旅限無(りょげむ)

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火を噴くウイグル 其の壱拾四

2009-07-11 15:33:16 | チベットもの
■「東トルキスタン共和国」の独立が夢と消え、有り難くも畏くも社会主義革命の名の下に「解放」して頂いてからは、原爆実験はしてくれるわ、あちこちに軍事拠点は作ってくれるわ、「人民教育」を目的として学校が建てて下さり、漢族の教師が続々と送り込んで頂き、それから少しばかりソ連(ロシア)との緊張が薄れたかと思ったら民間人の漢族がじわじわと流れ込み、その一方で地元のウイグル人は東や南に出稼ぎに行くなどして民族間の人口比率はあっさりと逆転してしまったのでした。

■御丁寧に「西部大開発」の大号令で莫大な予算が投入されたのはよいのですが、入って来たのはカネだけではなく、それより多くの漢族が雪崩れ込んで来たのですから、共産党政府が開発目的で支出したカネのほとんどは漢族の懐へと「還流」して消えてしまったそうな……。このまま人口比が一方的に傾いて行けば、ウイグル自治区の名前は文字通りの看板倒れとなってしまうのは目に見えてたようなものですが、大規模な暴動が発生したからには当面の鎮圧を目的とした公安やら軍隊が急いで送り込まれ、その後は予防的な目的で駐留する部隊が増やされるでしょうから、それを当て込んで商売にやって来る漢族がまたまた増えるというわけです。

■もしも、ウイグル人の方から出て行ってくれれば、さぞや漢化政策の効率は高まり、「民族融和」の仮面の下に隠されていた単一民族国家への恐ろしい野望が顕(あらわ)になるかも?


ウイグル族と漢族の対立が続く中国新疆ウイグル自治区の区都ウルムチで8日、ウイグル族住民がウルムチからの脱出を始めた。区都の人口で圧倒的多数を占める漢族住民が7日にウイグル族の商店を襲撃し、情勢が一層悪化する懸念が高まったためだ。中国公安当局は武装警察部隊などを大量動員し徹底した鎮圧に乗り出しており、現地は緊迫した状況が続いている。

■民族間の対立が激化してウイグル人の「皆殺し」を叫ぶ者まで現われている時に、「徹底した鎮圧」は誰が誰に対して行われているのでしょうなあ?当局が動員も許可もしていないデモ行進をした者は無条件で「分裂主義者」のレッテルを貼られ、問答無用で野蛮な弾圧を仕掛けた武装警察は愛国者と呼ばれ、取り締まりに反発したらこれまた「国家に対する反逆」とされ、積年の恨みを爆発させて暴れたら「徹底した鎮圧」の対象にされてしまいます。

■その一方で、デモとも暴動とも関係の無いウイグル人を襲う漢族は分裂主義者となり得る者を予防的に攻撃していると言い張ればお咎めなし?


……ウルムチ脱出の動きは8日朝から始まった。ウイグル族居住区に近い市中心部南端の長距離バスターミナルは、大型トランクなど多くの荷物を抱えたウイグル族住民でごった返した。ウルムチ駅に向かう住民もいるという。主な避難先は出身地や親類がいるカシュガル、アクスなど同自治区南西部の都市。あるウイグル族男性は「不安でたまらない」と話した。

■かつてのナチスが暴れ回った頃の欧州で見られたユダヤ人の大量脱出とよく似た光景が現出しているというのに、イタリアで開催されていたサミットでは、胡錦濤国家主席が緊急帰国したことさえも話題にならず、ましてやウイグル問題を取り上げよう!という声を上げる者は皆無だったとか……。北京政府は逸早く「これは内政問題だ!」と先手を打って、間違ってもサミット会場でチャイナの人権問題などが取り上げられないように釘を刺していたようですなあ。勿論、我らが「外交の麻生」もこの件に関しては沈黙を守っていたようです。

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