約2ヶ月ぶりの全曲レビューです。
と、いっても先週「Ghost Apple」毎日レビューやってたんですけどね。
一気にまとめてやるのは随分久々。
ジャンプ感想といい久々2連発ですね。
今回は椿屋四重奏の「CARNIVAL」。
8月に出たアルバムですが・・・。
これは是非やりたかったので。
なんつーか、「正統進化」というフレーズがよく似合うアルバムです。
そして本人の言うとおり前作が「月」ならこれは正に「太陽」のアルバムですね。
超ギラッギラの上に、非常にバラエティにも富んだアルバムになっています。
椿屋のアルバムでバラエティに富んでるって何気に珍しいですね。
という訳で以下。
1.別世界
「今に全てが変わるさ」というフレーズが正にこの曲を象徴しています。
本当に世界を変えていくような曲というか。具体的に言うと、椿屋自身とロックシーンですね。
並々ならぬ気合を感じさせる一曲です。
実際、今回のツアーもかなりの広範囲に渡ってますからね~。
「CARNIVAL」というアルバムの一曲目らしく、これからどんどんと進んでいくぞという意志も感じさせます。
「終わらそうぜ 地下の生活」
「連れ出そうぜ 埃まみれの誇り抱いて」
「あいつを黙らせるのさ」
「望みはまだ 果てない」
サウンドにしても、歌にしても、ミドルテンポながら非常に陽性。カラッカラに乾いています。
扇情的なグラム・ロックですね。
2.太陽の焼け跡
性急なテンポと、急かすような歌がこびり付くビート・ナンバー。
まるですがりつく様に歌う中田裕二のボーカルが艶っぽさを感じさせます。
頭からいきなりサビで始まるのもインパクトがあっていい。
それにしても、恐らくは単なる愛憎劇を描いている詞にも関わらず、
それについての表現力がやたら高いです。
良い意味で大げさというか。
「太陽に剥ぎ取られて 全身がハレーション」って一体どんだけ愛にやられてしまったんだ(笑)。
「愛なんて 憎らしいものさ」ってフレーズも聴いたらループします。自分の場合。
3.CRAZY ABOUT YOU
いやーまさか、椿屋がこういう曲を作るとはね・・・。
ぶっちゃけ予想外も予想外、スキップできるくらい明るく楽しい曲調ですからね。
暗くてドロドロしたかつてのイメージからは想像もつかない。
ピアノの音も非常に効果的で、思わず口ずさみたくなります。
ただ、だからといって無条件にポジティブな楽曲、という訳でもなく
辛い出来事を経験したからこその吹っ切れというか、
根本にあるネガティブな感情は相変わらず残っています。
恐らく「全てハッピー」「オールライト」な曲は、やはり彼にとってはタブーなんじゃないでしょうか。
「この世界に見放されても 君と間違い繰り返して 踊ろう」
ってフレーズがとっても素敵。
4.スピード
この曲、ギターサウンドがART-SCHOOLを彷彿とさせます。
サビはそうでもないんですけど、イントロのフレーズとかもろに。
ARTからの影響があるのかといえば微妙ですが、
椿屋がこんなオルタナっぽいフレーズを入れてくるのも意外でした。
サビのメロディーラインに関してはこれぞ椿屋!っていう
疾走感と切迫感が合わさった黄金律になっております。
5.空に踊れば
この曲もいいなあ・・・(笑)。
この曲はねえ、結構等身大で歌ってる感じがしますね。
椿屋は等身大ってイメージが全然ないバンドなんですけど、
そういう部分も出していけるようになったのかな、って。
これも割と賛否は分かれるかもしれませんが、個人的には面白い変化でしたね。
何より、サビのメロディが普遍的なグッド・メロディとして鳴っているのが素晴らしいと思います。
6.シアトリカル
ここからまた煮えたぎるロック・モードに突入。
中でもこの曲はあからさまにシニカルな曲で、自らの事をあざ笑ってるようなイメージすらあります。
不穏に鳴らされるギターフレーズや、
おどろおどろしく歌うBメロとか、
ムード満点のロック好きのツボを押すこと必死のロック・ナンバーに仕上がっています。
個人的に「感動的な展開さ」って歌詞が曲のメロディと完全に合致しているところに感動。
7.LOVE CREATURES
これはねえ・・・あからさまにアレの歌ですな(笑)。
もう本当に人間の肉欲をそのまま歌にしたと思われ、
そんな歌に「LOVE CREATURES」なんてタイトルを付ける所がベッタベタで最高です。
曲調的にも昭和のロックスターを感じさせる堂々とした歌いっぷりで、
最後に洋楽っぽいコーラスワークを付けているのも和洋折衷って印象で好きですね。
でも一つだけ思うのは、これって快感とか官能の歌じゃなくて
感動の歌なんだな、ってことは強く思います。
「命を実感して」ってフレーズが特徴的です。
とはいえ、最後は答えが出ないまま終わっていくのも、らしい。
8.フィナーレ
これもまたキツい歌ですね。
まるで役者になりきったかのような、
迫真の演技という謳い文句が似合いそうなほど
良い意味で「作られた」歌です。
要は、完全にフィクションの歌です。
敵討ちがモチーフとなっているんですが、
最後に自身もろとも消えていくのが何とも言えない後味の悪さを残しています。
終わり際の歌詞がまたニクいんですよね~。
ここで終わりかよ!みたいな。
それに合わせるかのように、サウンドも激情のギターロックです。
サビの部分で若干テンポを落とすんですが、
それによってむしろ炎が燃え上がるかのごとく、煮えたぎる感情を聴き手にぶつけてきます。
「生きていく意味を教えてくれ」ってフレーズは圧巻。
「涙で俺を溶かしてくれ」も良いですね。感情が迫ってきます。
9.僕にとっての君
まるで小休止です!といわんばかりに、
素朴なアコースティック・ナンバーです。
どぎついロックナンバーが続いていたのでバランス的には絶妙です。
単体で聴くには少し弱いか?と思いつつも
じっくり聴いていると、
サビの蚊の泣くような、侘しげなボーカルが段々クセになっていくような、スルメ曲です。
「信じたものに嘘つかなくて良いから」って一節がとても染みる。今作でも作詞能力相変わらず高いな。
10.シンデレラ
アルバム随一のキラーチューン。
PVも作られている。
一番メロディが強い上に、聴きやすさも兼ね備えているので
今後定番曲の一つになっていくものだと思われます。
エモーショナルに歌っても形になりそうですね。
アレンジにしてもメロディにしても、正しく美を追求した曲で
流れるような構成にうっとりします。
しかも、歌詞が珍しく女性視点で書かれていて、それもまたチャレンジングだなあと思いつつも
きっちりと中田裕二の色を感じさせるのが見事。
かなり女性になりきっています。
11.SAD GIRL SO BAD
これも今までにはなかったような・・・。
気づいてみれば、今までに無かった曲のオンパレードですね(笑)。
なんていうんだろ、
サビに行くまではゴリゴリのサウンドが気持ち良いのに、
サビでいきなりアンセムになっちゃうのが面白いというか。
掛け声的なコーラスまでついてるし。
所謂oioiパンクを、椿屋流に昇華したという印象でしょうか。きっちり和メロに変換して。
とにかくスピード感が強くて何も考えずにアガれる曲ですね。
12.アンブレラ
このアルバムで随一のバラード。
とにかくスケール感が桁違いで、
本気でアリーナクラス行くぞ!って気合が伝わってきます。
是非大きな会場で聴いてみたい一曲です。
曲調は変わっても椿屋っぽい~という印象の曲が多いように思える今作ですが
この曲は「椿屋っぽい」というイメージからも抜け切っているような、
ある意味では一番振り切れている曲かもしれません。
ストリングスまで付いてきて、かなり壮大で情景が浮かぶ出来になっています。
「生まれ変わったら救われるとか ただの慰めだろ」
と、いいつつ毒もキッチリと。
13.夜の行方
最後の最後でまたしても新境地、
しかもピアノ弾き語りの曲ですよ。
こんなのも、アリなんだっていう。
シングルのカップリングならまだしも、アルバムでいきなりやるとは大胆。
思えば椿屋のアルバムってどっしりと終わるイメージが強かったので、
こういうしっとりと優しく終わるラストっていうのも新鮮でオツかも。
メロディ的にはやや押しが弱いですが、これも慣れれば聴こえ方が違ってくる可能性大です。
どっちかというとライブよりCDで聴きたい一曲。
ただ、演るとしたらどういうアレンジで来るのかが気になる。
このアルバムって、割と新境地に挑んでいるナンバーが多いのに
最終的にはどれも椿屋の色の一部だと思えるのが面白いというか。
冒頭にも書きましたけど、元来の椿屋が発展したってイメージなんですよね。
こういうアプローチでもいけますよ的な。
これからもこういう感じの路線で行くのかは分かりませんが、
これはこれで一つの作品としては中々に意欲的なアルバムになったなとリスナーとしても手ごたえを感じています。
あとはツアーでどう磨かれてくるか、ですね、
12月に参加する予定なので、今からワクワクして待ってます。
前作が月、今作が太陽、ということで次はそれらを併せた作品を作っても面白いかもしれませんね。
という訳で、久々の全曲レビューでした。
これもっと定期的にやりたい。