(1)独裁国家にも悩みがあるのだろう。いや、独裁国家だからこそ悩みがあるというべきなのだろう。独裁国家指導者は国民に弱みをみせられない。弱みをみせれば国内は不安定化し、政権、指導者は比例して弱体化する。
(2)中国政府は福島第一原発事故の汚染処理水(IAEA国際基準以下に濃度を薄めた)の海洋放出開始に強く抗議して、日本からの生鮮魚の全面輸入禁止措置に出た。日本政府はその前に中国の国内データ集から中国が福島第一原発事故の汚染処理水より高い濃度の処理水を海洋放出していたとの情報を確認しており、どういう事情であれそれよりも濃度の低いIAEA国際基準以下の汚染処理水を海洋放出する日本の方針決定が中国側から批判、抗議される事情、状況にはない。
(3)日本政府がこういう情報を中国側に伝えて日本政府の汚染処理水の安全性を説明しているのかわからないが、中国側は日本からの生鮮魚全面禁輸の対抗措置を表明して抗議している。また、今月末に予定していた公明党山口代表の訪中について「適切なタイミングでない」として中国側から延期の申し入れがあったことをあきらかにした。
(4)公表されている報道からすれば中国側の身勝手な行動と受け取られるが、中国国内ではネット上にSNSで日本への批判的な書き込みが急増(報道)して中国政府としても日本への全面的な抗議、対抗手段に出ているものとみられる。
習主席、中国政府執行部が日本よりも濃度の高い処理水を海洋放出している(中国国内データ集公表)ことを知らないわけもなく、それを無視する意味でも国内向けに今回の福島第一原発事故の汚染処理水の海洋放出に焦点を当てて抗議の姿勢を強めているとも考えられる。
(5)中国も漁船軍団が尖閣領域にまで大量に操業をくり返して漁場獲得を拡大しており、海洋国としての中国の立場、利益を守る意図、意味合いもあると考えられる。
岸田首相も福島第一原発事故の汚染処理水の海洋放出決定にあたっては、安全性確保、風評被害対策に万全を東電に要請しているが、政府としても日本に強く批判、抗議する中国側に対してどう説明し理解を求めているのか、中国側の日本からの生鮮魚全面禁輸が想定内だったのか(担当大臣は驚いたと報道されている)、対策は考えられていたのか、政府が汚染処理水の海洋放出を関係者の理解なしには処分しないと約束した中での今回の見切り発車では中国政府の理不尽な強硬姿勢に強く抗議するだけで解決の糸口もみえない。
(6)露プーチン大統領は民兵会社創設者のプリゴジン氏の反乱には弱みをみせてしまったが、独裁者プーチン大統領としてはそれを取り戻すことは必要だった。プリゴジン氏ら民兵会社幹部が乗った小型ジェット機が墜落して全員の死亡が確認された。独裁国家にも悩みはある。