超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

People In The Box 『Ave Materia』 release tour@中野サンプラザ 13.4.12

2013-04-18 04:12:08 | ライブレポ















先週の金曜日にPeople In The Boxのライブに行って来ました。














ピープルのライブに行くのは実に2年半ぶり・・・という事ですっごく久々だったんですが
以前よりも楽曲に幅があってより不思議感増しつつ、盛り上がりもしっかりと携えてた印象で
ずっと同じタイプのライブを繰り広げる類のバンドだと思ってただけに
その変化もまた新鮮で面白味を感じれた公演でしたね
正直ブロックによってテンションが違うのでその意味では多彩さを見せ付けた公演、といった感じで
まだまだ表現に関しては底が知れないバンドだなあ・・・とつくづく感じたのでした。
最初から最後までつるっと楽しむ事が出来て磐石の一夜だったなあ、と

そして波多野さんは新譜の楽曲ほぼハンドマイク
旧譜の曲も一部サポートギターを入れたりしてその辺は正直驚きましたね
まあ、他の方のレポ読んでて薄々そうじゃないか、とは予想してましたが
ただ、その分息を呑むような繊細なボーカリゼイションだったり
まるで呪術師のような妖しげな動きに関しては
正に新しい刺激といった印象でプラスなんじゃないかと思いました
それでも3ピースの良さを感じさせるパートもあったりで割と柔軟に組み立てていたライブ構成で
それも含めて予定調和ではないドキドキが味わえた至福のショウになってましたね
今のピープルは本当の意味でオルナタティブなバンドになってると思う。








毎年中野でワンマンやってたのに来たのは初めてなんですねえ
しかし改めて中野サンプラザは格式あるし奥行きもあるしカッコ良いハコですね
西船橋から東京メトロ使って行くので他の会場よりも切符代が安上がりなのもいい(笑
駅からも徒歩直ぐだしまたここでライブが観れる事も嬉しかったです。

サポートを迎えた状態でメンバーが登場、
威勢良く鳴らされる「時計回りの人々」の格好良さに痺れつつ
この曲はマジョリティに染まる気持ち良さを描いていてそのトリップ感溢れる安らぎに早くも恍惚気味
そこから「武装解除して押し黙ったきみは危ない」と安易な迎合を批判する「市場」へ
両極端な流れにニヤリとしつつ重厚感があって素直に気持ち良かったです
矛盾するようですが「キャッチーな不穏さ」を感じましたねえ。

ダンサブルなギターのカッティングが最高に気分をアゲてくれた「球体」、
暴力的に爆音を鳴らすAメロとは間逆にサビで一気に繊細が出るコントラストがイイ
元々あった「声を返せ」と何度も歌う姿はやっぱ感動モノでした
自分も常に思ってますからね。


ピープルらしからぬミーラーボールとキラキラの照明の演出が面白かった「割礼」、
この曲がまた何とも言えない小気味よさと快感を醸し出していてとっても良かったです
あの割と静かな曲調でああいう派手な演出ってギャップが堪らないですね
シンプルに突き詰められた言葉もしっかりと響いて来ました。

伸びやかな歌声が感性を刺激する「ダンス、ダンス、ダンス」に酔い痴れつつ
「それで自由になれたかな」と聴き手に毒を与える「みんな春を売った」の独創性に浸る
美メロとシックな雰囲気が身に沁みる「物質的胎児」は想像以上に感傷を刺激してくれた印象
極めつけは波多野さんの完全に歌に心酔し切ったパフォーマンスが絶妙だった「八月」、
特に「壮大なジョーク」のあたりの歌声はコミカルさと鬼気迫る迫力が混同していて記憶に深く残りました
この曲は歌詞も相当深くて、ある意味絶望的で、でもだからこそ処方箋にもなりうる感覚でもあって
この曲を生で体感出来たのは想像以上に意義のあることだったなあ、と
正直ここまで印象的に演ってくれるとは思ってなかったので
歌に入り込む、ってスゲえなと


新譜の曲が大体終わった時に思ったのは
これまでのようなあからさまに刺激的な曲は少ないが
その分内側に滲んで残る感触が思ってた以上に素晴らしく感じるなあって
事実一曲も退屈した曲はなくて、やっぱり良いアルバムだったんだなとしっかり再確認出来ました
特に「球体」「割礼」「みんな春を売った」「八月」は深く記憶に刻まれる印象で

個人的にえっ、まだこの曲演奏してくれるんだ!?と驚いた「失業クイーン」、
「Frog Queen」の中でも随一に大好きな曲なのでひたすらに嬉しかったです
憎悪と諦めが同居するこのナンバーはやはり沁みるなあ、と

不穏な言葉を勢い良く撒き散らす「市民」の衝撃(初めてライブで聴いた!)から
この日の選曲の中では一応アッパーサイドに入る「ストックホルム」で明るい盛り上がりを演出
最後の「やだよ」辺りのトリップ感は流石の迫力だなあって改めて思った


新譜から再び「序」で大吾さん曰く「ハロプロの聖地でwow wow言えて嬉しい」とのこと
このツアーだけこの曲は演奏するみたいなのでその意味でも貴重なもの聴けました
金曜日なので「金曜日/集中治療室」なのか?とか考えつつ壮大なスケール感が素直に楽しい
滾り切ったエナジーがグイグイ伝わって来る「ニムロッド」は本当に予想以上のクオリティ!
マシンガンのように言葉を矢継ぎ早に吐き出す姿が異質感を煽ってて最高でした
あとやっぱ相応の攻撃性も感じつつ

本編最後はナチュラルなサウンドを存分に響かせた「さようなら、こんにちは」で終了
「ただいま、ひさしぶりだね 原風景」のフレーズは生で聴くとより琴線を揺さぶられる出来栄えで
この瞬間を味わえて本当に良かったなあ・・・とつくづく
大事なメッセージと
人間の抱える本質的な批評性、それに憤りを存分に浴びる事が出来た至福の時間でした

新譜は余り生演奏に映えない気もしてたのでそこまで期待をしてた訳ではなかったけれど
実際に聴き手に沁み込ませるように鳴らされるとここまでしっかり気持ち良くなれるもんなんだな、って
またまたバンドの実力やポテンシャルを往々にして感じてしまった一夜でした
カタルシスは前回行った10年秋の野音より上だった気がします。
素晴らしかった。









セトリ
1.時計回りの人々
2.市場
3.球体
4.割礼
5.ダンス、ダンス、ダンス
6.みんな春を売った
7.物質的胎児
8.ブリキの夜明け
9.八月
10.失業クイーン
11.市民
12.ストックホルム
13.序
14.金曜日/集中治療室
15.ニムロッド
16.さようなら、こんにちは
encore
17.親愛なるニュートン街の
18.完璧な庭
19.旧市街
encore2
20.ヨーロッパ







日本でも有数の緩いクラップ曲~、という紹介から「親愛なるニュートン街の」
この曲も初めてでしたがこれまた戯曲っぽいセンスが新鮮で面白かったですね
今は割と一体感もあったりして
よりショウとしての完成度を優先してる印象でした
鉄板の「完璧な庭」の盛り上がりから改めて変な曲だなあ・・・と実感した(笑 「旧市街」の凄さ。
この曲のサビが何通りも存在するような構成はホントにオリジナリティ高いなあ、と
本気で感心しながら聴いてました
これまたホールで聴いてるとかなりの異質感があって最高の曲ですねえ

ダブルアンコールでは比較的初期の締め曲「ヨーロッパ」でこの日の最高沸点を刻んでの終了
「どこまでいっても名前がない」と叫び唸る波多野さんの姿は痛烈でとても美しく儚いものでした
そんな余韻を残しつつライブは完全に終了
変化と不変と、その間の繋がりを一辺に見せ付けたような堂々たる風格のライブでした。
またひとつピープルの良さを再確認出来た内容に仕上がっていてその意味でも豊かな公演でしたね。

まっすぐな声と丁寧に練られた耳障りの良いメロディで
不穏で全然都合の良くない現実を叩きつけるロックバンド。
その独創性と衝撃性に終始引っ張られてツボにハマりっぱなしの一夜、
久々のピープルでしたが完成度は相変わらず高かったですね。