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大田区議会議員 奈須りえ  フェアな民主主義を大田区から!

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大田区の放置自転車対策の課題/不公平で形骸化した附置義務

2009年08月25日 | ├.まちづくり・都市計画

 駅前に放置されている自転車は、まちを歩く人のバリアになるとともに、まちの景観を阻害する迷惑な存在です。

 超高齢化社会を迎え、バリアフリーにも大きく関る放置自転車問題は、以前にも増して解決しなければならない大きな課題になっています。
 
 一方で、自転車は環境にやさしい=CO2を排出しない移動手段として評価されており、自転車利用を推進しながら、放置自転車問題をどのように解決していくかを考えるとき、自転車駐輪場の整備は不可欠になります。

■条例による駐輪場設置義務■ 

大田区は条例「大田区自転車等の放置防止及び自転車等駐車場整備に関する条例」で、一定規模以上、あるいは、スーパー、飲食店、パチンコ店、金融機関・・・など特定用途の建物について、その規模に応じて条例で駐輪場の設置を義務付け(附置義務)ています。
 
 自転車を使ってこれらの施設を利用する方たちへの駐輪場整備をお願いすることで、放置自転車を防止するが目的です。

 たとえば、パチンコ店なら、店舗面積が300㎡を超えるものは、15㎡ごとに駐輪場1台。スーパーマーケットその他の小売店及び飲食店なら、店舗面積が400㎡を超えるものは、店舗面積20㎡ごとに1台といった具合に、その設置台数が定められています。

 これらの建物を新たに建築する場合、条例に定められた台数の駐輪場設置が確保されていなければ、建築確認がおりず、建築するとができません。

 大田区では、条例を設置した昭和63年から昨年度平成20年までの間に、この条例の設置義務により設置が義務付けられた駐輪台数は9,889台=約1万台にも及びます。

 条例がなければ、駐輪場も設置されず、自転車が放置されてしまったかも知れないことを考えると、この条例による、放置自転車への効果が大きいことがわかります。

 一方で、この条例には、いくつかの問題点があります。

■条例制定前の建物には効力が及ばない■

 条例は、昭和63年3月18日施行で、大田区は、新築に建物に対して義務を課しているため、それ以前に建築された建物は、対象になりません。
 施設の一部を駐輪場スペースとして割いていただき、大田区の放置自転車対策にご協力いただいている区民(事業者)がいる一方で、条例制定以前に確認を受けたということで、同程度の自転車利用来訪者がいることが推測されながら、駐輪場設置義務のない区民(事業者)が存在するのです。

 条例制定の前に建築した事業者と後に建築した区民(事業者)との負担の不公平感は否めません。

自治体によっては、増築・改築建物も対象にしています
 増・改築を対象にしていれば、最近行った蒲田駅の3つの駅ビルの大規模築に伴い一定程度の駐輪場整備が達成できたでしょう。
 

■建築後の建物への駐輪場設置のチェックや指導がおこなわれていない■ 

 一方で、大田区は、建築確認の際に条例通り駐輪場が図面に記されているかどうかのチェックを行いますが、確認をおろしてしまえば、それで終わりで、その後、条例通り駐輪場として使用されているかどうかのチェックは行っていません。

 大田区内には、ビルの最上階を駐輪場として届け出て確認をとりながら、建物が建った現在は、その階に上がることもできず駐輪場として使用されていないなど、結果として条例逃れをしているケースもありますが、区は、それに対してなんら対処もとっていません。

 これまでの附置義務により設置されてきた約1万台の駐輪場ですが、その全てが駐輪場として使用されていないかも知れないのです。

 これもまた、区民(事業者)に不公平感を与えるものです。

 区が積極的に、条例順守のための指導を行うことがまず必要ですが、大田区は、それを行うには、職員の増員が必要であると弁明しています。
 例えば江東区は、条例に、駐輪場設置を怠っている事業者に対し、区(自治体)が是正勧告したり、罰則や罰金を課すといった条項を設け、指導していますが、大田区に比べ、職員配置が厚いのでしょうか。


■鉄道事業者の放置自転車対策への協力の可能性■

 廃止になりましたが、豊島区の「放置自転車等対策推進税」が大きな話題になりました。
 確かに、鉄道駅を利用者が放置自転車の原因になっているケースも少なくなく、放置自転車対策への協力という意味では、理解できないものではありません。
 しかし、なぜ、鉄道事業者だけを対象にしているのかといった負担の公平の視点からも、更なる研究が必要だった条例と言えるのかもしれません。

 一方で、小売店・銀行・パチンコ店・スポーツクラブ・塾などを対象としているにもかかわらず、鉄道事業者はその対象になっていません。

 京都市では、附置義務強化への市民意見公募(パブリックコメント)を行い、それをもとに、自転車駐車場の附置義務の対象として病院等・学習施設・博物館等・スポーツ施設・郵便局・映画館・カラオケボックス・レンタルビデオ店及び官公署へと広げています。  
 確かに、大田区の附置義務対象にも、病院等・カラオケボックス・レンタルビデオ店及び官公署などは含まれていませんし、郵便局・映画館・カラオケボックス・レンタルビデオ店が対象になるのか気になるところです。

 京都市でも、駅にも駐輪場設置を望む市民や附置義務対象とすべきといった市民の声に答えるかたちで、鉄道駅は,駐輪場の付置義務の対象とはしていないが、「自転車利用の促進及び自転車等の駐車対策の総合的推進に関する法律」を根拠に、積極的な協力義務を示し、駐輪場整備促進を働きかけると回答しています。



■大田区自転車等駐車対策協議会に期待すること■


 昨年の条例改正により、「大田区自転車等駐車対策協議会」が発足し、鉄道事業者も加わって、放置自転車対策についての協議を始めました。
 これまでこうした会は開催されてきましたが、結果として、放置自転車解決に至っていないため、同様の結果に終わるのではないかといった声も聞かれます。

 しかし、駐輪場建設以外にも大田区が行える、行うべき課題は少なくありません。単なる大型機械式駐輪場設置に終わらない、まちに暮らす区民に必要な機能(この場合は駐輪場)をどのようにまちの変化や発展とともに盛り込んでいくのかといった「まちづくり」の視点で取り組んでいく必要があります。


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