オールドゲーマーの、アーケードゲームとその周辺の記憶

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またまたヘンなゲーム機「ジャックポット・フリッパー」(SEGA, 1976-7?)

2018年06月03日 18時31分26秒 | スロットマシン/メダルゲーム
4月15日にアップした記事「ヘンなゲーム機「GRAND PRIX FOUR」(SEGA, 1977-8?)の記憶(2)」で、kt2さんという方から、「ジャックポットフリッパーについて調べているが情報はないだろうか」とのコメントをいただきました。

ワタシは「ジャックポットフリッパー」を少なくとも一度は遊んでいますが、その記憶は極めてあやふやで、1976年から1978年の間で新宿のsigma系列のロケではなかったかと推測するのが精いっぱいです。
ただ一つはっきり覚えているのは、それはウィリアムズ社の「SUPER STAR」(筐体やフライヤーの画像はこちらから見られます)というフリッパー・ピンボールを改造したものであったということです。

ゲームのルールの記憶も、「とにかく1球のみのプレイで高得点を出せばメダルが出る」ということだけしか覚えていなかったのですが、その後kt2さんからいくらかの情報をいただいたおかげで、うっすらとですがいくつかの詳細事項を思い出してきました。今回はワタシのそのおぼろげな記憶を甦らせて、ジャックポットフリッパーで一本記事を仕立ててみようと思います。

「ジャックポットフリッパー」とは、セガがおそらく1976年か1977年に発売を始めたメダルゲーム機で、通常は3球、または5球で1ゲームとする(設定で変更できるが、多くの場合3球で運営されていた)ピンボールゲームを、ただの1球でどれだけ高いスコアを上げられるかでメダルの得喪を決定するというゲームでした。そしてそのゲーム機は、セガがゼロから開発したものではなく、既存のフリッパー・ピンボール機をセガがメダルゲーム用に改造したものでした。ワタシの手持ちの資料では、1977年の価格表に8機種が見られます。


1977年のセガ価格表より、ジャックポットフリッパー部分を拡大部分。

kt2さんからは、これらの元ネタとなった機種の情報をいただいていますので、その対応表を作るついでに、元ネタの売り出された直後と1977時点のそれぞれの販売価格も調べてみました。


ジャックポットフリッパーと元ネタの対応と、オリジナル機種の販売価格の変化の一覧表。米国Williams社製品をオリジナルとするものが3機種、自社製品を元ネタとするものが5機種、掲載されている。販売価格は、旧型機になるとずいぶん安くなることが見て取れる。

しかしこの価格表には、ワタシの記憶にある、「SUPER STAR(Williams, 1972)」を元ネタとしたジャックポットフリッパー機の名前は見られません。これはワタシにとって一つの謎となっています。

ジャックポットフリッパーのバックグラスにはペイアウトテーブルが描かれています。基本的にはメダル1枚でも遊べますが、さらにメダルを投入することで内部抽選が行われ、これに当選するとメダルの払い出しを受けられるスコアが低くなるという、ビンゴ・ピンボールに通じるルールがあり、ペイアウトテーブルもそれに従って3種類がありました。


ジャックポットフリッパーのバックグラス部分。ペイアウトテーブルは3種類(赤枠部分)があり、メダルを追加投入すると、内部抽選により更に低いスコアでメダルが獲得できるテーブルに移行する(ことがある)。

ゲームの説明では、平均4枚程度のベットで最も有利なテーブル3が適用されるようになるようなことが書かれていましたが、ワタシにとってはこれは真っ赤なウソで、メダルをつぎ込んでもなかなかテーブルが進まなかった印象しか残っていません。これはもちろん、ワタシがツイていなかったか、あるいは回収期であった可能性は排除できませんが、それにしても、メダル1枚を惜しみながらベットするようなワタシにとって、これは非常に不愉快なことでした。

それでも、スキル次第でメダルが増えるものと信じてある程度粘ったのですが、このゲームで良い思いをした記憶は殆どありません。プライズとして払い出されるメダルの枚数は4枚、16枚、64枚、256枚の4段階があり、当然ながら多くのメダルを獲得するには高得点を挙げなければならず、そしてそれは最も有利なテーブルであっても相当に難しい条件が設定されていました。

ところで、フリッパー・ピンボール機の価格は旧型機になると大幅に安くなると前述しましたが、これはジャックポットフリッパーも同様で、1977年の価格表では36万円とされていたものが、kt2さんからいただいた翌1978年の価格表ではなんと半額の18万円となっています。

古いゲーム機の価格が安くなる理由として、開発費は既に償却されており、以降は部材費と組立工賃だけで生産できるというケースもありますが、それはロングセラーでこその話で、多くの場合は在庫一掃のバーゲンです。「ジャックポットフリッパー」も、その後広く普及することもなく比較的簡単に姿を消したところから、どちらかと言えば投げ売りの意味で安くなっていたのではないかと想像されます。そもそも論として、スキルとペイアウトは相性が悪いという原則があるものですが、「GRAND PRIX FOUR」とほぼ同じ時期に作られた「ジャックポットフリッパー」もまた、まだそのことに気づいていない時代の産物だったと言えるのかもしれません。