仏教を楽しむ

仏教ライフを考える西原祐治のブログです

彼岸花

2020年03月09日 | いい話

昨日紹介した『彼岸花―故・林大貴くんに捧げる』 (林 有加 著・ 長田 智佐子絵)、これは購入しました。彼岸花は、和歌山毒物カレー事件の犠牲者、林大貴君の母、有加さんが、天国のわが子にささげた物語が数編書かれています。

以下は、ネットからの転載です。

http://www.niji.or.jp/home/satoru/kodomo.htm

「彼 岸 花」    林 有加作   (全文 原文のまま)
 ある年の七月、十才の少年の命の灯が消え、ひとつの魂が生まれました。
 短かい命から生まれた小さな小さな魂でした。その小さな魂は、母が恋しくて、神に、もう一度だけ母に会わせてほしいと頼みました。
 神は、その純心無垢な魂を不憫に思い、願いを聞き入れてくれました。
 そして、神は、こう言いました。
 「一日だけ、おまえを人間界にもどしてあげよう。ただし、人間の姿では、もどれない。母が、おまえの姿を見つけ、母の声を聞くことが出来たなら、いつか再び、親子として人間界に生まれかわることを許そう。しかし、母の声を聞くことが出来なかった時には、魂は、消えてなくなってしまうが、それでもよいか?…」
 小さな魂は、九月半ば、母との思い出深い彼岸花の姿をかりて、母の住む家の近くの土手に、ひっそりと咲きました。
 なつかしい家の窓には、悲しげに外を眺める母の姿がありました。
 精一杯、健気に咲く一本の赤い彼岸花に目がとまったのでしょう。しばらくすると、母は、引き寄せられるかのように、ゆっくりと土手の方に近づいてきました。
 そして、母は、彼岸花に顔を近づけ、語りかけました。
 「もう、彼岸花の季節になったのね…。ひろくんは、いつも、お母さんのために、このお花を摘んできてくれたよね。ありがとう。」
 母の目から涙がこぼれ落ち、声にならない声をふりしぼって言いました。
「ひろくん、おかえりなさい。」
そう言って、花をやさしく手で包み込みました。
 なつかしい母の声とぬくもりでした。
 その母のやさしい声を聞くことが出来た瞬間、<お母さん、ただいま! いつかまた、きっと、お母さんの子どもに生まれてくるからね。ありがとう、お母さん!>
 彼岸花は、母の言葉と、いく粒もの涙を花びらで受けとめ、ひとすじの光となり、空に昇っていきました。
 母は、空を見上げ、いつまでも祈りつづけました。
(以上)

本を手に取って、絵の中の文を拾いながら、物語に接することをお勧めします。

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