私の心も治療して欲しい。集中治療室で。
それでは今夜もやります、「Ghost Apple」毎日レビュー、「金曜日/集中治療室」です。
個人的に変わらないPeopleの数少ない変わった点としてボーカル波多野の声がますます端正になってきたというか
声に艶が出てきた感じがするんですね。
それはPeopleの表現にとってはプラスなんじゃないかと思うんですけど
それが最も感じられる、発揮されてる曲がこの曲だと思います。
何故かキュートさまで孕んでますからね。
「ミイラにしてしまえ」のところとか。
しかしこんな素敵な声でよくこういう詞を歌うなあ。やはり波多野の存在は一線を画してますね。
前回の木曜日から一気にスイッチを変えて轟音のようなイントロから始まる金曜日。
いかし轟音なのはスタートだけで
その後はまるでワルツのような、スロウダンス出来るくらいの心地よいリズムで楽曲は展開されます。
どこかの国の眩い朝を髣髴とさせるような。イメージ的に日本ではないですね。むしろ架空っぽい。
そして最後に再び轟音のようなアンサンブルが鳴らされて一気に終わるという
シンメトリー的な要素も感じる楽曲です。
いつも思いますがPeople In The Boxの楽曲構成は独特のものがありますね。セオリーを無視してるというか。
「失業クイーン」なんかでも何気にABABサビABサビBサビとあんまり聴かない構成やってたもんなあ。
歌に関しては波多野裕文の表現欲求が最大限に発揮された、
別世界に誘われるぐらいのスケープ感がとても気持ちよくて、
丹念に作られたメロディもスーッと心の琴線をすり抜けていくようで非常に滑らかな感触で聴ける曲。
が、詞に関しては全然滑らかじゃない!
むしろ色々な意味で引っかかりまくり。
聴き手の想像力を煽ってくれるという点では、この曲は最たるものがありますね。
「何があったんだ?」と単純に気になってしまうというか。
そう思わされたこっちの負けですね。
「さあさあ、集まれ 亡くしたものぜんぶ ここへ
足のもつれた役者の為に 幕が上がる」
この一節は正に集中治療室を指しているのでしょうか?
別の解釈もありそうですけど。
てか正解はそれぞれの聴き手の感受性によりますね。
「運び込まれたモナリザはベッドで泡を吹いている」
これは主人公の愛する人の姿を表現した詞のように思える。
極めつけはこれ
「めちゃくちゃにして、やろうよ
めちゃくちゃにして、あげるよ」
個人的に木曜日は空っぽになってしまった人の心境というか、無気力の人間の情景を切り取ったものと
そう感じているんですが、
この曲はそこから感情が蘇ったというか、
それも怒りの、どうしようもない事象に対する憤りを感じさせる、実は激情の一曲なのではないかと思います。
こんなにキレイな歌とリズムなのにね。正に表裏一体だ。
「ダメになった絵の中の国で
僕らの困ったように笑う姿は
溶けていったよ
消えていくよ」
土曜日なんて来る訳ない~♪というメロディが浮かびつつも、確実に土曜日は来る。
消えていく二人の次なる背景は。
待合室で、また。