オールドゲーマーの、アーケードゲームとその周辺の記憶

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「三協音機」って知ってる?(番外):「天龍工業」って知ってる?

2024年03月17日 17時59分49秒 | メーカー・関連企業

前々回記事で「まるで見当がつかない」と言っていた機種の一つが、「天龍工業」の「クレミー」というクレーンゲーム機であることが、「しいたけと猫が好き」のオーサー、accs2014さんのご指摘で判明しました。どうもありがとうございます。

前々回記事で「まるで見当が付かない」と言っていた3機種のうち、①が天龍工業の「クレミ―」であることが判明。

「クレミ―」のさらに鮮明な画像は、「しいたけと猫が好き」のこちらの記事でも見ることができます。

accs2014さんの「しいたけと猫が好き」より拝借した、水上温泉「ホテル松泉閣」のパンフレットの一部。右端に「クレミ―」が写っている。

「クレミー」の名は、かつてある方から頂いたフライヤー画像の中で見ていた覚えはありましたが、今確認するとその商品名は「ロボットクレミー CR-7」と言って、人型のロボットをモチーフとしており、三協音機のフライヤーのものとはずいぶん形状が違いました。

「ロボットクレミー CR-7」のフライヤーの表裏。

「ロボットクレミー CR-7」のフライヤーの頒布時期は不明ですが、この機械は遊戯機械年鑑69年版にも掲載されており、おそらくは「クレミー」のバリエーションと思われます。「CR-7」とは、もしかしたら「CRaneマシンの7番目」の意味だったのかもしれません。

メーカーである「天龍工業」の名はAM産業の分野ではあまり聞いた覚えがありませんが、一体どういう会社なのでしょうか。遊戯機械年鑑を調べると、72年版巻末の「索引」には「ロボットクレミー CR-7」のメーカーとして天龍工業の名前がみつかります(この年の版は、本文中で機械名と簡単な説明のみ記載し、製造元は巻末の「索引」に記載している)が、78年版以前のどの版の業界団体リストにもその名前は見られません

大手の下請けで普段は表に名前が出て来ない比較的小規模な町工場が奮起して自社ブランドのゲーム機を作った可能性も思い付きましたが、「ロボットクレミー CR-7」のフライヤーには3つの工場と国内7カ所に営業所がある旨が記されており、それなりの規模を持つ会社のようです。

ダメ元でネット上を検索して筆頭に挙がってきた「天龍工業株式会社」は、「シート、樹脂成形品、輸送機部品」を製造する会社とのことで、そのウェブサイトはたいへん立派なものでした。まさかここが「クレミー」のメーカーなのかと訝しく思いながら会社概要を見ると、設立は2009年とあります。なんだやはり同名他社かと思いながらもページをスクロールダウンしていくと、「天龍グループ」なる項目が出てきて、その先頭にある「天龍ホールディングス株式会社」の所在地はフライヤーの記載と同じ「岐阜県各務原市蘇原町」でした。

社名と所在地まで一致しておいて無関係はなかろうと確信してさらにウェブサイトを掘って行ったところ、1950年代から年表形式でグループ会社の製品を紹介する「天龍製品の歴史」とのページに辿りつき、その1960年代に「クレミー」がありました(ただし、「ロボットクレミー CR-7」への言及はない)。

天龍ホールディングスのウェブサイトより、「天龍製品の歴史」の「キャンディ娯楽販売機 クレミー」が登場する部分。

この年表にはそればかりか、1970年代には「ゲームマシン」、1980年代には「テレビゲーム機」がそれぞれ文字のみ登場し、1990年代には「ゲーム機『マイパズル』」が小さいながらも画像と共に紹介されています。

上から順に1970年代、1980年代、1990年代の、AMに関連する部分。

さらに、別ページである「70年の歩み」には、AM産業に言及する箇所がありました。

顧客ニーズを先取りする製品開発・販路開拓を進め、(中略)さらにヘリコプター、テーマパークのダークライド(注・決まった軌道を進む台車に乗って仕掛けのある部屋を巡る遊園施設)、各種ゲームマシンなどの生産にも奮励しました
「70年の歩み」 1976-1985年「一流の追求」より抜粋)

なるほど。コインマシンばかり追いかけていると忘れがちですが、遊園施設も同じAM業界(関連記事:AM産業と業界誌の謎(2))です。「70年の歩み」にはゲームマシンやビデオゲームの詳細までは述べられていませんでしたが、座席や樹脂成形品を本業とする天龍工業には「ダークライド」というAM業界との接点があったと知って、かなり納得できた気がします。

異業種がAM業界に新規参入するケースと言えば、「ホープ自動車」(関連記事:「三共」についての備忘録(6) 三共に関するエピソードあれこれ(前半)や「スバル(正確にはスバルカスタマイズ工房)」などが思い出されます(たぶん他にもいろいろあるはずなのでご存じの方はご教示ください)。産業に勢いがあればこういうこともあるでしょうが、今のAM業界では考えにくいのは何とも寂しいことです。

このシリーズ・おわり

自分用メモ:
●スバルカスタマイズ工房
くっつけ名人(プライズ機)
 →アミューズメントジャーナル2005年3月号

つっ走り名人(ドライブシミュレーター)
 →ゲームマシン2005年3月15日号