港に帰り、「植田写真館」を開業する。22才で、法勝寺の紀枝さん(19才)と結婚する。

その頃から、家にはつねに写真愛好家が集まり、賑やかだったというが、そういえば私の親戚にも伯耆大山で写真館をやっていたおじさんがいる。私が物心ついた頃(昭和30年代)にはすでに営業していた。このおじさんももともとはお寺の息子なのだが、お寺を継ぐのがいやで、写真館をしていたという人だ。あまり芸術的な写真というのを見たことがないけれども、植田正治とも知り合いだったのだろうか。

植田正治は芋の煮っころがしとか煮しめとかというような和風の食べ物が嫌いで、洋食が好きだったという。それに合わせて妻の紀枝さんもいろいろ戦前や終戦後でもハイカラと言われたようなものをよく作っていたという。

そういえばEテレで『ヘンゼルとかまど』とかいう番組で、この間(再放送だったが)この紀枝さんが持っていたお菓子のレシピ集の中から、マドレーヌのようなお菓子を作るというのをやっていたが、ずいぶん暇な生活の中でそういうことをやっていたのかと勝手に思っていたけど、この本を読むと、ずいぶんと写真館も繁盛していて、子育てや家事や写真館の仕事などをこなしつつ、そういう中で手の込んだお菓子作りをしていたんだということが分かった。

境港といえば、水木しげる(1922年生まれ)といい、この植田正治といい、進取の気性に富んだ人たちが出る風土なんだな。

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