■たった19分間の演説なのに、極寒のワシントンに120万もの人々が足を運び、世界中のマスコミが取材し特集を組む。それは「腐っても鯛」ならぬ「ブッシュの後でもアメリカはアメリカ」である現実を誰もが認めざるを得ないからでしょう。別にオバマ大統領の一家がホワイトハウスに入居するのに合わせたわけでもないのでしょうが、日本の麻生コロコロ首相も就任してから118日も経過した1月19日に、首相官邸に引っ越したのだそうです。奥様と東京大学3年生の長女も同居するとの事なので、早速、口の悪い人から「娘に漢字を教えてもらえば良い」などと言われているとかいないとか……。
■その麻生首相はオバマ米大統領の就任演説を聞いた後、感想を聞かれまして、「今、世界における経済危機についての認識は一致している。国民の潜在力を引き出すという(解決のための)手法も同じだ。こういう感じであれば、世界1位、2位の経済大国が手を握っていけるなと確信した」と記者の質問に答えたのだそうです。日本国首相としての矜持(きょうじ)なのか、単なる強がりなのかは判断しませんが、「世界2位の経済大国」だと胸を張ってみても外国のメディアはまったく取り上げないでしょうし、日本国民でさえ誰も感動しないでしょうなあ。同じ「引越し」でも世界1位と2位とではメディアの扱い方は雲泥の差で、何よりも首脳の交代に関する報道の量と質が全然違います。
■世界的なスポーツ大会ならば、1位と2位、金メダルと銀メダルとの差は僅かなものなのでしょうが、国際政治の場合は1位の地位は図抜けております。米国の一極支配は間も無く終わると言う人もいるようですが、今回の金融危機には勝者となった国は無いのですから、今の米国が塩をかけられたナメクジみたいにみるみる縮んで行くとも思えませんし、軍事力でも米国に対抗できる国はなかなか現われないでしょうから、米国を中心とした世界の構造はもう暫くは続くと思った方が良いのでしょう。
■古い皮を脱ぎ捨てる大蛇か、自ら炎の中に飛び込んで復活する不死鳥のように、4年に1度か8年に1度、米国は熱狂的に節目を迎えます。それを象徴するのが大統領就任演説であります。2期8年務めたブッシュ大統領は珍妙な発言で大いに楽しませてくれた人でしたから、詩人か預言者のような演説の名手であるオバマ大統領の「演説」は、米国にとっては干天の慈雨か砂漠のオアシスみたいな物だったでしょうなあ。そんな感動的な「言葉」を世界中が待っていた1月20日、日本の議院予算委員会では、民主党の石井一副代表が世界第2位の経済大国の首相を相手に、漢字の小テストをしたのだそうです。嗚呼。
■石井さんは、月刊誌「文芸春秋」に掲載された麻生首相の手記をテキストにして「就中(なかんずく)」など12個の漢字熟語を並べたボードまで用意して議場に持ち込み、御丁寧に問題用紙を事前に渡しておいて、「先に渡してあるから今なら読めるだろう」と喧嘩を売ったとか……。それに対して「多分、みなさんが読みにくいのは『窶し(やつし)』ぐらいではないか。後の漢字は普通、みなさん読める」と麻生首相は真面目に応対したとのことです。石井さんは「ゴーストライター」による代筆ではないか?と追い詰める予定だったらしく、すっかり有名になった未曾有を「みぞうゆう」踏襲を『ふしゅう』と誤読した事を状況証拠にして麻生首相を吊るし上げたそうな。
■麻生首相の漢字力を大喜びしてネタにして楽しんだ日本のマスコミですから、石井副代表の意地悪テストを政治ニュースとして取り上げるのも不思議ではありません。しかし、この時の質問は消費税の引き上げに関する質問と、何よりも公明党と創価学会との癒着関係を指摘して政教分離の議論に持ち込もうとするのが眼目だったのでした。テレビも新聞も、その場面については無気味な沈黙を守っているようですし、その箇所を議事録から削除しろ!と切り替えした公明党議員の発言も無視しているようです。国会の議論には記事にする価値のある部分があまりにも少ないので、場外乱闘みたいな政局話ばかりが取り上げられ、情報源を明かさない「噂」を仕入れて来るのが政治記者の主要な仕事になっているのも情ない話です。
■オバマ大統領が行った19分の演説は、単に新聞記事になるだけでなく、無数の出版物に引用され音声や映像のソフトとなって出回るのは確実です。既に自伝やエッセイは米国だけでなく他の国でもベストセラーになり、数ヶ国語に翻訳されているくらいの大人気。日本の首相が書いて売れたのは田中角栄さんが子飼いの官僚達を集めて書かせた『日本列島改造論』くらいなもので、安倍さんの『美しい国』や麻生さんの『とてつもない国』では太刀打ち出来ません。小泉さんの郵政民営化に関連した本も、一時の話題で終わりまして、パロディ集団の「ニュースペーパー」の方が人気は長続きしそうです。
自民、公明両党の衆参両院国対委員長は21日、国会内で会談し、野党が2008年度第2次補正予算案の週内採決に応じない方針を決めたことへの対応を協議した。その結果、麻生太郎首相の施政方針演説など政府4演説を23日に衆院で行うことも辞さない方針で一致した。ただ、野党の反発は必至で、与党は民主党などの出方を見極めながら最終判断する方針。
1月21日 時事通信
■ 「政府4演説」というのは、首相の施政方針演説、財務相の財政演説、外相の外交演説、経済財政担当相の経済演説を総称して言うのだそうですが、どうせ役人の作文を切り貼りして棒読みするだけの事ですから、施政方針演説1本だけでも、議場では居眠り、携帯電話遊び、落書き、私語が目に付きます。野党側からは下品な野次が飛びますが、与党席や傍聴席でスタンディングオベージョンが起こって拍手の音で演説が中断するような光景にはとんと遭ったことがありません。それを1日に4本も連続して聞かされるのでは、野党席での居眠りが続出しそうですなあ。
■本当に日本は米国と同じように「100年に1度」の危機に直面しているのでしょうか?
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■その麻生首相はオバマ米大統領の就任演説を聞いた後、感想を聞かれまして、「今、世界における経済危機についての認識は一致している。国民の潜在力を引き出すという(解決のための)手法も同じだ。こういう感じであれば、世界1位、2位の経済大国が手を握っていけるなと確信した」と記者の質問に答えたのだそうです。日本国首相としての矜持(きょうじ)なのか、単なる強がりなのかは判断しませんが、「世界2位の経済大国」だと胸を張ってみても外国のメディアはまったく取り上げないでしょうし、日本国民でさえ誰も感動しないでしょうなあ。同じ「引越し」でも世界1位と2位とではメディアの扱い方は雲泥の差で、何よりも首脳の交代に関する報道の量と質が全然違います。
■世界的なスポーツ大会ならば、1位と2位、金メダルと銀メダルとの差は僅かなものなのでしょうが、国際政治の場合は1位の地位は図抜けております。米国の一極支配は間も無く終わると言う人もいるようですが、今回の金融危機には勝者となった国は無いのですから、今の米国が塩をかけられたナメクジみたいにみるみる縮んで行くとも思えませんし、軍事力でも米国に対抗できる国はなかなか現われないでしょうから、米国を中心とした世界の構造はもう暫くは続くと思った方が良いのでしょう。
■古い皮を脱ぎ捨てる大蛇か、自ら炎の中に飛び込んで復活する不死鳥のように、4年に1度か8年に1度、米国は熱狂的に節目を迎えます。それを象徴するのが大統領就任演説であります。2期8年務めたブッシュ大統領は珍妙な発言で大いに楽しませてくれた人でしたから、詩人か預言者のような演説の名手であるオバマ大統領の「演説」は、米国にとっては干天の慈雨か砂漠のオアシスみたいな物だったでしょうなあ。そんな感動的な「言葉」を世界中が待っていた1月20日、日本の議院予算委員会では、民主党の石井一副代表が世界第2位の経済大国の首相を相手に、漢字の小テストをしたのだそうです。嗚呼。
■石井さんは、月刊誌「文芸春秋」に掲載された麻生首相の手記をテキストにして「就中(なかんずく)」など12個の漢字熟語を並べたボードまで用意して議場に持ち込み、御丁寧に問題用紙を事前に渡しておいて、「先に渡してあるから今なら読めるだろう」と喧嘩を売ったとか……。それに対して「多分、みなさんが読みにくいのは『窶し(やつし)』ぐらいではないか。後の漢字は普通、みなさん読める」と麻生首相は真面目に応対したとのことです。石井さんは「ゴーストライター」による代筆ではないか?と追い詰める予定だったらしく、すっかり有名になった未曾有を「みぞうゆう」踏襲を『ふしゅう』と誤読した事を状況証拠にして麻生首相を吊るし上げたそうな。
■麻生首相の漢字力を大喜びしてネタにして楽しんだ日本のマスコミですから、石井副代表の意地悪テストを政治ニュースとして取り上げるのも不思議ではありません。しかし、この時の質問は消費税の引き上げに関する質問と、何よりも公明党と創価学会との癒着関係を指摘して政教分離の議論に持ち込もうとするのが眼目だったのでした。テレビも新聞も、その場面については無気味な沈黙を守っているようですし、その箇所を議事録から削除しろ!と切り替えした公明党議員の発言も無視しているようです。国会の議論には記事にする価値のある部分があまりにも少ないので、場外乱闘みたいな政局話ばかりが取り上げられ、情報源を明かさない「噂」を仕入れて来るのが政治記者の主要な仕事になっているのも情ない話です。
■オバマ大統領が行った19分の演説は、単に新聞記事になるだけでなく、無数の出版物に引用され音声や映像のソフトとなって出回るのは確実です。既に自伝やエッセイは米国だけでなく他の国でもベストセラーになり、数ヶ国語に翻訳されているくらいの大人気。日本の首相が書いて売れたのは田中角栄さんが子飼いの官僚達を集めて書かせた『日本列島改造論』くらいなもので、安倍さんの『美しい国』や麻生さんの『とてつもない国』では太刀打ち出来ません。小泉さんの郵政民営化に関連した本も、一時の話題で終わりまして、パロディ集団の「ニュースペーパー」の方が人気は長続きしそうです。
自民、公明両党の衆参両院国対委員長は21日、国会内で会談し、野党が2008年度第2次補正予算案の週内採決に応じない方針を決めたことへの対応を協議した。その結果、麻生太郎首相の施政方針演説など政府4演説を23日に衆院で行うことも辞さない方針で一致した。ただ、野党の反発は必至で、与党は民主党などの出方を見極めながら最終判断する方針。
1月21日 時事通信
■ 「政府4演説」というのは、首相の施政方針演説、財務相の財政演説、外相の外交演説、経済財政担当相の経済演説を総称して言うのだそうですが、どうせ役人の作文を切り貼りして棒読みするだけの事ですから、施政方針演説1本だけでも、議場では居眠り、携帯電話遊び、落書き、私語が目に付きます。野党側からは下品な野次が飛びますが、与党席や傍聴席でスタンディングオベージョンが起こって拍手の音で演説が中断するような光景にはとんと遭ったことがありません。それを1日に4本も連続して聞かされるのでは、野党席での居眠りが続出しそうですなあ。
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