アンティマキのいいかげん田舎暮らし

アンティマキは、愛知県北東部の山里にある、草木染めと焼き菓子の工房です。スローライフの忙しい日々を綴ります。

野口さんの種

2010-05-25 15:00:13 | 林と畑と庭づくり
  野口勲さんの「地種野菜のタネ」(コチラ→)を手に入れました。

 地種野菜とは昔からその土地にあった野菜として、全国各地に根付いていた野菜のこと。固定種とも言うそうです。

 昭和30年代までは全国各地にあったこの種は、大手種苗メーカーのF1種の種が市場に流通するにつれてしだいに片隅に追いやられ、いまでは絶滅の危機にあるものも多いとのことです。

 野口勲さんは埼玉県飯能市にある三代続いた種苗店・野口種苗研究所の所長です。固定種が消滅するかもしれないという危機感を抱き、全国各地の固定種の種の取り扱いと頒布を続けています。

 F1種が市場を席巻した理由は、「大きさや形の均一な野菜がいっぺんにたくさん収穫できるから」(「通販生活」2010年夏号)。でも、F1種とは、一代雑種のこと。親の違う野菜を掛け合わせてできたものなので、次の世代は同じ野菜にはなりません。

 そういえば以前、野菜を作っている人が、「いくつかの種類の菜っ葉の種を採ってまいてみたが、どれもみんな小松菜になってしまった」と言っていたという話を聞いたことがあります。野菜ではありませんが、何色かのパンジーのこぼれ種が、みんな紫色のビオラとして生まれ変わったのを見た経験が、私にもあります。

  F1種に比べて固定種は、「収穫時期が一定せず形も不ぞろい」(同上)なので流通にむかない反面、「味は濃厚」(同上)で「生命力が強いから肥料が少なくてすむとおっしゃる方も大勢」(同上)いるそうです。

 固定種なので、上手にできた野菜を選んで採種すれば、その種は自分の畑にあった野菜になっていくはずです。
 
 送られた種は全部で8種。袋のロゴと絵がレトロです。種の袋にはそれぞれ、播種期、収穫期などどの種の袋にも書いてあることのほかに、種の来歴、採種法、種子の寿命が書いてあります。面白いのは来歴。血統書つきの動物のように素性がはっきりしているのが頼もしい。

 8種の野菜の名前と、袋に書かれているそれぞれの来歴を簡単に記します。

 江戸時代から今に至るまで栽培されている「下仁田葱」、江戸時代の新宿で名物だったという鳴子瓜に似た「網干メロン」、1891年にアメリカから導入された「ポンデローザトマト」、明治時代に中国の山東省から日本に渡来した「盛岡山東菜」、大正時代に中国山東省から朝鮮に入り、日本人に知られるようになった「四葉(すうよう)胡瓜」、小松菜発祥の地・東京の江戸川区の後関種苗店が、昭和38年に命名した「ごせき晩生小松菜」、江戸中期に高級料亭で使われていたが今は幻の大根といわれている「亀戸大根」、野口種苗店が昭和26年に育成した「みやま小かぶ」、以上です。

 どれも「たいへん甘い」「風味がよい」「おいしい」などとかかれていて、まだ蒔いてもいないし、蒔いたあともたいした育て方はできそうにないのですが、はたしてどんな味がするのか、ついつい期待でわくわくしてしまいます。

 貴重な種なので、蒔きすぎに注意して、育てられそうな数だけちょっとずつ蒔いてみようと思います。
コメント
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