仏教を楽しむ

仏教ライフを考える西原祐治のブログです

ホモ・サピエンスの宗教史➁

2024年04月07日 | 新宗教に思う

『ホモ・サピエンスの宗教史-宗教は人類になにをもたらしたのか』 (中公選書・2023/10/10・竹沢尚一郞著)からの転載です。

 

 ヒトのつかい、つまり婚姻関係の形成についてのモリスの解釈が妥当か否かは不明だが、チンパンジーは雑婚をするのに対し、すべての人間社会は婚姻制度をもつことが確認されているので、社会が生物学的な適応の過程で生じたことは確実だろう。つがいの形成の問いは別にして、ここで確認しておきたいことは、ヒトの固有の特徴である乳幼児期の引き延ばしと母親や周囲の人間に対する依存関係の延長が、ヒトが進化する過程で生じた生物学的適応にほかならないということだ。

 私たちは先に、二足歩行を始めたヒトの先祖が、ぶざまで、脆弱で、無防備な身体をもっていたことを見てきた。そして、ヒトがそれほど脆弱で無防備な身体をもつ存在になったことが、彼らがチンパンジーやボノボより大きな集団を形成するようにたった必然的理由であった。こうした身体的な脆弱さに加え、ヒトが進化の過程で新たな脆弱さか帯びるようになったことがここで体認されたのであり、それは、ヒトの脳が巨大化したために十分に成熟する前に出産するようになったことで、他の動物のようには誕生後すぐに立って動くことができず、長期にわたってけ親などの保護が必要になったことである。この意味において、ヒトは二重の脆弱さ、傷つきやすさを抱えた存在になったのであり、そうした事態に対応するには、十分な武器をもちえなかったこの段階では、巣団規模を拡大することが生存のための唯一の手段であったはずだ。現代の狩猟採集民は50人程度の基礎集団を形成するのが一般的であり、これはチンパンジーやボノボのパーティの数倍の規模をもっている。優れた武器をもつ現代の狩猟採集民でこの規模だのだから、十分な武器をもたなかったホモ・エレクトスはより大規模な集団を形成することが必要だったとちえられるのだ。(つづく)

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