セガの前身となった企業の一つ、「ローゼン・エンタープライゼス」が1961年ころに作成したと推察されるカタログシリーズ4回目は、「ベンディングマシン」のページです。
ベンディングマシンとは、つまり自動販売機です。日本では、明治時代に郵便切手の自販機が登場しています。そこで販売される切手は、機械の中ではトイレットペーパーのようにロール状に収納されているため、側面に目打ち(切り取り線)がありません。このような切手は、収集家の間では特に「コイル切手」と呼ばれています。
後に日本のアミューズメント業界をリードする日本娯楽機(後のニチゴ)は、大正から戦前の昭和にかけて自販機を精力的に製造しています。
日本娯楽機が戦前の1936年ころに頒布したカタログに掲載されている自動販売機のページ2つ。香水や飲料水の販売機や、菓子販売機を謳うゲーム機が見える。
しかし、日本が「自販機大国」などと呼ばれるようになるのは、これら先行する国産自販機の躍進によるものではなく、1960年代の早い時期にコカ・コーラの海外製自販機が全国に設置されてからのようです。1970年3月15日付の朝日新聞には「1967年から3年間、自販機の伸びは30%以上」との記事があり、この時期に既に社会的な注目を浴びる勢いで増加していたことが窺えます。
ローゼン・エンタープライゼスは、自動写真撮影機の成功から、日本における自販機の可能性を予期していたであろうことは想像できます。このカタログにも10ページに渡って各種自販機が紹介されています。
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★画像は例によって縦に二分割しています。
自販機その1。ホットサンドイッチの自販機。機械内の冷蔵庫に保存されているサンドイッチを電子レンジで加熱しているらしい。文字が潰れていて判読が難しいが、1個25セントから35セントまで、5種類を販売している。
自販機その2。コーヒーとココアの自販機。
コーヒーは「先進国」米国では当たり前の習慣でしょうが、1961年ころの日本にどれだけ馴染んでいたかはわかりません。ウィキペディアによれば「普及には1960年に森永製菓が国内生産を開始して以降、国産化が進展するまで時間を要した」とのことなので、認知はされていたようです。
自販機その3。これもコーヒーとココアの自販機。
自販機その4。牛乳の販売機。能書きには「Rudd-Melikianによる大容量牛乳ディスペンサーは、工場、オフィス、それに学校で、完全な殺菌とトラブルフリーの問題への答えです。従業員や学童は、昼食時やいつもの3時のおやつ時に、R-M 社が提供するさまざまなフレーバーの発泡スチロールカップに入った新鮮な冷たいミルクを好みます」とある。
自販機その5。130の品物が入るという自販機。選んだ商品が運ばれてくるシステムを「The magic touch」と呼んでいるが、何をどうするとどうなるのかはよくわからない。
自販機その6。コカ・コーラの自販機。冒頭で述べた「1960年代の早い時期全国に設置されたにコカ・コーラの海外製自販機」にはこれも含まれていたのだろうか。
自販機その7。コーヒーの自販機。スイッチの切り替えで、豆から淹れるコーヒーかインスタントコーヒーか、冷蔵されたフレッシュクリームか粉クリームかが切り替えられるらしい。普通に考えれば豆から淹れるコーヒーにフレッシュクリームがいいに決まっているが、選択によって値段が変わるのだろうか。
自販機その8。菓子やたばこの自販機。キャプションの「CAUDY」は意味不明。「CANDY」の事だろうか。
自販機その9。10セントの商品を販売する「U-SELECT-IT」は、10セント硬貨の他に5セント硬貨が使用可能であることが売りらしい。
自販機その10。これも「U-SELECT-IT」。188個の商品を収納可能な自販機で、客は店に行くのと同等の選択肢を提供できるとある。
次回「ジュークボックス他」(たぶん最終回)につづく。