コレクションが増えてくると、「あの資料はどこにあったっけかな」とわからなくることがあります。そして心当たりを探すのですが、見つけられないことも珍しくありません。
今回はそのうちの一つで、最近やっと探し当てた一件を、忘れないためのメモとして残しておきたいと思います。
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ワタシは、2017年2月に掲載した記事「ワタクシ的『ビデオポーカー』の変遷(3)米国内の動き
で、「sigma」とIGTの前身である「SIRCOMA」両社のロゴが象られているビデオスロット筐体の画像を掲載しました。
「sigma」と「SIRCOMA」のロゴが象られたビデオスロット筐体のフライヤー(上)と、両社のロゴの部分(下)。
今調べると、この筐体は1980年に発売されていたようで、業界紙「ゲームマシン」1980年6月15日号には、「米国サーコマ社提携 シグマTVメダル機」として、6月30日に発売するとするsigmaの広告が掲載されています。
「ゲームマシン」1980年6月15日号に掲載されたsigma社の広告(部分)。
拙ブログでは、過去にsigmaとIGT(SIRCOMA)が非常に親密だった時期があったことに何度か言及しています。しかし、この筐体ができたいきさつについて詳しいことはわかっていませんでした。
しかし、実は2000年前後にラスベガスの「Gambler's General Store」(関連記事:新ラスベガス半生中継2023年G2Eショウ(2) DAY 2・その1:今日もゲーム三昧、のはずが)で購入した、かつて米国で刊行されていたスロットマシンやアンティークゲーム機の雑誌「Loose Change」誌で、記者がIGTの創業者である「サイ・レッド」氏に、まさにこの筐体ができたいきさつを訪ねている記事があったのを見つけていたはずでした。
しかしこの雑誌を購入した当時のワタシは現在よりもさらに英語能力に乏しく、その内容をほとんど理解できないまま行方不明になってしまい、今さら確認もできず悶々としていたのですが、このたびようやくその「Loose Change」誌を発見したので、またわからなくなってしまう前にメモを残しておきたいと思います。
Loose Change誌1996年9月号の表紙。
sigmaとSIRCOMA両社のロゴが入った筐体に関する記事の部分。1996年9月号の24ページ目。
記事の原文はこのようになっています。
Of all the photographs of slot machines we have in our files, this one is the most intriguing. On the Roll-A-Top style lower front casting it says "Sircoma" but at the top is says "Fortune Slot" and "Sigma". The machine is a five-line video slot from the 1978-1979 period. I asked Sircoma founder, "Si" Redd about it once over cocktails. He puffed up, waved both arms in the air, and blurted out, "Now, boy... you just forget about that damned thing. It's nothing... it's just nothing at all. Here, let me freshen up that drink for you." Starting with fresh drinks, we went on to different subjects- end of story.
これを超訳すると、こんな感じであろうかと思います。
我々の手元にあるスロットマシンの写真のうち、これが最も興味をそそる。Roll-A-Topを模した筐体の前面下部には「Sircoma」とあるが、上部には「Sigma」とある。この機械は1978年から79年の「ファイブライン」ビデオスロットである。私はSircomaの創設者である「サイ・レッド」とカクテルを飲んでいる時にこの件について聞いたことがある。すると彼は一つ大きく息を吸って両手を振り上げて口走った。「さあお若いの、そんなつまらんものは気にしなさんな。別に何でもないんだよ。そう、全くどうでもいいことさ。そんなことより、もう一杯飲み物をどうだい」。そして新たに注がれた酒とともに他の様々な話題に移って行った。話は以上です。
あくまでもこのいい加減な超訳が正しければですが、サイ・レッドはまるで疑問に答えていません。ただ、この話題を避けたがっているように見えることから、どうもこの件はサイ・レッドにとってはなるべく触れたくない黒歴史になっているように感じます。
根拠はありませんが、sigmaが日本国内での販売を前提としていたこの筐体に権威付けのために無断でSIRCOMAの名を筐体にフィーチャーしてしまい、両社の間でひと悶着あったのではないかと想像してみます。
これがこの話にどのように関係するのかはわかりませんが、「SIRCOMA」のロゴは着脱が可能なパーツで、鋳型に刻まれているものではなかったようです。ワタシは、そのパーツがはがされている状態の筐体を見たことがあります。
「SIRCOMA」の名が入っていない個体と問題の部分の拡大図。緑色なのは後から塗り直されているため。
唯一真相を知る当事者は何も語らぬまま鬼籍に入り、結局のところこの筐体が作られた経緯は永遠に解けぬ謎として残ったことがわかることも、収穫の一つと言うべきでしょう。それを示す証拠を最後に今一度明記しておきます。それは、Loose Change Magazine 1996年9月号です。
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