クソがいくら着飾っても クソはクソでしかない (ARENNYAで待ってる)
2年ぶりのフルアルバム。
まずタイトルが日本語で曲の殆ども日本語タイトルな時点で「ああ」って思ったんですが
全部日本語詞のアルバムですね それ故に最初通して聴いた時は違和感があったんですけど
同時に不思議な新しさもあったというか・・・
気が付けば何度もリピートしてしまう、中毒性に富んだアルバムです。
今までのような有無を言わせない圧倒的な格好良さが備わっている訳ではないけど
でもアルバム全体に漂う感情の一番底の部分をずっと辿られてるような奇妙な統一感だったり
今にも消え入りそうな儚さが感じられる雰囲気や作詞のセンスだったり
間違いなくこのアルバムでしか聴けない味があって
それが聴きたくてまた手を出してしまう、
私にとってはそういうアルバムですねえ、これは。
バンアパのアルバムって大体圧倒的なキラーチューンがいくつかあって
その隙間を縫うように実験的な曲だったりバラッドが配置されてるパターンが多いと思うんですけど
それ故に完成度は抜群に高くても統一感を求めるのは違うかな、って印象もあったりして
その意味だと初めてといってもいいくらい統一感に優れたアルバムですね
3rdも中々統一感ありましたけど
このアルバムは全部が数珠繋ぎで鳴ってる印象もあるので過去最高にその傾向が強いです
それが何を意味するのかというと、曲によっての差異があんまりないので
通して聴くには一番気持ち良いくらい流れで聴ける
1時間以上あるんですけど
そう感じさせないくらいにサッパリと聴ける緩急もあったりして
多分今まででも最もアルバム然としたアルバムなんじゃないか、と思います
こういうコンセプチュアルな作品もバンドには一枚は必要だと思うのでその意味じゃ良いタイミングかな、と
全体的にクールでポップな曲が多いのも合わさって驚くくらい素直に浸れるアルバムになってるかと
それでいて、方向性は全然違うアルバムでいて
サウンドアプローチやアンサンブルの繊細さ、メロディラインの美しさは悲しいくらいバンアパなんですよね
だから余計に不思議な感じがするというか(笑 いつものようにパワフルなわけじゃない
スカッとする爽快感も少ない
何よりオシャレな英詞でもないのに
聴こえてくるのは王道を感じさせるバンアパそのものな訳ですから
聴いてて感じられる「新しさ」はそりゃあもう半端ではなかったです
それでいて一曲一曲の仕上がりが非常に丁寧なのでいつまでも聴けるし、
ポップソングやシティポップをバンアパのフィルターを通して磨き上げてる感じもするし
だけど根底に流れるオシャレ感は健在だったりもする
だから、変わったのはスタイルとコンセプトだけでバンドそのものは全然変わってない作品だとも言える
前作が集大成的な傑作だったからこそ次は新しい音像に向かったんだろうし
所謂「新境地」とか「新機軸」を味わうには抜群のアルバム、
っていうのが最終的な結論ですかね
何よりも長年のファン的にも面白い作品というか
単なる亜種とかじゃなくこの作品ならではのブルースを感じる事が出来たのも大きかった
最初はやや戸惑いましたが、多分純粋に聴けば聴くほど面白味が良く伝わって来るアルバムだと思う
入門に相応しいのは前作だと思いますが
そこからの発展を味わうならば間違いなくこの作品ですね
ミニマムでクールなトラックが散々味わえる新しい音楽探求の一歩である「街の14景」、
恐らくは賛否両論になるとは思いますが、デビューアルバムからのファンとしては肯定したい
どころか多分いつまでも聴けるような心地良い温度のアルバムだと思いましたね
ある意味オルタナ的な要素も感じるくらいに素晴らしい作品でした
聴きこむのも楽しそうな不思議な力作です。
個々の曲で特に好きなのはバンアパらしからぬ重たいサウンドを提示した「いつかの」
アルバムでは唯一キラーチューンと呼べる盛り上がり必死の激繊細なロック「ノード」
愛憎溢れる「仇になっても」の雰囲気も素敵だし
オシャレなポップソング「夜の向こうへ」や
キャッチーなリズムが心地良い「12月の」、
バンアパとは思えないほど堂々たる美メロポップ「明日を知らない」
淡々としたサウンドスケープが絶妙な「泳ぐ針」、詞が男らしい「ARENNYAで待ってる」も好きだし
バンアパらしいスピード感が良く出てる「アウトサイダー」もお気に入り
ラストだけはややおとなしめかな、と思いつつも
結果的には個々の楽曲も好きな曲だらけになってしまった実りの多いアルバムになったと思います
聴き込めば聴き込むほどこの温度が癖になってくるのでその意味でも聴き込み推奨
それもあって今までとは全く違うアルバムとして愛せると思います
個人的には、傑作と言っても差し支えないと感じます。
それくらいファンとして面白い作品でした。
バンアパは何だかんだいいつつ基本的には明るめのバンドだったと思いますけど
(ことサウンドと歌に関してはね)
このアルバムで初めて憂いだったり儚げな情緒を表現出来るバンドにもなれたと思います
元々そういうのが好きだったのと
その化学反応がとにかく新鮮で好きになれた、新しい成果を堪能出来るアルバムに仕上がったかなと
また一つ愛聴盤が増えてバンアパの作品に外れなしという事を改めて実感出来ました。
過去作も含めてまた彼らのオリジナリティにハマるのが非常に楽しいです。