アンティマキのいいかげん田舎暮らし

アンティマキは、愛知県北東部の山里にある、草木染めと焼き菓子の工房です。スローライフの忙しい日々を綴ります。

干魚の料理

2011-01-02 17:35:09 | 手作りのたべもの
  京都にいたころ、魚貝類の乾物を使った料理にしばしば出会いました。海から遠く離れたみやこでは、鯖街道を通じて若狭の海から届いた塩鯖や、御所に献上された北海道の昆布や身欠き鰊、棒ダラなど、いわゆる「塩乾もの」と呼ばれる素材を使った料理文化が発達しました。

  京都に住んでから見よう見まねで作り始めた塩乾もの料理のうち、なかでも、棒ダラとえび芋の煮物とニシンの昆布巻きは、引っ越してからも、年末になると作りたくなります。

  でも、棒ダラはここらではあまり見かけません。たまに、切り身にして水で戻したものを売っているのを見つけて、買っていました。今年は、近くのミニスーパーで、真空パックに入った「干タラ」という商品を見かけたので、干したタラだから同じだろうと思って、とりあえず買ってみました。棒ダラに比べたら身がやけに薄いのですが、値段はかなり安い。

  棒ダラは米のとぎ汁に1週間近く近く浸けておきます。叩かれると痛そうなほど固い身を柔らかく戻すのだから、それだけ長くかかるのですが、その間、ちょっとでも水替えを怠ると、非常な悪臭がしてきます。食べ物の匂いとは思えないほどのくささです。

  ところが、この干タラは一晩水に浸けるだけ。なんの臭いもしません。拍子抜けするくらい。
  
   となりは身欠き鰊です。米ぬか汁につけて、こちらも一晩おきます。

   タラと炊き合わせるのはえび芋。たまたまもらい物があったので、年末まで大事にとっておきました。  
 
   干しタラは、たっぷりの水にお茶を入れて約40分下ゆでします。そのあと、水と酒、みりんで長時間煮て、煮汁にだしがたっぷり出てきたら、皮をむいたえび芋を入れます。京都の料理屋などでは、タラとえび芋をいっしょに炊き合わせないで、あとであわせるそうなのですが、せっかくおいしい出し汁が出ているのに、一緒に煮ない手はありません。それに、タラと一緒に煮るとなぜか芋が煮崩れしないのです。

  最後にしょうゆを入れて味を調えます。干タラのほうは、肉厚の棒ダラほどのうまみはありませんが、一緒に煮たえび芋はかなりおいしくなっています。棒ダラと煮たときと同じみたいです。

  ニシンは、あく抜きして柔らかくなったところで、四つほどに切り、水に浸けてやわらかくしておいた昆布で巻きます。かんぴょうで結んでから平たい鍋に並べ、ひたひたの水と少量の酢を加えてコトコト煮ます。昆布が十分柔らかくなったら、みりん、しょうゆを加え、味を見てから煮含めます。

  今年昆布巻きに使った昆布は、以前よそからいただいた大阪・土居の天然真昆布。最上等の昆布です。真昆布だけでは足らないので、日高昆布も使いました。水に戻した時点で違いは明瞭。真昆布は肉厚で固く、日高昆布は薄くてすぐに柔らかくなりました。

  タラの煮物も昆布巻も、薪ストーブの上でひたすら煮続けたので、煮汁がほとんどなくなり、ほわっとおいしく仕上がりました。上々です。とくに真昆布は、芯がしっかり残っているのに柔らかくて、噛むたびに昆布の味がきちんとします。

  こうした煮物は、初め面倒でも火にかけておきさえすればしだいに味がしみるので、私は大好き。染め材料を煮て、色が出てくるのをゆっくり待つ草木染めと共通するところがあるように思います。

  田つくりもうまくできました。いつもは、しょうゆと酒と砂糖を煮詰めて飴状にするのがうまくいかなくて、焦げ付いたり固すぎたりしましたが、今年は、砂糖を使わず、蜂蜜としょうゆ、酒にごま油を鍋に入れ、沸騰してきたら、オーブンでローストしておいたごまめを入れてかき混ぜただけ。適当に味見しながらつけた味ですが、おいしい。やめられません。

  こちらに来てまもないころのことです。大晦日の午後に知人の家を訪ねると、いきなり「もう、年取った?」と尋ねられました。何を聞かれているのか分からなくて聞き返してみて、「(このあたりで大晦日に行う)年取りの行事をすませたか?」という意味だとわかりました。年取りには元日よりも盛大なご馳走を作り、家族で祝うのだそうです。この行事は、大晦日のいつ行ってもいいことになっているので、昼過ぎにやってきた私に聞いたとのことでした。

  ご馳走の中身は家によってまちまちなのだそうですが、ぜんまいの煮物とか、野菜の煮なます(煮あえといいます)、ちくわと切り干し大根の煮物など、畑や山で採れたものがおもな材料になっているようです。いかにも昔の山里のつつましい暮らしを思い起こさせる素朴な料理ばかりです。

  こうした料理を今も大晦日に作っている家がどれだけあるかは知りませんが、大晦日のほうが元日よりご馳走を食べる、という家は多いようです。

  日本のあちこちの地域で、こういう風習はあるようです。(コチラ→)「元々、おせち料理は年迎えの膳料理であり、大晦日の夜に食べられていたもので、現在北海道で大晦日におせち料理が食べられているのはその名残であることが推測できる」(同サイト)このサイトでは北海道だけでなく、本州のあちこちの地域でも同様の習慣が残っていると紹介しています。

  やはり来たばかりのころの話ですが、年末に作った棒ダラやニシンの昆布巻きを友人知人に配ったことがあります。おいしいといってくれた人もいるのですが、何人かからは、「おじいさんおばあさんが、こういうものを食べないし、自分もあまり好きではない」といわれました。小さいときから食べていないので、塩乾もの独特のえぐみや臭みが苦手なのだそうです。

  京都同様、海から遠く離れている土地であっても、稲武のような寒村では、塩鯖や干魚すら、ほとんど手に入ることのない遠い土地の産物に過ぎなかったようです。年取り料理の中に入っているというちくわや糸きり昆布は、彼らにとってめったに口に入らない貴重な海の恵みだったんだな、と改めて思いました。 

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オイルサーディン

2011-01-01 17:09:04 | 手作りのたべもの
  近頃あまり見かけない、小ぶりのマイワシが安い値段で売られていたので、オイルサーディンを作りました。

缶詰のオイルサーディンをよく買っていたのですが、こちらに来てからそのあたりのスーパーでは見かけないので、手作りできたらいいな、と思っていました。一度、香草を入れた湯で煮てからオイル漬けしてみたのですが、まったく異なるものができました。油煮すればいいと知ってから何度も試みましたが、いつもイマイチの味でした。妙に油くさくなるのも欠点でした。

  今回はネットで調べてからはじめました。

  まず頭を落とし、はらわたもきれいに洗い流します。10%弱の塩水に浸けて数時間置きます。私は真夜中に仕事を始めたので、一晩浸けました。塩気が強いかもしれないのですが、その分日持ちがよくなるみたいです。

  よく水気を取った後、いわしを平たい鍋に並べます。そこに、ローリエ、赤唐辛子、ニンニク、ローズマリー、タイム、ディルシードなど、合いそうな香草を載せます。そして油を注ぎます。油は、ひたすらオリーブオイルだけ入れるのがいいと思い込んでいましたが、オリーブオイルが多いほど、香りがいいけれど味が重くなるのだとか。そういえば、綿実油の入ったオイルサーディンにもお目にかかったことがあります。で、私は米油とオリーブ油をほぼ半々ずつ、いわしが隠れるくらいの量、注ぎました。

  その次のポイントが煮方。とにかく最初から弱火なのです。気泡が出てきたら、要注意。ちょっとでも大きな気泡が出てきたら火が強すぎる証拠なのだそうです。火を最小にしても大きな泡が出てきます。三つあるコンロをあっち使ったりこっち使ったりしながら、弱火を保てるよう工夫しました。

   煮ること1時間。できました。塩辛さはのこるけれど味はいいい。油くささはありません。煮え立たせなかったのもよいのかもしれません。ただし、ずいぶん気をつけて扱ったのに、皮は破れました。熱湯消毒した瓶に入れたら、だしをとった後の煮干みたいに見えました。

  みかけはよくないけれど、今までで一番のできばえです。骨までやわらかく煮えています。前回は、シャトルシェフを使いました。そのせいか、身はちょうどやわらかくなっていましたが、骨が少し固いままでした。シャトルシェフのいいところは煮すぎないですむこと。でも、骨まで食べたいときは、何度か火にかけて調理しなおしたほうがよさそうです。

  今回は、見栄え以外ほとんど難点がなく、満足しています。残りの油は、パンにつけたり、パスタのソースにしたりして使えるそうです。それも楽しみ。
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