旅限無(りょげむ)

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日本語ブームは本物か? 其の弐

2006-12-13 08:30:12 | 日本語

今、台湾の若者の間で日本語がブームです!日本が大好きな若者のことを「哈日族(ハーリーズー)」と言い、日本のドラマを見たり、音楽や映画に親しんだり、日本語を勉強しようとしている若者が増えているのだそうです。そこで、台湾や中国などアジア各国で今、大人気の俳優チェン・ボーリンさんにインタビューしてみました。チェンさんは日常会話でも日本語を使っているのだそうです。例えば「ありがとう、どうも、すみません、最高、すげー」など。さらに、何にでも「超」をつけて「チャオ スワン=超すっぱい」などとも使っているのだそうです。

■台湾問題を日本語という切り口から考えると、ちょっと面白い国際感覚が養われでしょう。台湾は半世紀以上も日本語文化圏に属していた歴史を持っていますし、御高齢の台湾人の中には「最近の日本語は乱れておる!」と耳の痛いお小言を言って下さる方もいらっしゃいますぞ!この軽めの記事に紹介されている「日常会話」を喜んで良いやら、ちょっと恥ずかしいやら、なかなか複雑な思いでありますなあ。


これは、台湾政府の文化開放政策にともない、90年代から日本の文化がどんどん入っていったことが原因のようです。ケーブルテレビを通して放送される日本の番組を見た台湾の人たちは、無意識に日本語を覚えてしまうのです。人気ドラマの台詞を教材にした日本語教材で日本語を勉強したり、カラオケで日本のヒット曲を日本語で歌うなどをして楽しみながら覚えているのです。チェンさん自身、日本語を勉強されていて、そのきっかけは「漢字」だったそうです。また地理的にも精神的にも身近に感じると話してくださいました。文化は言葉から。同じアジアの仲間として、お互いの文化を理解しあいたいですね。
NHK「気になることば」(2005年9月2日)

■NHKの癖なのでしょうか?最近の台湾を無理やり歴史の流れから切り離して、妙に軽く明るく紹介しようとしているようです。台湾の日本文化は途切れることなくずっと継承されていた事実を無視すると、台湾での日本語ブームの歴史的な意味が分からなくなるでしょうなあ。蒋介石が逃げ込んで来てから、日本語廃絶に力を入れた歴史も有りますが、それで根絶やしには出来ない事情が台湾には有りました。そんな台湾国内の虚虚実実の駆け引きを見棄てたのが、米国の跡追いで断行された日中友好条約の締結でした。友好条約自体は目出度い事でしょうが、相手の言いなりに台湾と断行してしまったのが問題だったのでした。「日本語が上手な外国人」という乱暴な括り方は、歴史を忘れ去ってしまう危険が付きまといますなあ。


■海外で最も日本語学習が盛んな国はどこか。それがオーストラリアであることは意外に知られていない。日本の国際交流基金が2003年に実施した調査によれば、豪州の日本語学習者数は約38万人。実数で韓国の89万人、中国の39万人には及ばないが、人口比では50人に1人と世界一である。学習者のほとんどが初等・中等教育段階の青少年であることも特徴だ。国家政策としてアジア言語の優先的学習を推し進めた結果でもある。「主眼は言語運用能力の向上というより、異文化理解や国際理解」。

■ここに出て来るオーストラリアというのが、海外の日本語学習事情の重要な要素になっています。まさかとは思いますが、オーストラリアに日本語学習者が多いという話が聞こえて来た頃、日本はバブル経済に突入しつつありました。そんな時に日本政府が打ち出したのが『シルバー・コロンビア計画』という奇怪なアイデアでしたなあ。国際版の「姥捨て山」ではないのか?!と移住先に指名された国からは直ぐに反発が起こった悪名高い、老後は海外で!というふざけた政策でした。それも忘れては行けない歴史的な事実ですぞ。


同基金シドニー事務所の長谷川雅代さんは豪州側の狙いを解説する。ブームの背景には、最大貿易相手国の言語という経済的事情を否定できないが、長谷川さんは「日本のポップカルチャー、特にアニメや漫画などへの関心が若者の間に高いことも動機」と日本の好感度の高まりを指摘した。しかし、その日本語学習者数も、最近は横ばいないし微減状態なのだという。原因は日本語教員の高齢化で退職が相次ぐ一方、予算不足から補充が追いつかないためだという。

■こうした所にも、日本政府は長期的な戦略の不在が露呈します。外国を相手にして始めた政策は、勝手に止めたら国際信義を失うことになるのです。景気の良い時には、日本語教育に協力するとの名目で、あれこれと予算を付けて教師や教材を送っていたのに、それが細って行けば日本のイメージが悪くなるのは当たり前の話です。


これについて日本側からは特段の支援申し出はないと聞いた。代わって存在感を増しているのが中国である。70年代初頭に白豪主義から多文化主義へと大きく政策転換して以降、豪州にはアジア諸国からの移民が大量に流入した。中でも中国、ベトナムなどからの華人系移民は今や80万人にもなる。シドニーをはじめ豪州の主要都市には、必ずといっていいほど中華街が形成されており、中国語が日常生活に飛び交っている。

■これは「蟻の一穴」のレベルを超えた大きな問題です。アジアを理解しようとしているオーストラリアという重要な駒が、日本語を捨てて北京語に変わって行くのですぞ!東南アジアに広がる華人社会が強い吸引力と影響力を及ぼして、北京語圏がじわじわと広がって行きます。これを大問題だと騒がないのは変ですなあ。

 
民間シンクタンク、ロウィー研究所が最近実施した世論調査によると、日本は好感度の高い国としてニュージーランド、英国に次ぎ第3位。しかし中国もまた、9位の米国を引き離して5位と日本に肉薄している。これについて豪外務貿易省北アジア局幹部は、中国が強硬に反対した日本の国連安保理常任理事国入りを豪州が一貫して支持してきたことを指摘し、「経済以上に重要なことはある。中国との経済関係は重要だが、価値観を共有する日本との関係はもっと重要だ」と日本に秋波を送った。

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