読書な日々

読書をはじめとする日々の雑感

「ボディ・レンタル」

2006年11月04日 | 作家サ行
佐藤亜有子『ボディ・レンタル』(河出書房新社、1996年)

東大現役の女子大生を「付加価値」にしてクラブでアルバイトをしながら、なおかつもっと自由に金を稼げて男たちと性的アバンチュールをしてみたいという藤野マヤを主人公として彼女の視点から彼女のいう「ボディ・レンタル」をするさまざまな男たちとの関係や、大学の友人たちの姿を描いたもの。

文章が上手いのでするするーと読めてしまう。人間のつくりも面白い。あまりに美人なのでさまざまな男からの求愛に精神的に参っている桐子、これと決めたらのめり込んでとことん追及しなければすまない雅、頑強な体をしていながら純粋を求めそうの相克に苦しんでいるらしい野獣こと内田などなど。けっこう現代人にありそうな矛盾を抱え込んだ人間たちが描かれている。

雅は夫の宮下がドイツに留学するのだが、学生のために着いていけず、やきもきしている。一緒に行けばいいじゃないと私は思う。そんなに心配だったら。結婚してすぐに渡仏し、二年間も新妻を日本に一人残し、彼女が寂しさに耐えられずに不倫をしたという男を知っているが、この話を聞いたときバカかこいつは、と思ったものだ。新妻を一人日本に残してなんにもないと思うほうがが、よっぽど人間を知らなさすぎるだろう。まぁどうでもいい話だが。

昨今の若い女性の――しかも高学歴の――性意識を知るという意味では面白かったし、この手の理屈をこねて、こういう職業も成り立っていくのかなと思う。そもそもそれを成り立たせている男の側の性欲求が、実際そうなのだろう。ここに出てくる男たちは地位も金もあって、いわばなんでもできる男たちなのだから、金で何でもできるわよと女の側から言ってくれるほどうれしいことはないだろう。

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