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仏教ライフを考える西原祐治のブログです

ホモ・サピエンスの宗教史③

2024年04月08日 | 新宗教に思う

『ホモ・サピエンスの宗教史-宗教は人類になにをもたらしたのか』 (中公選書・2023/10/10・竹沢尚一郞著)からの転載です。

 

ところで、集団規模を拡大することは、危険な敵からの防御や食物獲得の観点では有利だが、集団内の緊張を増加させるという点ではマイナスに作用する。そのことは、うまく対処できなかったなら集団の分裂につながる危険かあるだけに重大な課題といえる。ヒトの先祖とおなじように集団で生きる類人猿はそれに対処する手段を講じており、チニパンジーの場合には、緊張緩和の手段は複数の個体が接触しておこなう毛づくろいであり、これによって脳内に「脳内麻薬」と呼ばれるエンドルフィンが分泌され、幸福感が増大ことが確認されている。しかし、ヒトの先祖のように集団規模がさらに拡大されたケースでは、これだけでは緊張緩和の手段としては不十分であっただろう。

直接接触を必要とする毛づくろいでは、より大きな集団のレベルで生じる緊張を緩和することは不可能なのであり、集団内の緊張を緩和し、巣問を維持していくためのなんらかの手段をつくり出すことが必要だったと考えられるのだ。

 そこで、大規模な集団の「緊張緩和および抑制」」の手段として考えられているのが、笑いであり、食物分配である。まず笑いだが、その効用をロビン・ダンバーらはつぎのように説明する。赤ん坊が誕生すると、腹が減った、おむつか濡れたといって人声で泣くが、四か月ほど経過した頃から、赤ん坊は世話をしてくれる人を見分けるようになり、その顔を見るとキャッキャッと笑うようになる。

その後も赤ん坊や幼児はよく笑い周囲の人間をなごませ喜ばすようににする。笑いには毛づくろいとおなじようにエンドルフィンか放出するほか、ドーパミンやアドレナリンを分泌して意欲や多宰感を増加させる働きがあることが確認されている。笑いは直接的な肉体的接触をもたない複数の個体のあいだでも共有されるから、緊張緩和の手段としては毛づくろいより効率的だし、生後四か月の赤ん坊でも笑うのだから、言語使用以前のヒトかそれを活用したと考えることは不可能ではない。

笑いという人間に特有の身体技法をつくり出したことで、ヒトの先祖は大きな社会を維持することができるようになったというのだ。(以上)

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