仏教を楽しむ

仏教ライフを考える西原祐治のブログです

トランスフオーメ-ション

2020年12月06日 | いい話

法話メモ帳より(20年前)

 

質的な転換

 「当院の最も大切な場所は仏間(本尊を安置してある部屋)だと思っています。見学者が次々と見えて、仏間に感心され、その都度仏法のお話しをさせて頂いております。今まで関心のない方でも心のどこかで引っかかっているのが生死の問題だということが、お話ししてみて初めて分かります。皆さまが病院には特に大切なところという認識をされて帰られます。…ご門主様にお目にかかられたらよろしく申し上げて下さい」
 宮崎ホスピタルのM副医院長からの手紙です。一昨年、この病院は、地上七階地下二階の近代的な病院に生まれ変わり、その一角に仏間があります。
仏間の存在は、病気の中、安心して生き安心して死んでいけるバックボーンを大切にする病院であることを示しています。
 この仏間のご本尊が手紙の中にあった西本願寺・即如上人のご真筆の名号なのです。この仏間に安置するために書いて頂き拝領したものです。
去る三月十四日、京都で、ご門主と会食の機会があり、その折り、病院と仏間の写真をお見せし、M医師の伝言をお伝えしたことです。
 病気や苦しみは、心の成長にとっては最も適した環境だと言えます。その時、大切なのが、苦しみや悩みに心を寄せてくれる人があり、場所があると言うことです。
 看護論の研究者である遠藤美恵子(北里大学看護学部教授)氏は、その著書で語っています。
「人は、苦しみの体験の中で、自分のあり様がつかめたとき、新しい生き方を見いだす。今までの自分の生き方のルールを捨て、現実の中で新しいルールを見いだす。それは人生の中で最も難しい仕事であり、それをやり遂げたときに、人はトランスフオーメ-ション(transforomation)とも呼ぶべき成長と成熟を遂げる。トランスフオーメ-ションとは、さなぎが蝶になるよな質的な転換です」
 人は、病気や苦しみの中でトランスフオーメ-ション・質的な転換を持つ。病気を煩ったことが不幸なのではなく、病気になって、そこから何も生まれなかったということこそ不幸なのでしょう。
宮崎ホスピタルの仏間は、人間の成長と成熟を期待する場所であり、我が家の仏間も同様です。(以上)つづく

コメント
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