仏教を楽しむ

仏教ライフを考える西原祐治のブログです

なぜヒトだけが老いるのか①

2023年09月08日 | 日記
『なぜヒトだけが老いるのか』(講談社現代新書・2023/6/22・小林武彦著)、
老いについての生物学的知見に基づく、死生観・人生論といった本です。

人だけが老いる。サケの場合。以下転載。

秋に北海道の河川に遡上するサケは、3~4年間、遠くはベーリング海やアラスカ湾まで回遊した後、Iメートル近い大きさまで成長して生まれた川に戻ってきます。川の流れに逆らって遡上するのは、サケにとっても至難の業です。しかもメスはお腹に大切な卵を抱え、オスは精子を溜め込んでいます。これまで洵で鍛え上げた肉体には、この遡上のためにあると言っても過言ではないでしょう。気力体力共にベストの状態です。まさか数週間後に老化して死ぬとは、とうてい想像できません。
 多くのサケは、遡上途中にヒトに捕獲されたり、熊などに食べられたりしてしまいます。やっとのことで川の上流の生まれ故郷にたどり着いたサケは、今度は尾びれがすり減るくらい一生懸命川底に穴を堀り、そこに産卵・放精し、そして急激に体の代謝が低下して、つまり老化して死にます。


今度は大きい動物です。ヒト以外の陸上哺乳類で最も有命が長いのはゾウです。ゾウは60年以上生きるものもいます。ゾウのような大型哺乳動物は、元々食べられて死ぬ個休は少ないので、人の手で飼育しても寿命は延びません。逆に、狭い檻暮らしによるストレスのために、寿命が短縮する場合もあるのかもしれません。
 興味深いのは、ゾウはあれだけ体が大きくて細胞の数も多く、寿命も長いのに、がんにはほとんどなりません。言い方を換えれば、がんにならないから長生きだとも言えます。
 老化して傷ついた細胞も同じように排除されるため、ソウは基本的には老化症状を示さず、死ぬときには心筋梗塞などの循環器系の不具合が原因で、ピンピンコロリというわけです。結果的に、「老いたゾウ」は存在しないのです。
 私たちヒトにとって少しずつ老いていく「老化」はごく身近なものですが、自然界の生物を見渡すと、とても珍しい現象だったのです。

まとめると、加齢とともに徐々にDNAが壊れて、遺伝情報(設計図)であるゲノムがおかしくなります。その結果、細胞の機能が低下し、老化して死ぬわけです。またDNAが壊れてくると、細胞がそれを感知して積極的に細胞老化を誘導します。これは細胞の機能が低下する過程で、がん化などが起こるのを防ぐための生理作用でもあります。つまり細胞の品質悪化の兆候が見られたら、すぐに老化スイッチをオンにして、暴徒化(がん化)するのをあらかじめ防ぐのです。先ほど出てきたp53もその役割を担っています。
 以上、述べてきたように老化誘導のスイッチが押されるきっかけは、DNAが壊れることです。(つづく)
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