旅限無(りょげむ)

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漢字という財産 其の四

2009-03-12 19:18:35 | 日本語
其の参を書いたのが昨年の10月17日ですから、ちょっと間を空け過ぎてしまいました。1000年以上もの歴史を積み上げて来た漢字文化の話ですから、そんなに急ぐこともなかろう、などと思っていた時には、まさか「漢字能力検定」を巡るおぞましい疑惑が湧きあがるなどとは想像もしておりませんでした。あまり楽しい話でもないし、漢字文化に対する理解が深まるような話でもないのですが、今の日本で漢字がどんな扱いを受けているのかを知る手掛かりくらいにはなるでしょうし、「漢字という財産」を食い物にした寂しい欲張り爺さんが出現したという恥ずかしい現実を再確認するのも、何がしかの意義があるかも知れません。

■大久保某という欲ボケ老人が、漢字文化を商売道具にしようと考えて文科省という呑気な役所からお墨付きを貰って財団法人格まで手に入れて、怪しげな商売を「公益事業」に仕立て上げたのだそうですが……


文部科学省から(3月)10日、抜本的な運営見直しを求められた日本漢字能力検定協会。京都市下京区にある協会本部は、詰めかけた報道陣にコメントを紙で配布しただけ。受検者270万人の「マンモス検定」は今後、どうなるのか。検定を活用している学校や漢検取得者の間に、戸惑いや怒りが広がった。

■多くの日本人が弱点とする「資格」コンプレックスに付け込む悪質な詐欺商売が何度も問題になりましたが、一つの言語の表記文字を個人的な商売道具にしてしまったのですから、並大抵の商魂ではなさそうです。「鰯の頭も信心から」というレベルで始まる新興宗教も多いようですが、信仰に近い神経症的な英語コンプレックスも今の日本では良い商売のネタになっておりましたなあ。しかし、何処まで行っても外国語商売には集客力に限界があるらしく、「駅前留学」なる奇妙な宣伝文句で荒稼ぎしていた英会話学校が倒産したのは昨年の事だったはず。

■おそらくは漢字検定協会が手本としたと思われる英語検定の方は、さすがに長い歴史があるだけに受験者数の累計は7500万人にも及んでいるそうです。しかし、グローバル(アメリカ)化の時代になると「TOEIC」という強力なライバルが出現しあて大ブームを起こし、地味ながら「国連英語」という資格もちょっと人気になったようで、1999年度に約350万人もいた英検の年間受験者は、あれよあれよと思う間に250万人程度に減ったとか……。もともと中学生をターゲットにしていた英検ですから、大学受験とリンクさせて高校生を巻き込んでも、その以上の年齢層にはそっぽを向かれていたようなものですから、少子高齢化の波に飲み込まれたとも言えそうです。

■高校受験や大学受験でポイント換算して貰える!と宣伝している一方で、あまりにも手を広げてしまったばかりに「問題漏洩」事件が何度も起こり、真面目に試験に取り組んでいた若者の不信感を増してしまったのも受験者減少の一因かも知れませんなあ。

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