拙ブログは2021年6月、「プログレッシブ・ジャックポットの進化の話」の中で、歌手の田端義夫さんがラスベガスで29万ドルの大当たりを引き当てたエピソードをご紹介して、「(当時のNHKの報道では)アメリカと日本の両方でかなりの額が税金に消えそう」と報じらている、としましたが、具体的にどのくらいのお金が田端さんの手元に残るのかは明言されておらず、下々としては気になるところでした。
先日、国会図書館でアサヒグラフのバックナンバーを眺めていたところ、偶然にもこの大当たりの記事を発見しました。
アサヒグラフ1979年9月14日号の、田畑義夫さんのジャックポットを報じる記事。モノクロだが見開き2ページで紹介されている。
この記事によると、田畑さんの奥方はメリーさん、ご息女はジャニスさんとおっしゃるとのことで、田畑さんは当時はまだ一般的ではなかった国際結婚をされていることを知りました(ただし、ウィキペディアによれば田端さんは3回離婚、4回結婚しているとのことで、これが何回目の結婚かは不明)。
それはさておき、問題は税金でいくら引かれるか、です。記事本文を読むと、「日本の国税庁によると、一回分の賭け金と50万円を引いた額の二分の一が税金となる」とあり、さらに「既に現地で三十パーセントほど差し引かれたということも聞いており、もちろんそれを引いた額に課税させていただく」と続いています。
さて、田端さんが当てた大当たりは29万ドルです。アサヒグラフによる邦貨換算では「約6400万円」とされているので、当時の為替レートは1ドル≒220.7円です。
ネバダ州では、海外からの旅行者がマシンゲームで1200ドル以上の当たりを引くと30%の税金が徴収されます。田端さんが大当たりを引いた機械はプログレッシブなので1万ドル未満の端数もあったはずですが、ここはざっと29万ドルで計算することにすると、ネバダ州での税額は8万7千ドルとなり、残るは20万3千ドル、邦貨換算で4480万2100円になります。
日本国内での税金の計算は、前述のとおり一回分の賭け金と50万円を引いた額の二分の一ということでした。1回の賭け金3ドルは662.1円ですから、4480万2100円から50万662円を引いた残りは4430万1438円で、この半分の2215万719円が日本国内で収める税金額となり、つまるところ田端さんの手元に残るお金は2265万1381円で、元の半分以下になってしまいました。
この大当たりが出た1979年当時、日本では「ジャンボ宝くじ」と称する大型宝くじが始まり、1等前後賞を合わせた賞金額は3000万円でしたから、それよりも低い金額となってしまいました(スロットマシンの確率がわからないので厳密な期待値の計算ができないためどちらが有利かは判断しません)。
現在の税制はこの当時とは違って、税金を払うのは日本国に対してだけで良くなっているはずなのですが、カジノでの税務処理は必ずしも統一されておらず、1200ドルを超えるジャックポットを出すたびに税金を取られている女房は少し憤慨しています。
関連する情報として、昨年、課税点となる1200ドルは何十年も前の基準であって現在なら5000ドルに相当するはずであるから法律を変えるべきだとの議論が行われているとの報道があったのですが、残念ながらまだ法改正があったとの報道は見ていません。次回の巡礼までに改正されていれば良いのですが(←大当たりが出せるつもりでいる目出度い人)。
24.01.22追記:SNSで、「現在の税額計算は、 『一回分の賭け金と50万円を引いた額の二分の一が税金』ではなく、 『一回分の賭け金と50万円を引いた額の二分の一に他の所得金額を加えて、その額に応じた税率で課税される』ではないか」とのご指摘をいただきました。ワタシは税金には詳しくありませんが、とりあえず本文の計算は、他の所得を考慮しない、あくまでも29万ドルだけを考えたものとの前提での計算とご承知おきいただければ幸いです。
コメントをくださった方、どうもありがとうございました。またお気づきのことがありましたらご指摘ください。