旅限無(りょげむ)

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チベット問題の3月 其の伍

2009-03-30 08:52:13 | チベットもの
新華社通信によると、中国青海省ゴロクチベット族自治州で21日、僧侶約100人を含む数百人の暴徒が地元警察署を襲い、地元政府の職員数人が軽傷を負った。警察当局は22日に暴徒6人を逮捕。89人が自首した。チベット亡命政府によると、チベット族約4000人が「独立」を叫んで警察と衝突したという。……同通信によると、僧侶が地元警察の取り調べ中に行方不明になったとのうわさが引き金になったという。一方チベット亡命政府によると、僧侶は動乱50周年の今月10日に寺院屋上の中国国旗を降ろし、亡命政府の旗を掲げた。地元警察に拘束されたものの逃走し、黄河に飛び込んで自殺を図ったという。
3月22日 毎日新聞

■毎日新聞の記事では、行方不明になったのを「うわさ」だったとしています。流言飛語によって「暴徒」が警察署を襲った?あんなに小さな町で、真偽不明の噂が広まって暴徒が押し寄せるとは無茶な話です。大きな都市ならば噂に尾鰭が付いて話がどんどん膨らんで行くこともあるでしょうが、ラジャ寺周辺の環境では考えられません。

■こうして報道記事を比較してみますと、ラジャ寺の屋上に掲げられていた五星紅旗を引き摺り下ろした若い僧侶が、「チベット独立運動」をしたという容疑で逮捕された上に、寺は監督不行き届きの連帯責任で封鎖の制裁を受け、10日間の取調べの後、警察の隙を見て僧侶が黄河に跳び込んだ。その情報が町と対岸のラジャ寺に伝わって大群衆が抗議に押し寄せ、それを問答無用で鎮圧しようとした警察官数名が「軽傷」を負ったという事になりそうです。

■黄河に跳び込んだ僧侶の安否。そして、ラジャ寺の修行僧たちの消息が気になります。負傷したのは警官だけのはずはなく、武装しているのは警察側だけですから、万が一、銃器を発泡していたりすると悲惨な事になっているはず。封鎖されていたラジャ寺の内部はどうなっているのやら……。そして何より、有名なラジャ寺でこの種の騒動が起こったという話は、瞬く間にチベット地域全体に広がっているでしょうから、次は何処に飛び火するのだろう?と気になりますなあ。

■実はラジャ寺の暴動騒ぎが起こる10日前に、在北京の日本大使館から危険情報が公式に発表されていました。


北京の日本大使館は11日「チベット動乱」から50年を迎え治安情勢が緊張している中国青海、甘粛、四川各省のチベット族自治州に渡航する場合は、安全確保に努めるよう呼び掛けるメールを中国在住の日本人らに送った。現地で「治安当局が厳重な警戒態勢を敷いている」との情報があるためとしており、デモや騒動が起きている場所に近づかないよう要請。チベット自治区については既に、渡航の是非検討を求める危険情報が出ている。
2009年3月12日 産経新聞

■最近ではパソコンを持っている人が多くなりましたから、この種のメールもある程度は有効でしょうが、電話線も無いような場所に滞在している人には情報は届きません。現地の口コミ情報が早くて正確なのが助けになりますが、その情報網に入れない人は混乱してしまうかも?

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