超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

いちご100% 文庫版1~2巻/河下水希

2013-04-19 06:17:06 | 漫画(旧作)














私が心から大好きな漫画「いちご100%」の文庫版が出ました。
感想を書くつもりはなかったけれど、読んでたら色々書きたくなったので書きます。













◆1巻~三角関係の旨味が凝縮された最高の序盤

んんと、まず思ったのは今読んでみるとかなり新鮮に感じるという事ですね
今は大体見た目が可愛いとか美人だから~、ってのが好きになる大半の理由のように感じますけど
「いちご100%」の場合は見た目は好みじゃないけど、話してて楽しいから好き~、っていう
今殆どそういうラブコメってないよなあ・・・と思ってしまうくらいに純な序盤なんですよね
今振り返ると相当良い奴だぞ、真中って。
優柔不断なのは玉に瑕ですけど
完全に性格で異性を好きになれる真っ直ぐさはやはりヒット作品の主人公たる器だと思った。
また、よく計算されてるというか東城は最初から美少女に描かれてる訳でなく
最初は地味でトロい不人気ヒロインとして描かれてたからこそ
その後の手の平返しに於ける
いかに真中が誠実な男だったのか?というのがしっかりと浮き彫りになる形になってて
そういう構成の上手さ・・・だったりヒロインが主人公を好きになる過程もちゃんと描かれてて
正直1巻目は終始東城と真中の純な関係性に夢中になってしまいましたね。

結果的には美人判明しますけど、それでも可愛い子と可愛くない子で後者を選ぶ真中のセンスは
最近こういうのあんまりないよねえ。って印象で非常に楽しく読めましたね
また東城の諦めない献身的な態度も受動的じゃなくて面白いんだなあ
自分から積極的に献身して
決して受身ではない
真中もまた能動的な男な訳ですから、そりゃあ物語的にも面白くなって当然って気はする
引っ込み思案でおどおどした未完成な女の子だけど、自分の為に手作りのプリントを作成してくれたり
時には身体を張って助けてくれたりもする実は逞しい女の子でもある
そういう東城の感情移入してしまうキャラ性というのは
間違いなくこの時期のいちごを物語的に引っ張ってくれた大きな要素だな、と
私個人的にはさつき派だったんですが改めて東城の可愛さといじらしさを再確認出来て良かった
彼女が居る中で惹かれあってしまう背徳感も間違いなく面白さに貢献していると思う。


もう一つ、この漫画は付き合うのがゴールではなく、付き合うのがスタートなんですよね
そこから真中と西野のなが~い関係が始まって絡まって、結末までずっと引き摺っていくわけですが
この物語の優れた部分の一つとして結実はしても上手くいくわけでもないよという事
最初の内はドキドキしつつも馬が合わない事を中心に描かれるんですね
それもまたリアルだなあ、というか
関係性が解れても、再び結ぼうとする西野の頑張りに心打たれるといいますか
彼女もまた受身ではなくちゃんと恋愛を考えてる人物なんだってことが読んでると伝わってきます
外見だけを重視する男が多い中で外見が地味でも庇う彼の真っ直ぐさに惹かれたんでしょうけど
最初のあたりを読んでると確実に当て馬に思えるのがまた凄いですね(笑
でも西野の必死に歩み寄ろうとしてくれてる人の良さも
序盤の物語性に於いて深みや切なさを与えてくれてたんだと思う

付き合うことの難しさも何気に描かれてるあたり奥が深いな~、と改めて感じたんですが
スタートが付き合うというものだったからこそこの漫画は結果的に名作になれたんだとも思ってる
意図的では決してないと思いますが、だからこそある意味奇跡的だなあって
そう感じさせるような素晴らしい序盤でした。


それにしても今読んでも普通にすっごく面白いな~、先が気になるな~、と思える辺り
中学生の時に新連載1話を読んで受けた衝撃が未だに色褪せてないことを感じさせてくれて本当に嬉しかった。
献身的な東城も、頑張り屋のつかさも、素直で真っ直ぐな夢見る少年真中もみんな好きなキャラです。
という訳で2巻の感想に続く。

とりわけ、東城が美少女姿で試験を受けに来る展開は神懸かってたと思う。ドライブ感出まくりだ。




◆2巻~ますます泥沼化&繊細な感情を描き出す


1巻の内容はほぼ完璧な形で締まってて最高だったんですけど
この2巻の内容はひたすら泥沼化していてまた違った意味で最高でした
2巻目でもやっぱり東城の存在が一番気に掛かるんですが、少しずつ壊れていくんですよね
さつきとの関係性に東城とは思えぬほどの嫉妬や激昂を飛ばすシーンがあったり
真中と西野との付き合いが続いていても自分が一緒にいたいと告白したり
抑えきれない感情が溢れ出てるからこそ
この時点では東城に一番感情移入しちゃうなー、と思ってて。

改めて読んでみるとどう考えても最後にくっ付くのは東城とだろ?としか思えないような流れなんですが
彼女は真中でなければいけない必然性が最も強い人物なだけに当時も今もそう思うんでしょうね
だから、正直個人的には彼女の感情が最も自分の中でグッと来るなあ、と感じるんですが
そういう恋愛に対する必死さ・・・がよく伝わってくるのが2巻分の最も良い部分ではないでしょうか

ここまで状況が絡まって修羅場展開が次々生まれるのは登場人物がみな積極的だからですね
水面下で真中との絆を深める東城と真中との関係を諦めない西野、アプローチの鬼さつきと
誰もが誰も大胆に動いてるのは女性作家ならではの特徴なのかなと思ったり
まあ要するに「迫る生き物」なんだよ、と
それによって真中の精神状態がほぼずっと混乱してる辺りある程度の罪悪感は感じて欲しいのかなって
そういった部分でもこの作品ならではのオリジナリティを感じる事が出来て良かったです
またみんな見事に性格が良く健気なあたりがポイント高いなとも
これじゃ迷うわ、と個人的には思えるので。
そんな複雑に絡み合う恋愛模様も次巻で一つのターニングポイントを迎えるのでまたその時に語れたら
今はライトなものが好まれるのでその意味でも当時ならではの雰囲気があって良かったです。
またこういう切なさを存分に感じさせるラブコメがWJで読みたいですねえ。


あの頃は学生だったし若いからこの時期は完全にさつき派でしたねー
今読むと人間臭い東城に感情移入してしまうんですが、当時は人間臭さとか気にしてなかったからな・・・
それでも彼女の大胆不敵なアプローチは単純に見ていてスカッとしますし(笑
大雑把に見えて繊細な部分も変わらずに可愛いなと思えました
ただ一番クリティカルヒットしたのは東城の真中宅訪問だったりして。
あのエピソードは作者に男子の魂が憑依してるようで、その意味だと割と器用な作家なのかも(笑
映画という本筋がそこまで進まなかった分ヒロインの心情やサービスで楽しませてもらってた内容でした。
その中で西野の動向がいちいちツボだったり順調に物語として深みを増しつつある時期が収録されていますね。

特に33話の叙情性と張り詰めた雰囲気は絶品だな~と改めて。









今の所描き下ろしはカバーイラストだけですが後々他にもなにかあればいいな、と
でも絵柄にしても内容にしてもエバーグリーンな良さのある物語だとつくづく感じました。
全10巻、頑張って揃えて感想も書いていく予定です。