あの頃よりも素敵な事 探し続けると決めたから (Over)
感度が鈍って諦めや妥協をし易くなると同時に
いずれ迫り来る中年時代に怯えて焦燥感も付き纏ってくる
そういう年代だと個人的には思っています、30は。
多分若いときの方が傷付くのに慣れてなくてその度に反発するような年代だったけれど
もう今じゃそういう元気も無く重なった傷の分だけただただ落ちていくだけ・・・っていう
だけど、本当は今が一番楽しい時期なんじゃないか、と思う時もあって
いくつかの可能性が消えて自分の身の程を知って、目指すべき場所もクリアになってくる
誰かと心からの想いを共有したい気持ちやそろそろ認められたい気持ちが確かなものになって
足掻くのが少しずつ面白くなってくる・・・
そう考えると
アラサーってアラサーなりの良さがあるもんだなあ、と個人的には思います
昔は自分の人生に特別さだったり頑張れば頑張った分だけ報われるという幻想があったけど
その期待もなくなって残ったのは大したことの無い人間という事実だけ
そのお陰で自分と言う人間の価値や本質を知れたのはプラスな要素であって
往くべき道や選択すべき行動が見えてきたからこそもう一度進む力が沸くのも事実
ここに至るまでに散々見たくもない景色を見てきたけれど
その分経験は嘘を吐かない
糧は消えない
そこからもう一度足掻くための後押し・・・がこのミニアルバムなんだと思いました。
私はまだ一応20代ですがあと数年で30を迎える年頃なので
ただ憂いてばかりでもいられない後ろ向きだけど前向きでもある言葉の数々に素直に励まされました
それは以前リリースした「鳥」って曲と通じるテーマ性のようにも思えましたが
前作が割とダークでシリアスな作品であったのに対し
今作は明確に前に進む意思を感じさせるポジティブで祈りのような作品に仕上がっています
練り込まれたギターフレーズと軽やかなメロディに新境地を感じる「30」、
結局誰かに必要としてもらう為に生きる事を歌う「Over」は相当の名曲です
唯一ダークな一面を情念を絡めて出した「シルエット」に
つばきの一色さんが作詞作曲した開けたポップソング「雨の降る夜」はいつもと違うコード感で楽しい
そして人生の最後の時くらいは笑顔でその生涯を終えて欲しいと願う「最後の頁」と
バラエティに富みながらもどの曲も堂々たるメッセージとタフさがあって聴いてて小気味良いミニアルバム
何もかもにワクワクして今とは違って純粋に世界を楽しめてた自分はもういないけれど
その分捨てるべきものや避けるべきもの、守るべきものも分かってきて
はっきりとした目標を持って生きる事が出来る。
それまでの傷跡だったり、罪悪感を描き出す後ろ向きさも同時に内包されてますけど
最終的には「だからこそ」の希望も描き出す誇り高い作品になったと思ってます
どの曲もクオリティ高いので、
アレンジセンスやアンサンブルの繊細さと勢いに触れる意味でも是非。
ライブ音源は、やっぱり最後の「呼吸」が絶品でした。
音も良い具合に録れてたのもプラスポイントです。
いつまでもメランコリーに浸っているだけじゃ芸がないし、豊かさには決して辿り着けない。
だからこそ探し続ける事向かい続ける事が必要なんだと・・・そう教えてくれる作品でした。
個人的に( )の中に言葉を入れるとしたら「I Wanna」ですかね。
色々な意味で。
また一つ大切な音源が増えました。