『時間はなぜあるのか?:チンパンジー学者と言語学者の探検』(ソフトカバー2022/4/11・平田聡著),嶋田珠巳著)からの転載です。
チンパンジーの3年前の記憶
まずは前段階として、この研究をおこなった研究者たちは、チンパンジーの記憶に関する簡単なテストをおこなっていました。最初に、食べ物を得るために道具が必要な場面を設定しました。そして、食べ物を得るために適切な道具と、不適切な道具を、チッパンジーが見ているまえで2つの箱のかかにそれぞれ隠しました。適切な道具を使えば食べ物を手に入れることができますが、不適切な道具では食べ物を手に入れることができません。道具を入れる2つの箱は、それぞれ隣接する別の部屋の別々の場所にあります。チンパンジーは、研究者が道具を箱に隠す様子は見ることができますが、この時点では、箱がある部屋に行くことができません。一定の時問ののち、ドアを開けて、チンパンジーが道具の入った箱のある部屋に行くことができるようにしました。チンパンジーが食べ物を得るためには、適切な道具が入った箱を開けて、その道具を使って食べ物を得る必要があり、そのためにはどちらの箱に適切な道具が入っているのかを覚えておく必要があります。このテストを「道具隠しテスト」と呼ぶことにします。
「道具隠しテスト」をおこなってから3年後、研究者たちは、まったく同じ状況をつくってみました。これが本題のテストです。ただし、3年前の「道具隠しテスト」とはひとつだけ条件が違います。道具を箱に隠す場面をチンパンジーにはに見せないのです。チンパンジーはいきなり、道付を使わなければ食べ物が手に入れられない状況に直面します。この本題テストに参加したチンパンジーは、2つのグループに分けられていました。1つ目のグループは、3年前の「道具隠しテスト」に参加したチンパンジー達です。二つ目のグループは、3年前の「道具隠し実験」に参加しなかったチンパンジー達です。
本題テストの結果、2つのグループでチンパンジーの行動に明らかな違いがみられました。すなわち、3年前の「道具隠しテスト」に参加したチンパンジー達は、すぐに別の部屋にある箱に向かっていき、そのなかを調べました。ただ、最初に開けた箱に適切な道具があったどうかは、運次第です。道具を隠した場面を見ていないので、当然です。最初に開けた箱の中身が不適切な道具の場合もありましたが、その場合は、すぐにもう一方の箱を開けに行きました。
一方で、3年前の「道具隠しテスト」に参加しなかったチンパンジー達は、まったく箱のなかを調べようとしませんでした。箱のなかに道具がある、というごとに思い当たらなかっとためでしょう。
3年前の「道具隠しテスト」に参加したチンパンジー達は、おそらく、3年前に同じような状況で箱のかかに道具が隠されていたということを記憶していて、そのことを思い出して、「この状況では箱のなかに道具があるはずだ!」と箱を探しに行ったのではないかと考えられます。3年前の「道共隠しテスト」は、それぞれのチンパンジーに4同だけおこなわれていました。チンパンジーは、4回だけ経験した出来事の記憶を、3年後に思い出すことができたのです。(以上)
チンパンジーの3年前の記憶
まずは前段階として、この研究をおこなった研究者たちは、チンパンジーの記憶に関する簡単なテストをおこなっていました。最初に、食べ物を得るために道具が必要な場面を設定しました。そして、食べ物を得るために適切な道具と、不適切な道具を、チッパンジーが見ているまえで2つの箱のかかにそれぞれ隠しました。適切な道具を使えば食べ物を手に入れることができますが、不適切な道具では食べ物を手に入れることができません。道具を入れる2つの箱は、それぞれ隣接する別の部屋の別々の場所にあります。チンパンジーは、研究者が道具を箱に隠す様子は見ることができますが、この時点では、箱がある部屋に行くことができません。一定の時問ののち、ドアを開けて、チンパンジーが道具の入った箱のある部屋に行くことができるようにしました。チンパンジーが食べ物を得るためには、適切な道具が入った箱を開けて、その道具を使って食べ物を得る必要があり、そのためにはどちらの箱に適切な道具が入っているのかを覚えておく必要があります。このテストを「道具隠しテスト」と呼ぶことにします。
「道具隠しテスト」をおこなってから3年後、研究者たちは、まったく同じ状況をつくってみました。これが本題のテストです。ただし、3年前の「道具隠しテスト」とはひとつだけ条件が違います。道具を箱に隠す場面をチンパンジーにはに見せないのです。チンパンジーはいきなり、道付を使わなければ食べ物が手に入れられない状況に直面します。この本題テストに参加したチンパンジーは、2つのグループに分けられていました。1つ目のグループは、3年前の「道具隠しテスト」に参加したチンパンジー達です。二つ目のグループは、3年前の「道具隠し実験」に参加しなかったチンパンジー達です。
本題テストの結果、2つのグループでチンパンジーの行動に明らかな違いがみられました。すなわち、3年前の「道具隠しテスト」に参加したチンパンジー達は、すぐに別の部屋にある箱に向かっていき、そのなかを調べました。ただ、最初に開けた箱に適切な道具があったどうかは、運次第です。道具を隠した場面を見ていないので、当然です。最初に開けた箱の中身が不適切な道具の場合もありましたが、その場合は、すぐにもう一方の箱を開けに行きました。
一方で、3年前の「道具隠しテスト」に参加しなかったチンパンジー達は、まったく箱のなかを調べようとしませんでした。箱のなかに道具がある、というごとに思い当たらなかっとためでしょう。
3年前の「道具隠しテスト」に参加したチンパンジー達は、おそらく、3年前に同じような状況で箱のかかに道具が隠されていたということを記憶していて、そのことを思い出して、「この状況では箱のなかに道具があるはずだ!」と箱を探しに行ったのではないかと考えられます。3年前の「道共隠しテスト」は、それぞれのチンパンジーに4同だけおこなわれていました。チンパンジーは、4回だけ経験した出来事の記憶を、3年後に思い出すことができたのです。(以上)