超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

咲-Saki- 11巻/小林立

2013-04-25 14:16:53 | 漫画(新作)



















小林立「咲-Saki-」11巻読了。














全国大会の2回戦も無事に終わった訳なんですが
県大会の決勝と比べてそこまで話数使ってないのにも関わらず個々の高校がきっちりと印象に残る塩梅
それはなぜなんだろう?って思ったら多分アフターケアがしっかりしてるから・・・だと思いました
最後は咲の華麗な覚醒と姫松の伏兵っぷりが試合を盛り上げたイメージなんですが
それはそれで面白くはあったんですが
そういう駆け引きや転々とする状況描写の楽しさに加えて
安易に噛ませにしない丁寧さとキャラを大切に扱う姿勢が伝わって来たからこそ
最終的に改めて「良い試合だった」と感じる事が出来るその驚くくらいの爽快感が何とも素敵だなあ、と

咲は相変わらずの鬼っぷりでしたが水面下では苦戦していたという事実が面白かったし
姫松は姫松で勝ち上がった喜び以上に悔しさに燃える描写で熱さを感じる事が出来た
永水が個人的に勝ち上がると思ってたから敗退は意外だったし、
でもそれもちゃんと噛ませ犬だった~、ってならない負けた理由が克明に提示されてるあたり
負けても一目を置ける選手達・・・というのが使い捨てでない良さを感じたり
負けたからってめちゃめちゃ差があるわけでもなく
結果的にはほぼ全員その実力に尊敬出来る塩梅の素晴らしさ・・・を今回も往々にして感じました
なまじ話数に関しては県大会決勝よりも少なめだった分その利点はいつも以上に感じられましたかね
試合自体も相応に面白い仕上がりだったんですが
その後のアフターケアだったり今後の更なる絶頂に向けての布石がより面白く感じられた巻だったかなと
やっぱり「咲」の面白さや存在感は唯一無二だなあ、と改めて思えた新刊でした。
唯一最後にはほぼ見せ場がなくなってた宮守に関しても
負けたからこそのさり気ないドラマが添加されてたりしてそれもまた心に残るエピソードで良い
海に行く予定だとか、個人戦だとか使い捨てる気が全く無いその姿勢も心地良いなって思いましたね。
スピード感やハッタリの効き具合に加えてそういった周辺事情も楽しい内容になってるので
試合だけでなくキャラ間のドラマも楽しんで欲しいな、と
主人公の高校だけが贔屓されてる感じもしないのでその意味じゃ均等に感情移入出来るバランスが
より熱血部活漫画として優れてきたなってまじまじと感じられた11巻目でした。


しかし、そこはやっぱり主役の高校ですから後半は彼女らに関わるお話が中心でしたね
まずはなんといっても遂にその姿を本編にも表した阿知賀女子の面々の描写に感動しました
外伝に触れてた最大の目的として本編に還元されることを見越してた事があるんですが
その期待通りに熱い展開への予見が際立って来てワクワク感あるなと
彼女らの努力や健闘の数々も見守ってきたつもりなので
その意味じゃ今からぶつかり合う展開が至極楽しみで仕方ないですね
やっぱり外伝の存在は本編にとっても意義のあるものなんだな、と思えたのが個人的に良かった
その時を待望しつつ外伝に真剣に触れておくのも良いかもしれないなあと少し
幼少時の描写含めて阿知賀との友情を感じさせる流れが心地良い後半

それに加えて咲の過去描写もちょっとずつちょっとずつ顔を出してきました
あの頃居た友人の描写だったり、壮絶さを感じさせる過去のカットの数々だったり
姉の存在に畏怖する姿だったり・・・
いつもは不敵な咲だけにそんな繊細な描写の数々もハッタリが効いてて面白かったんですが
その分来るべき真相解明や激突が更に楽しみになったドキドキも得られて
その意味じゃ決着と同時に布石も大きな巻であったかなと
卓上では勇ましい彼女も
離れれば意外にか弱い一面も垣間見せてくれたりして
だからこそ、底力のぶつかり合いの予感に気分が高まってしまうような
和と咲共に清澄のメインとしてしっかりと盛り上がってく要因を用意してくれてるのが頼もしくもあって
準決勝で新たに戦う強豪二校の描写含めて正に待ちきれないクオリティの新刊に仕上がったと思う
相変わらず県大会で共に戦った面々の出番もあるあたり抜け目のなさも感じられましたね。


あと改めて思ったんですが、この漫画は極端にグラマラスな女性が多いですね
キャラが増えたことによってどのページを捲ってもグラマー描写連発なものですから
視覚的にも気分が良いというか・・・
その辺は小気味いいハッタリ描写の延長線上なんですかね(笑
キャラ自体も使い捨ててない上にどんどん増加の一途なんで美少女キャラのコマ率もどんどん上がってきて
意外性のあるストーリーと共に美少女漫画としても更に強化されてきた印象の11巻目
その様子はある意味異常でもあるんですけど(笑)。
ただ、狂ってるのがこの漫画の長所の一部でもあると思うのでその意味じゃとことんまでらしいですね
そんなキラキラしてる美少女軍団を眺めてるだけでもほんわかした気分になれるコミックス
少年誌的熱さと美少女漫画的軽さが同居してるそのセンスはやはり凄いなと感じれた
まだまだ絶頂を目指す気概に溢れた一冊でした
とりわけ今回は前述のようにアフターケアの秀逸さが光ってたように思えた新鮮さもプラスで。
永水のみんなもまだこれからだと思うから頑張って欲しいですね
特に神代さんは好きなキャラなので期待してます(笑











どんどんと熱を帯びていく様子が気持ち良かった決着と布石の新刊
姫松のリベンジや新たな二校の実力、阿知賀との再逅の予感や照との激突の期待も含めて
大いにワクワクを寄せられた一年ぶりの現状報告でした。
あいかわらず我が道を往く姿勢が素敵ですね。まだまだ魅せられるつもり。



Shout to the Walls!/NICO Touches the Walls

2013-04-25 06:26:56 | 音楽
















最大級を望んだあげく 最低限ができんアホタレ (アビダルマ)














NICO Touches the Walls1年半ぶりのニューアルバムを聴いたんですが
正直傑作だと思いました
聴いてる間常にニヤニヤが止まらなかったです(笑
割と前作がジャンルの網羅的なアルバムだったからか、この作品は非常に衝動的な作風になってて
あまりバランスとか緩急とか考えずにとにかくグイグイと鳴ってる感触があって
それがまたここまで来ると新鮮というか
メジャーになってからは大体最低限のバランスを考えて作った作品が多かったので
その意味じゃメジャーのエッセンスを保ったままインディーのテンションに戻った作品だとも言える
それが多分壁のバンドに戻ったという発言の真意なんじゃないかなあ、と
それまでは様々なジャンルの楽曲を丁寧に料理してしてきて
勢いのある若手という印象以上に個人的には職人的な良さをずっとNICOには感じてきたんだけど
今回は敢えて初期のようなジャンクな格好良さを追求しているという感じ
それによってパワフルさだったり
エネルギッシュなテイストが際立っていて
ある意味二枚目のファーストアルバムだと形容する事も出来るような、
そういう作品だってのが個人的な結論ですかね
やっぱり「HUMANIA」というアルバムはあの時点でNICOの金字塔だったんだ、というのも再確認しました
器用なバンドと言うパブリックイメージをぶち壊すくらい荒々しいアルバムに仕上がってますが
その実「夏の大三角形」「アルペジオ」等で
きっちりポップサイドのファンへのアプローチも怠ってないのがまた抜け目ない作品
突き抜けた、振り切れたという言葉がこれ以上無いくらい似合う各々を完全にイカせ切った明らかな新境地
1stが既にベテラン臭漂う磐石の作品だっただけに
このキャリアでこういうふてぶてしいアルバムを出すって選択肢が何より素晴らしいですね
職人のNICOのアルバムも勿論傑作揃いですが、こういう尖っててバランス無視のアルバムもこれでいいものです
そんなNICOの原点部分が新たに磨き上げられて堂々と鳴っている・・・そんな作品だと思います。

それにしても、NICOの書く曲って「欠かさずイイ」んですよね
どの曲も聴き手がしっかりと納得出来るクオリティで何かを感じられるように鳴らされてる
所謂無味無臭な曲が殆どないあたり、その安定感はもっと評価されるべきだと常々思ってます
今作はそれに加えて古村作詞作曲の光村曲「トマト」を彷彿させる「アルペジオ」だったり
古村坂倉共作のNICOらしさを体現した名曲「チェインリアクション」、
更には対馬作詞の「紅い爪」が収録されてるあたり
正にNICOそのものというか、全員の血が注がれてる事もあって原点を感じさせる作品になってるかなと
まあ元々光村曲しかなかったから原点って言い方もどうかな、とは思いますけど
でもそういった核の部分がたくさん詰まってるアルバムな気はしてて
身に付けたテクニックや迫力はそのままに
もう一度初心に立ち返って鳴らされたような・・・そういうみずみずしいアルバムでもあります
中でも古村曲「アルペジオ」は明確に前作「夕立マーチ」と比べて詞が良くなってるのが素晴らしいですね
前作はもっと初々しかったと思うんだけど(笑
そういう個々のメンバーの作詞作曲家としての成長を見守るのも楽しくなってきた
最初からある程度完成されてた年齢不相応なバンドだっただけに成長的な要素が入って来たのは面白い
安定を一旦ぶち壊して、もう一度壁を突き破って暴れてやる、といった気概が感じられる
野心の高いハイクオリティなロックアルバムに仕上がってると思います
既にこの作品だけでも傑作だとは思うんですが
ここからまたどんな足掻きやもがきを聴かせてくれるのか、を考えるとまだまだ越えて来そうですね
成熟の季節を終えてもう一度初期衝動の季節に戻って来たNICOの名刺代わりの一枚
聴く価値は十分にあるのでロックバンドが好きなら是非聴いて欲しいですね
またもや一歩抜きん出たアルバムを作ってくれた印象でファンとしても嬉しくなるようなアルバムでした。


好きな曲はほぼ全部(笑)なんですが
敢えて提示するなら情景が聴いてる間じゅうずっと思い浮かぶ「夏の大三角形」、
激濃ゆいぶっきらぼうなロックンロール「アビダルマ」、
勢いが激しい割にメロディが繊細にも感じる「ストロベリーガール」は新曲の中でも特に推し
シングル時は表題曲以上に中毒性が強かったリフ主体のロックの気持ち良さに溢れた「チェインリアクション」、
堅実な楽曲の良さと味わいが光ってる「ランナー」は音もガサガサで良い
古村くんの作詞能力がグンと上がったように思える「アルペジオ」に
爽やかなアレンジと曲調なのに詞と歌はグイグイ迫ってくる「Mr.ECHO」の耳に残る感もまた素敵
四方八方に飛び散ってる印象であまり統一感に関して言えば今までよりも劣ってるのは確実ですが
その分各々に振り切れた楽曲群の差異を楽しめるのはこのアルバムが一番だと思う
激しい曲はとことんラフに
ポップな曲は職人魂を見せつけしっかりと馴染みよく聴かせる
そういったNICOならではの中途半端ではないコーティングセンスは健在でした
割と色々なジャンルに手を出してる事から中途半端というイメージもあるとは思いますが
彼らの場合はその中途半端さが最大の武器になってるイメージですかね
要はどんな曲をやらせても強い、という
その調理自体はどれもこれも本気なのが強み、というのがよく分かる楽曲群になっているかと
また大好きだと思える楽曲がたくさん増えて個人的に嬉しかったです。
新しい傑作に、拍手。












でも一番好きなのはやっぱ「夢1号」ですかね(笑
この曲の持っているどうしようもないルサンチマンのエネルギーに適う曲は中々ない
「夏の大三角形」「Mr.ECHO」に比べたらそこまで派手な印象もありませんが
純粋に楽曲の質で考えたら今まででも随一のナンバーだと思う
こういう弱者を照らしてくれる曲が心から好きです。
またライブで聴きたいなあ。