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仏教ライフを考える西原祐治のブログです

教団組織論と「家族」の比喩

2023年09月10日 | 新宗教に思う
『創価学会 政治宗教の成功と隘路』(2023/4/10・櫻井義秀(編集),猪瀬優理(編集)からの転載です。

教団組織論と「家族」の比喩

 森岡清美は、真宗教回を典型例とする近世に組織化を成し遂げた宗教には「いえモデル」、幕末維新期以降の近代に成立した宗数もは「おやこモデル」、そして、近代に準備されて現代において大教団に発展しか宗教には「なかま―官僚制連結モデル」ともいうべきものが析出されると指犒し、日本における教団組織論の基盤となる議論を提示した。
 森岡によれば、宗教運動組織化の第一歩は「新生児が親を媒介として親族関係網に組み込まれるように」、導きの子である新規参加者が導きの親である布教者を媒介として既存の参加者の集団に組み入れることであり、「これが日本における宗教運動体のいわば原組織」である。近世では政府・商業ともに組織に「いえモデル」が採用されておいり、社会の構成自体が「いえモデル」を基盤としていたため、宗教も「いえモデル」によって組織された。ただ、子の骨格をなす本末関係は師僧と弟子の「おやこ関係」から出発し、寺擅も僧と帰依者との「おやこ関係」から出発している。近代になると社会全体では「いえ」的構成が瓦解したため、近代に成立した宗教は「原細織」である「おやこ関係」がむき出しになっている状態で組織化が成立した。
 原組織である「おやこ関係」から離れた組織化は非常に困難であるが、創価学会や森岡が分析の対象とした立正佼成会などの大教団は「なかまー官僚制連結モデル」という「おやこ関係」から離れた組織の改編を成し遂げた。UOの点について、森岡は次のように説明している。

ヨコの関係に切り換えられた「なかまモデル」は、「いえモデルやおやこモデルの場合のような、教団への構造化の自然発生的な契機を欠いている」ため、「本部事務局の官僚制機構が発達する必要がある」ことから、「なかまー官僚制連結モデル」という。(以上)

森岡清美の『新宗教運動の展開過程』によると、

日本地生え(土着)の成立宗教の「原組織」は、教導した者とされた者の間の 個人的な「おやこ関係」(手次関係、タテ線)である。
この「原組織」が制度化される際には、一定の時代社会で優位を占めていた組 織モデルを鋳型として、時々の社会のなかに独特の宗教的な組織形態を発現させ る。近世社会で優位であった組織モデルは「いえ」であったから、政治や経済の 組織も一様に「いえモデル」を採用した。宗教もまた、この「いえモデル」によ って組織化された。既成仏教教団の本末関係は、その好例である。
だが、近代社会を迎えると「いえモデル」の組織形成力が衰えて「原組織」が 露出し、個人的な「おやこモデル」が出現して、新たに発展してきた宗教運動体 (教派神道等の新宗教)によって採用された。なかには、これを近世の本末関係 (永世的関係)に近いかたちで制度化する新宗教もあった。
現代社会になって新たに発展した新宗教も「おやこモデル」による組織化をは かったが、やがて、短時日のうちに大規模化した新宗教教団を中心として、新た に「なかま-官僚制連結モデル」を採用する新宗教教団が生まれた。これは、信 者間の平等関係の実現と事務管理や情報伝達の利便性向上(合理化)を同時にね らったものと考えられる。
以上を要約すると、「近世に組織化をなしとげた宗教にはいえモデル、近代のそ れはおやこモデル、現代のそれにはなかま-官僚制連結モデル」⒃が、それぞれ、 採用された、ということになる。
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