仏教を楽しむ

仏教ライフを考える西原祐治のブログです

「利他」の生物学

2023年09月15日 | 日記
『「利他」の生物学-適者生存を超える進化のドラマ』(中公新書 2023/7/20・鈴木正彦著)末光隆志著)からの転載です。


 子育ては利他的行動の原点
 それでは前述したような利他的行動はどのようにして生じたのでしょうか。全てに共通した解答はないかもしれませんが、哺乳類では子孫を残す行動、特に子育てに重要なものとして、利他的行動か生まれた可能性があります。愛らしい赤ちゃんの笑顔はいつまで見ていても飽きません。赤ちゃんの笑顔や動作は母親に大きな影響を与えます。幸福感をもたらすだけでなく、体内のホルモンバランスにも影響を与えます。たとえば赤ちゃんに授乳するときに母親の体内ではオキシトシンか分泌されます。
 オキシトシンは、一九〇六年に発見されたホルモンです。当初は、分娩時の子宮収縮や乳汁分泌に作用するホルモンとして知られていました。その分子構造を調べると、生体の恒常性を保つための浸透圧を制御するバソプレノソンというホルモンとよく似ていました。このバソプレッシンがオキシトシンに進化し、動物の産卵行動を引き起こす生理作用を持つように至ったようです。
 オキシトシンは、授乳を誘起するだけでなく、相手との信頼関係を築き共感を引き起こすホルモンとしても知られてします。俗に「幸せホルモン」として呼ばれるゆえんです。共感は相手の立場を理解し、喜怒哀楽といった感情を共有することです。傷ついた人や災害の際の困ってしる人を見て、自分が同じ立場だったら、どんなに苦しくて悲しいであろうと察して同じ心情になることです。
 共感に基づく行動は哺乳類以外の動物でも見られます。渡り鳥のような鳥類は行動を一つにして飛翔したりしますが、それには共感が伴うようです。ひな鳥の「刷り込み行動」の仕組みを解明した動物行動学者コンラート・ローレンツは、ガンか群れをなして移動する際、湖に共に舞い降りたり、鳴き声を互いに聞いたりすることで気分を共有すると述べています。人間が集団で歌を歌ったり踊ったりすることで気分を共有して盛り上げるのと似ていますね。
人間と同じように、言葉(鳴き声)で感情を共有してしるのかもしれません。


 細胞レベルでの共生は生存に必要な行為なので、「相利共生」としっても個体レベルの利他的行動とは違います。動物や植物の集団内での利他的行動は、彼ら自身や彼らが屈する集団をいかに有利に生き残らせ、子孫を増やすことができるかということから生じています。進化の過程で生じた鳥類や哺乳類の生の利他的行動は、遺伝子にプログラムされている本能的な行動といえるでしょう。それでも、鳥には初歩的な言葉に近い鳴き声があり、哺乳類ではより進んだ共感を示す行為が見られます。プレーリーハタネズミのように、人間に近い共感の感情を示す動物心あり、その行為かオキシトシンで誘導されることも分かってきまた。こうしたオキシトンンの効果は人間でも見られます。実際、鼻にオキシトシンをスプレーすると、人は協調的になって利他的行動をとるようになるという研究があるほどです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする