旅限無(りょげむ)

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日本語ブームは本物か? 其の壱

2006-12-13 08:29:38 | 日本語
■日本語の最前線は出版業界と教育界でしょうか。ラジオが地味ながら孤塁を守って、新聞業界やテレビ業界が第二戦線を守っているような順番になるでしょうか?人によってはテレビが第一だ!という意見も有るでしょうが、世の中にはテレビをほとんど見ないで暮らしている日本人も、案外と多いようですぞ。しかし、それならば本を読む人が増えているのか?と言うと、年間に1冊も本を読まないという日本人が、残念ながら恐ろしい勢いで増えているという話が有ります。昔は読み・書き・算盤でしたから、「イロハ」に始まる仮名から漢字へと膨大な読書生活が始まったものですが、今も入り口は同じなのに何故か先細りになってしまうようです。もしかすると売ると、昔の手習いにあった「模倣」が廃れた事に原因が有るのではないか?などとも考えているのですが……。

■模倣が悪で、創造が善というような大きな誤解が教育界に広まって、よたよたと模倣をする段階を飛び越えて、習字を省略して「鑑賞」を始めるような流れが有りませんかな?それも明治以来の「お上から頂いた教科書」信仰みたいなものが生きているらしく、学校が読め!と命じた文章は徹底的に賞賛しなければならない不文律が有るような気がします。ところが鑑賞しなければならない教材が、古典ではなくて誰が選んだのか分からない「新作」だらけなのですから、本当に褒めて良いのかいなあ?と首を傾げたくなるような作品も紛れ込む危険が有りますぞ。

■誰が言ったか「詰め込み主義」は大間違いとかで、名文・名歌の類を暗誦する文化も廃れてしまい、好きな本や好きな文という大切な財産を持たない日本人が随分と増えたようですぞ。まあ、思わず書き写して何度も読み直したい文章に出会わないことが問題なのかも知れませんが……。


日本語を母語としない人が対象の日本語能力試験が3日、日本を含む世界48カ国で実施され、約53万人が受験した。若者の日本語ブームを背景に受験者が年々増加している中国は今年、前年比46%増の21万1591人が受験し、過去最高だった。日本国内では日本国際教育支援協会、海外は国際交流基金が年1回、試験を実施する。外国人が日本の大学に留学する際の選考にも活用される。急速な経済発展に伴い、日系企業の進出が増加している中国では、日本語ができる人材の需要が高まった。若者の就職難も続いており、「日本語ができると就職に有利」として、日本語学習がブームとなっている。

■都市部の大きな書店でないと『日本語能力検定試験問題集』は手に入らないようですので、外国人がどんな問題を解いているのかを知らない日本人が多いはずです。英語検定に準じて級が上がって行くのですが、最上級の問題を一度は覗いていることをお勧めいたしますぞ。まあ、語学の検定試験は国籍や肌の色とは無関係なので、努力した者にはそれをしていない「ネイティブ」は適わないのですから、特に日本語ばかりが危機的なのではないというのも事実です。万難を排して日本国内で英語を学び続けた人達の中にも、英米人が脱帽するほどの英語読みの達人や作文会話の名手もたくさん居ますからなあ。こういう理屈が分からない困った人が、変なナショナリズムを振り回して、「○○人でもない者が、○○語が分かるはずが無い!」などと無責任に放言したりするものです。


日本語能力試験では中国の受験者数が世界最多。今年の受験応募者数は、海外では韓国(9万3750人)が中国に次ぐが、米国が2816人、フランス1187人、英国781人と、中国の多さが際立っている。中国では04年、受験申し込みの受け付け開始から1時間もたたずに定員(約10万人)に達した。受験できず留学を先送りせざるを得ない学生が続出し批判が高まった。このため05年に中国国内の受験会場を14都市から24都市に増やし、今年はさらに29都市に拡大した。
毎日新聞 12月4日

■研修生制度などという、ややこしい仕掛けを捻り出して日中友好を急いだ経緯が有りましたが、その後始末もしないまま、不法滞在問題や違法雇用問題が日本のあちこちで起こるという「モグラ叩き」が続いています。WTOに加盟した以上、北京政府も国際的な評判を気にしますし、学生側でも危ない橋を渡らずに済むのなら、そして学習環境が整っているのなら、正規の資格試験を受けようと思うようになるのは自然の流れではあります。草の根運動として地道に日中友好に努力して来た人達には、中国の受験生が増えたのは喜ばしい事でしょうが、その裏には日本政府の失政による「失われた20年」が有る事を忘れてはなりません。この大問題は大勲位の中曽根さんにお出まし願って、詳細な点検をしなければならないのですが……。

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