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悲しい夜の向こう側へ

曽我部恵一BAND「曽我部恵一BAND」全曲レビューその2「恋をするなら」

2012-10-26 23:30:18 | 音楽(全曲レビュー)







曽我部恵一BAND「曽我部恵一BAND」全曲レビューその2「恋をするなら」です。









2.恋をするなら








一曲目は新機軸っぽい感触はありつつもソカバンっぽい、と言えばソカバンっぽい曲で
それに比べるとこの二曲目は相当にソカバンのエッセンスからは逸脱している
サニーデイとソロの中間みたいな、
所謂ソカバンでやる必要性は感じられない楽曲なんですけど、
でもしかしそれが個人的にはめちゃめちゃ新鮮で、ある種のサプライズでもあって。
ソカバンは基本エネルギッシュでアッパーなロックサウンドが中心のバンドではありますが、
この楽曲に関して言えば声の線が細く、質感もクールで、熱さは一切存在してない
ファンキーなアコギのフレーズに乗せて歌われる繊細な恋の歌・・・
それは、ある種「ソカバンっぽさ」からの離脱というか
コンセプトをある程度放棄して
もっと自由に、ナチュラルに、「音楽ありき」でこのバンドに取り組み始めたような
そういう類の喜びがこの曲からは感じられて、もっと端的に言えば無理をしなくなったというか
「っぽさ」からの縛りがなくなって、より音楽的に豊かなバンドに移行したのかな、と。
そんな事をめいっぱい感じられた二曲目、
勿論従来のソカバンっぽいエネルギッシュな曲も詰まってる事から
よりアルバムの完成度、コンセプチュアルな部分を排除して、いち音楽として高める為
その為にはきっとこういうテイストも必要だったんじゃないか、と。
実際流れにも貢献してるし、
またこういうフレイバーを組み込んでくれるという事実も含め
長年の曽我部ファン的には非常に嬉しい一曲でした。 ちなみに、ライブでは音源よりも熱いです。

何よりも、凄くお洒落で、その上メロディの出来が素晴らしく良いんです。
もう曽我部恵一の最も得意な部分をそのまんまの純度で出したような
「そうそう、曽我部さんと言えばやっぱこれだよね!」的な。
それくらい従来の曽我部さんらしさがたっぷりと凝縮されている自分と同じく長年のファンにも聴いて欲しい
キャリア含めても特に曽我部節が色濃く注入されている楽曲の一つなのではないかと。
割と今までの経験を全部注ぎ込んだ集大成的な作品でもあるので
その意味でもこういう曲は必須だったのでは、と
今はそう思います。






恋をするなら一人じゃ無理
大切なだれかを見つけなくちゃ


当たり前と言えば、当たり前のフレーズではあるんですけど
しかしこれは真理でもあるな、と。孤独に酔う前に、最初から白け顔をする前に
それじゃ一生恋なんて出来ない事に気付きなさい
必死でそんな「だれか」を見つけなさい
孤独主義のままで、「だれか」が歩み寄ってくるほど人生甘くないぜ、と
さり気に厳しさも含めた、セカイイチ岩崎慧風に言えば「あったかいパンチ」的な
甘い歌声なのに地に足の付いた言葉っていうのもまたコントラスト的に絶妙
手癖と言えば手癖なんでしょうけど
明らかに、一歩洗練された感覚もあったりして
また新たに「らしさ」に磨きがかかったような感触がとっても素敵な一曲。
妄想空想ではなく
非常にフィジカルな視点から鳴っているポップ・ナンバーだと思います。
軽快だけど、軽薄ではないっていう。







個人的に、こんなテイストがソカバンで聴けるとは思ってもなかったので
妙にニヤニヤしながら聴いてしまった一曲でもありますねえ。
歌い出しの部分から完全に彼の色です。