旅限無(りょげむ)

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漢字という財産 其の伍

2009-03-12 19:19:16 | 日本語
協会本部はこの日、約20人の報道陣に「誠意を持って対応していく」など3行のコメントを書いた紙1枚を配布。女性広報担当者が「このコメントがすべて。今後お伝えすることがあればホームページで」と話した。今後の対応などについて、大久保昇理事長(73)ら協会トップによる説明を求められても「理事長と副理事長はこのビルにはいない」「理事長と連絡を取れる上司は出張中」「私には分からない」と繰り返すだけだった。

■漢検1級レベルの見事な文章を発表するかと思いきや、たった3行のコメントだけ!?しかも「誠意」という熟語を分解してみると、「誠」小学校6年生、「意」は小学校3年生の学習漢字ですから、前者は漢検5級で後者は8級のレベルということになります。6000字を自由自在に使いこなして故事成語も各種熟語にも精通している1級レベルの文書を発表する義務があるのではないでしょうか?集まった20人の報道陣が思わず赤面するようなインパクトが欲しかったですなあ。

■蒼褪めているのは文科省のお墨付きを信じ切って漢検資格を生徒や受験生に強要して結局は銭ゲバ・大久保一族の手先になってしまった日本中の学校の先生方は大変です。


09年度、漢検取得を評価基準の一つにしている大学や短大は全国で490校。京都の立命館大などは「特に見直しなどは検討していない」としているが、ユニーク選抜で点数加算している大阪市立大経済学部は「受験にかかわる問題なので」と回答を避けた。

■恐怖の「全入時代」に突入している日本の大学は、少しでもマトモな生徒を獲得しようと、最低限度の読み書き能力を調べる尺度になるとて、直ぐに跳び付いたのでしょうが……。漢検制度(商売)自体の怪しさは読み解けなかった模様です。


2級以上に合格すると国語の2単位として認定する千葉県の公立高の教頭は「今のところ見直す予定はないが、漢検の社会的信用や価値が下がってくればどうなるか分からない」。漢検に合格すれば推薦入試に出願できる栃木県のある高校の入試担当者は「検定そのものに不正があったわけじゃないし、今までの実績もあるので」と困惑。同様の北海道の私立高の担当者も「事態の推移を見て判断するしかない」とする。

■この栃木県の高校教師には、最新号の『文藝春秋』4月号212頁に掲載されている高島俊男さんの『ああ、漢字検定のアホらしさ』を熟読することを強くお薦めしておきましょう。流石は高島俊男さん!……「漢字検定とはどういうものか。ちょっとのぞいてみた」と、トボケて見せてから「アヤシゲな」団体が作り続けた「アヤシゲな」問題を次々と俎上に載せて腕の良い板前さんの如く、或いは快刀乱麻を断つ如く、これでもか!と「アホらしさ」を山盛りで実証して下さっておりますぞ。『文藝春秋』の記事を読んで声を出して笑ってしまったのは初めての経験かも?


受検者の側は、子供3人が漢検を取得している大津市の主婦(52)は「勉強の励みになり、キャリアにもなると思って勧めていた。一体受検料を何に使っていたのか。いかがわしい感じがする」とまゆをひそめた。準2級を取得している同志社大社会学部3年の男子学生(21)は「特に資格を持っていないので、就職活動のエントリーシートには仕方なく『漢字検定』と書いている。それほどもうかる事業とは思いもしなかった。完全に営利企業ですね」と驚いていた。

■何の役に立つのか分からない、否、何の役にも立たないことが文化的な価値なのだ!と自分に言い聞かせて学齢を過ぎても漢字検定の級を一つでも上げようと頑張っていた人も多いかも知れませんが、多少のボッタクリはあったにしても、合格の「紙切れ」一枚で天にも昇る達成感や充実感が得られたのなら諦めもつきそうです。しかし!英検を手本にして際限もなく「教則本」だの「過去問」だのを買わされ続けた人は怒り心頭に発してしまいますなあ。

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