仏教を楽しむ

仏教ライフを考える西原祐治のブログです

倉田百三の述懐

2020年12月15日 | いい話

法話メモ帳より

 

信仰深い作家で「出家とその弟子」で有名な倉田百三さんにこんな話があります。この方は生涯病弱の中で道を一すじに求め続けられた人ですが、青年のころ「働かざるもの食うべからず」という、当時西洋から入って来た社金主義的な言葉に深い関心を示され,社会運動にも情熱を傾けられました。

 ところがやがてこの言葉には、病床からはなれられなくなった倉田さんにとっては「自分のように、何の仕事もできないで生きているものは社会の穀潰しで、生きる資格がないのではないか」と、自分自身を責めさいなむものとなったのです。

 そうして悩んだすえ出あったのが仏教だったのです。その教えを通して、倉田さんはこう告白しておられます。

 「私は大きな誤りを犯していた、私は決して権利や資格があって生きているのではなく、あらゆるものに許してもらって生きているのであった。それを思えば、みんなに謝らなくてはならなかったのだ。そこに気づいた時はじめて私は、自分の背後を見ることのできる眼が開けた」と。

 「自分の背後を見る眼」、それは自分の力で生きているのだと信じていたのが、180度転回して、自分の今日をあらしめている無限の働き、無限の恵みの尊さに心の眼が開けたということでしょう。

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