【佐藤優の人生相談】避妊せずにセックスも…子供できません

2012年02月15日 17時10分37秒 | Weblog
★インテリジェンス人生相談

 “外務省のラスプーチン”と呼ばれた諜報のプロが、その経験をもとに、読者の悩みに答える!

■相談者 占い大好き子(ペンネーム) 花屋勤務 女性 34歳

 昨年末に結婚したばかりですが、不安なことがあります。子供が全然できません。年齢も年齢なので、籍を入れる前から避妊せずにセックスをしていました。できちゃった婚(最近でいう「授かり婚」)がいいね、と彼に了解をもらって、もう1年半以上、子供をつくろうとがんばってきました。これだけできないと、子供ができない体なのではと思ってしまいます。このまま年を取り続けて高齢出産すると、障害を抱えた子が生まれる確率が高くなるとも聞いています。生まれてきた子は無条件で愛しますが、障害を抱える可能性が高くなると言われてまで、子供をつくるべきか考えてしまいます。病院で「子供ができない体」と宣告されるのも怖いです。八方ふさがりの私はどうしたらいいでしょうか?

■作家・元外務省主任分析官 佐藤優

 まず夫婦で、人生の意味についてよく話し合ってみることをお勧めします。私はキリスト教徒で、神様を信じているので、子供がいるか、いないかは、人間の意思によって決められることではないと考えています。同時に、結婚も究極的には神様の意思で決まるものと考えています。仏教的な言い方をするならば、縁です。本人同士が深く愛し合っていると思っていても、縁がなかったために、その愛が結婚に繋がらないことはよくあります。子供ができるかどうかも、最終的には人知を超えた縁によるものと腹を括ることが重要です。その上で、不妊治療の専門医の診察を受けてみることをお勧めします。不妊治療は確かにお金がかかります。ただし、以前と比較すると健康保険でカバーできる領域も広がっています。また保険がきかない治療について、行政機関が助成金を出してくれることもあるので、調べてみましょう。

 玄侑宗久先生の芥川賞受賞作品『中陰の花』は不妊治療と生命の関係について描いた傑作です。主人公の則道は、僧侶で、圭子とは高齢結婚します。子供が欲しいので、専門医にかかり不妊治療を受けます。

 〈そこには数冊の似たような本が置かれているだけで、ほかに手を伸ばせるものといえば則道のすぐ横のティッシュボックスくらいだった。部屋の命ずるままに則道はエロ本を捲り、三冊目の胸の小さな女の子の愉悦の表情に目的を遂げた。

 ビーカーに摂った精液を持って診察室に戻ると、医師はまたズボンを脱いで横になれと言う。そのとおり情けない格好で待っていると、「今時ふんどしなんですね」と気さくに話しかける医師に「ええ」と応えて息を吐いた瞬間、むき出しの下半身の両膝の下に腕を突っ込まれて胸元まで上げられたと思う間もなく、いつのまにか填めた使い捨ての手袋の人差し指を肛門ふかくに突っ込まれた。「前立腺も大丈夫ですね」と、医師は冷静に言った。

 それは子供ができないことが気になりだした高齢結婚の二年目、きちんと検査したほうが諦めもつくし方策も立てられると出かけた病院での、なにやら無機質なのに濃密な時間だった。いったん廊下に出て圭子の診察を待つあいだ、則道は圭子の屈辱を想うのだったが、なぜかさっき見たばかりのエロ本の様々な姿態ばかりが頭の中を飛び交ってしまったのを覚えている。〉(『中陰の花』96~97頁)

 圭子は妊娠しますが、流産してしまいます。生まれてこなかった命について、この世とあの世の間にある中陰という世界が現実に存在することを感じ、知ることによって、夫婦の本当の愛は何かを、則道と圭子は見直していきます。占い大好き子さんにさまざまな不安があることはよくわかります。恐れずに専門医の診察を夫婦で受けるとともに、よい本を読んで命に対する理解を深めれば、不安は解消されます。

▼今週の教訓 結婚も子供も神様の意思で決まるもの
▼今週の参考文献 『中陰の花』玄侑宗久 文藝春秋
 禅寺の住職とその妻の会話から、「死、魂とは?」の問いに迫る作品。宗教色の強いテーマだが、住職の等身大の姿を描くことで、第125回芥川賞受賞作に。’01年刊

■佐藤優(さとうまさる) ’60年生まれ。’85年に外務省入省。在英、在ロシア連邦大使館、国際情報局分析第一課で活躍。’02年に背任の容疑で逮捕。『インテリジェンス人生相談』個人・社会編に続く第3弾、新刊『インテリジェンス人生相談〈復興編〉』が発売中!
http://www.zakzak.co.jp/zakspa/news/20120215/zsp1202151414006-n1.htm

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