(1)岸田首相は20日、福島第一原発を視察で訪れて、東電に汚染処理水の海洋放出に安全性、風評被害に会社を挙げて「万全を尽くす」(報道)よう要請した。21日には首相官邸で全漁連会長らと面会して長期的支援策を取り続ける意欲(同)を示した。
(2)しかし同会長は「漁業者、国民の理解を得られないアルプス処理水の海洋放出に反対であるということはいささかも変わらない」(報道)と伝えたといわれる。政府はかねてから「(処理水について)関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」と約束しており、同会長の発言からは理解を得られているとは言い難い。
(3)岸田首相、政府としてはIAEAが包括的報告書で福島第一原発の汚染処理水が国際基準以下の濃度であることを認めたことで、一定の理解が得られたと判断したのだろうが対岸中国が強く反対しており、7月の中国の日本からの生鮮魚輸入が前月比53.2%減となったデータを公表した。
(4)日本の漁業関係者も風評被害の影響を懸念しており、日本政府の対策ができていないことを示すものだ。中国は自国のデータ集で福島第一原発の放出濃度よりも高い濃度の処理水を放出していることがわかっており、日本政府としてはこれらを踏まえた福島第一原発汚染処理水の安全性濃度、風評被害対策について隣国中国にも積極的に説明、理解を求める努力、工夫をしていないともいえる。
(5)こうした中で岸田首相、政府から協力を求められても全漁連会長が汚染処理水の海洋放出に反対するものも当然といえる発言だった。漁業者としては海で魚介類を採り、消費者に提供して利益を得ることで生活の糧(かて)にすることが仕事であり、生きがいだろう。
汚染処理水の海洋放出で風評被害を招いて、魚介類を採っても消費者が買わずにあるいは売れずに仕事ができない、生活できないことは苦痛であり、不満であり、政府、原発事業者の責任を問いたいところだろう。
(6)こうした背景に岸田首相、政府が将来長期にわたって支援対策を取り続けるといわれても、漁業者にとっては海での「仕事」で生活出来ることが本質であり、ただ国からの経済支援で生活が出来ることとは話は違う。
(7)岸田首相、政府としてはやるべきことはやっているつもりなのだろうが、福島第一原発がどうして大地震災害に弱く(専門家の過去歴史からの証言を受け入れなかった)、被害を受けたのか、原発制度設計が不十分の中で自然災害国日本で原発安全神話のもとに54基(当初事業)の原発事業を推進した政府、原発事業者の責任問題がある。
(8)その政府、岸田首相が再び汚染処理水の海洋放出で「万全を尽くす」よう東電に求めても、原発安全神話とどう違うのか、「語り」だけでは理解されるのむずかしく、もはや信頼性に欠ける。中国を説得しなければならない。