未だに2009年を引きずっている西京BOYです。
総括シリーズは一段落したんですが、全曲レビューする予定の作品はいくつか残っています。
2月中には頑張って終わらせたい所存。コツコツ書いていきます。
って訳で今回は去年の10月に出たOGRE YOU ASSHOLEの「フォグランプ」。
前回のmarble「空想ジェット!」と同時発売でした。
では以下↓
1.クラッカー
初めて聴いた時「キ、キセル?」と思ってしまったくらい何故かキセルっぽさを感じた曲。
原因は出戸学の声にあって、今まででは考えられないくらい柔らかくて温かい声として響いてくるから。
こういうボーカリゼイションも出来るのか~となんだか表現の幅が広がった感じ。
この感じは前作のミニアルバムの雰囲気をを突き詰めたとも思えますね。個人的な印象ですが。
とはいえサビになるとゆったりとしたAメロから一転、一気にOGREらしいポップでキャッチーなメロになるので
そういった意味では新感触でありいつも通りの安心感もあり、と中々にレンジの広い曲だと思う。
ライブではよりロック色強し。
2.フォグランプ
このアルバムのタイトルトラックにして個人的に一番好きな曲。
分かりやすくキャッチーな曲という点では、
「アドバンテージ」「コインランドリー」と志を同じくする曲だと思うんだけど
この曲はそれに加えてコード進行やアンサンブルが非常に変則的であり、
キャッチーなのに実験的でもある。と、これまた新境地といつも通りの気持ちよさを合体させた名曲だと思う。
こういう曲は間違いなくOGREでしか演れないでしょう。
3.箱
自分調べだと、ライブではまだ一回も演奏されてない模様。
ではイマイチなのか?と問われればこれはこれで味わいのある良曲。
といつつ使いどころは確かに難しそうだなー、とか思う。
以前の「シチュー」とかのポジションの曲なのかな?とかも思ったり。
ただ幻想感や陶酔感の強い今作に於いてこの曲の働きはとても大きいと思っていて。
序盤にこういう曲を持ってくる事によって普通のアルバムとは違う流れを構築している気が。
そして「霧の中を彷徨う感じ」というアルバムのテーマにも合ってると思う。
4.ステージ
OGREらしからぬ明るい曲で、その祝福するようなムード感は初めて聴いた時驚いた覚えがある。
OGREは極端に暗いバンドという訳ではないけれど、それでもこの曲のまばゆさはある意味レアだと感じた。
まずリフの時点からしてウキウキするような感じだし
不思議と歌に関しても何となく「希望」っぽい雰囲気が漂っているような、そういう印象を持つような一曲。
ツアーではこの曲が初めに置かれる事が多かったと思うのだが、それもなんだか納得できる、
キャリアを通しても至福のアッパーチューン。 と、いってもテンポが速いわけではないです。
5.ヘッドライト
そんな曲から一転して一気に不気味なモードに(笑)。
まるで壊れたおもちゃを髣髴とさせるバンドサウンドの妙は、クセになるような中毒性あり。
また、リズム自体はとっても軽快でシンプルなので
「不穏なのに気軽に聴ける」という相反する要素がとても面白く、中々他には無い曲でもあると思う。
最後のブツ切れになる展開は音源の時点だと面白いアイディアだなー、とか思っていたが
ライブで聴くとあれ以降の展開が聴けて、しかもそれがめちゃくちゃ格好良いと思える展開なので
個人的には1粒で2度美味しい曲、とも形容できると思います。
6.K
これは完全なインタールード。これも今のところライブでは演奏されてないのかな?
というのも「レインコート」を引き立たせる為だけの楽曲として鳴っているので、これはある意味仕方ないか。
ところでタイトルの由来が気になる。
7.レインコート
ぶっちゃけ最初に聴いた時点ではあんま印象に残らなかったんだけど
何度も繰り返し聴いてる内に段々と面白さが理解できた曲。最後のアンサンブルの畳み掛け気持ちいい。
そういえばこの曲も地味だけど「霧の中」っていうテーマを引き立たせるのに貢献している楽曲って感じがする。
「箱」と同じく。
あと個人的に気に入ってるのが出戸学のイントネーションで、
「行って戻れる?」の「いーっ」って部分と
「アンカーの子」の「あんっ」って部分、
この2つが何故か凄い耳に残って、私的にツボな部分です(笑)。
これの良さを発見したから好きになった、というのもある。
8.ワイパー
これは逆に初めて聴いた時からトリップ感強くて面白いなー、と感じてた曲。何気にダブの要素も。
8分もあるけど割とじっくりと聴けるアレンジの流れになっていて
霧の中っぽさもありつつ、実は宇宙的なスケール感もあるなぁ、と個人的には感じてたり。
楽曲自体はそこまで派手ではないんですけど
アレンジのお陰でアルバムでも結構賑やかな感じの楽曲に仕上がったと思う。
是非ヘッドフォンで聴いてみてもらいたい。
このアルバムで顕著なのは、アルバム一枚の世界観を大切にしているというか
全体的に空気感を統一させてるのもそうだし(アクセント的な部分はしっかり用意しつつ)、
彷徨っている感じ、というフィーリングの再現も見事にOGRE流に出来ていて、仕上げてくれていて。
元々オリジナリティの高いバンドですが、このアルバムで更に深い部分の表現まで切り込んだというか
一言で言えば正統進化、そう云い切れる傑作アルバムになったなと個人的には思ってます。
それともう一つ、
敢えて言及するならばこのアルバムって不思議と「温かさ」みたいなものもあると思うんですよ。
例えば落ち込んだ時に聴いたら少し元気が出るような。
OGREにそういう表現は似合わないし、歌詞の内容もいつも通りイメージそのまんまという感じにも関わらず
個人的には人肌のぬくもりみたいな、そういうものも時折感じてしまうのです。
柔らか味のある音が少し増えたのも影響しているのかな。
ちゃんと郷愁の要素も入っていると思うし。
テーマがはっきりしているアルバム、とは思いつつもテーマ以外の切り口からでも楽しめる
とても豊かなアルバムだと思っています。
メジャー一作目でここまで表現が揺らがないのは珍しいですね。People In The Boxもそうでしたが。
なんだか頼もしい。
今回は割と感覚空けないで仕上げれて良かったです。
といっても全8曲だからという部分も大きいですけどね。このシリーズはずっと続けていくつもり。