急にモテなくなった美人の私、耳の痛い理由

2011年11月20日 04時26分27秒 | Weblog
本当に好きになった人がいない

 「美人で頭もよくて、社会的な地位やセンスもある。だからモテないはずがない」。今回の相談者・澄香さん(仮名、35歳)は、そんな考え方を持っていました。

 実際にお会いした彼女は、美しく受け答えもスムーズかつスマート。大手広告代理店勤務で、休日は仲間とジャズ演奏を楽しむなど、ライフスタイルも華やかです。しかし、誰もがうらやむような暮らしぶりの澄香さんも、恋愛面では悩みを抱えていました。

 澄香さん「学生のころから、友人に『美人で勉強もできていいね』と言われていました。それに、両親がピアノや華道を習わせるなど、文化的な教育にも熱心だったんです。見た目も学歴も文化的なことも、全て磨いてきたので正直自分に自信があったし、ずっとモテていました。ただ、最近は出会いの場に顔を出しても、急激にモテなくなったので、原因を突き止めたいと思っています」

 木村「ご自身でなにか思い当たることはありますか?」

 澄香さん「よくわからないのですが、年齢が原因だとは思いたくないですね。年齢の割に見た目もキャリアもいい方だと思いますし」

 木村「おっしゃるように、“モテなくなる原因が年齢”ということは、あまりないんですよ。それよりも、『もう歳だから』とネガティブになったり、『怖い』『面倒くさい』『忙しい』と逃げたりなど、メンタル面が原因となるケースはよくあるのですが、これは澄香さんには当てはまらなさそうですね」

 澄香さん「(うなずきながら)そういう風に思うことはないですね。むしろその逆で、プライドが高すぎるのがいけないのかもしれませんが」

 木村「これまでと最近の恋愛ではどうでしたか? 相手の選び方や付き合い方など、プライドの高さが影響することはありませんでしたか?」

 澄香さん「今までずっと、見た目も学歴も仕事も自分と同じレベルで、私のことを尊重してくれそうな男性を探してきました。ただ、付き合い始めると『私のことを尊重してくれない』とか、『私と張り合って優位に立とうとする』とか、『思い通りにコントロールしようとする』と感じてしまって、3か月くらいしか続かないんです」

 木村「最近は澄香さんが『同じレベル以下』と思う男性からも、声をかけられないんですよね?」

 澄香さん「(うなずきながら)仕事関係の飲み会や合コンには、何度も顔を出していますが、全然ですね。周りから『恋人がいそう』と思われてしまうんでしょうか……。自分から『誰か紹介して』とか、『誘って』とかは絶対に言ませんし」

 木村「やはりプライドの高さが、恋愛の邪魔をしているところはありそうですね。今までの年齢ではよかったかもしれませんが、大人の年代になってその態度ですと、男性は『あえて近寄ろうと思わない』ものですから」

 澄香さん「それが本当なら私、ヤバイですね。実は今まで、本当に好きになった人が1人もいないんです。『この性格のせいかな』って最近思うことがあります」

 木村「せっかくそう気付けたのであれば、今日をきっかけにしませんか? ここで変わらなければ、今後数年間、寂しい思いをするかもしれませんから」

 澄香さん「(少し考えた後)…………わかりました。なんでも言ってください」

 木村「先ほど、『尊重してくれない』『張り合って優位に立とうとする』『コントロールされる』とおっしゃいましたが、まずこの考え方を改めなければ、出会いも交際もうまくいかないでしょうね」

 澄香さん「もっと自分を捨てなければいけないということですか?」

 木村「どちらが捨てるとか、優位に立つとか、そういうことではありません。澄香さんの見た目やこれまでのご経歴と、男性との交際は別問題ということ。それを混同してしまうと、深い交際まで発展しないので、本当に好きになることも、心から傷付くこともないのだと思います」

 澄香さん「私からすると、『男性が私に張り合ってくる』ような気がするのですが」

 木村「澄香さんは美人でキャリアもある女性なので、男性もつい背伸びをしてしまうのかもしれませんよ。もともと多くの男性は、出会いのシーンや交際が始まってしばらくの間、カッコつけたり、デキる自分を見せたりするものですが、最終的には女性に勝とうとしません。『かかあ天下の方が夫婦はうまくいく』と言われるように、付き合いが長くなると主導権を渡すことが多いくらいです。見方を変えれば、必要以上に張り合い、相手の男性を尊重できていないのは澄香さんの方かもしれません」

 澄香さん「耳が痛いですね……。わかりました。その他になにか気を付けることはありますか?」

 木村「今まで澄香さんが目安にしてきた“見た目、学歴、教養、仕事、センス”などは、大人の恋愛でさほど重視されません。それらに惹かれて始まった恋愛は、急に誘われなくなったり、お互いの人柄を理解し合えなかったり、なかなかうまくいかないことを経験してきたからです。少し厳しい言い方かもしれませんが、今まで澄香さんがモテてきた方法はもう通用しなくなっていますし、そもそも幸せになりにくい方法でもあるのでやめませんか?」

 澄香さん「(うなずきながら)じゃあ、男性は大人の女性にどんなものを求めるんですか?」

 木村「大人の女性らしい包容力や安心感です。それは学歴や仕事やセンスではなく、話の聞き方や気づかいの言葉から感じさせてください。同様に見た目も、顔の良し悪しや服装ではなく、笑顔や仕草や振る舞いからそれを感じてもらうことが大切です。それができた上で初めて、美人であることや、学歴や教養の高さが、魅力として加算されますから」

 澄香さん「理屈はわかりました。でも、それを見せたいと思える魅力的な男性があまりいないんですよね」

 木村「出会った男性が澄香さんより外見や学歴、教養、収入が劣っていたとしても、澄香さんにはない長所や魅力が必ずあると思います。100%完璧な人間はいないですし、その自分にはない相手の長所を見つけて欲しいんですよ。それができるようになれば、澄香さんは今よりもっと魅力的な女性になると思いますし、幸せな恋愛や結婚につながっていくはずです」

 澄香さん「確かに私はそういうのが苦手だったので、これから出会った男性は、気を付けて見るようにしてみます。私自身、優位に立とうとする男性はイヤなくせに、頼りがいのある男性がいいと思っているなど、矛盾していました」

 木村「もう遅いので今日のところはおしまいにしましょう。次回は出会いの場についてお話できればと思います」

――3日後に再び会う約束をして、この日のコンサルは終了しました。

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男性が求める“かわいらしさ”とは

 木村「では、先日の続きを話していきましょうか。まずは、出会いの場についてです。どんなところで出会いを探したらいいと思いますか?」

 澄香さん「よくわかりませんが、合コンとか今までの出会い方と違う方がよさそうですね」

 木村「方向性としては、合コンとは正反対でしょうね。選ぶポイントは、今まで澄香さんが目安にしてきた“見た目、肩書き、教養、センスの良し悪しが基準にならない”こと。もう少し具体的に言うと、恋愛以外のテーマがあり、自然な形で人柄を見せ合える場や、一緒に体感したり、何かを得られたりする場がいいと思います」

 澄香さん「おっしゃることはわかるのですが、たとえばどんなところですか?」

 木村「ではいくつか例を挙げますね。1つめは、地域の団体。今のお住まいでも勤務地の近くでもいいので、参加してみてはいかがでしょうか。活動内容も、創作教室、イベント運営、地域奉仕などいろいろあって選べますし。2つめは、芸術、スポーツ、ボランティアなどのサークルや支援団体。澄香さんが興味のあるジャンルでOKです」

 澄香さん「(首をひねりながら)なにかピンと来ないのですが……恋愛に結び付かない気がして」

 木村「今まで澄香さんの恋愛は、出会ってすぐに見た目やキャリアなどでお互いを選び、内面を理解する前に別れるという、短期戦ばかりでした。それでうまくいかなかった上に、最近は短期戦すら成立しにくくなっているというのが現状です。特に大人の年代に入った今は、数か月かけた中期戦がいいと思いますよ」

 澄香さん「それで本当に長く付き合える人と出会えるのなら、全然いいんですけど……」

 木村「先ほどの2つに加えて、スキルアップを目指した習い事やセミナーでもいいでしょうね。とにかく同じ人に何度か会える場を選んでください。そして、大切なのは、その場では自分から恋愛の話をしないこと。何度か会っているうちに、自然な会話の中で伝えればいいのですから」

 澄香さん「自分から恋愛の話をしてはいけないんですか?」

 木村「澄香さんの内面を見て欲しいからです。内面を理解する前に、どちらかの恋愛感情が強くなりすぎると、今までと同じ失敗を繰り返してしまいますから。恋愛目線ではなく、もちろん勝ち負けの目線でもなく、フラットな目で相手の人柄を見て、自分の人柄を見せて欲しいんです」

 澄香さん「そういうことは一切してこなかったので、できるか心配ですね……」

 木村「特に技術的なことは必要ないですし、『できる、できない』ではなく、『相手と向き合おうとするか、しないか』なので、澄香さんの気持ちひとつです。『この男性は恋愛対象外だからいいや』とすぐに決め付けず、出会った全ての人にそうしてくださいね」

 澄香さん「よくないんでしょうけど、そういうのはどうしても効率が悪いような気がしてしまうんですよね……」

 木村「効率の問題ではなく、相手を尊重する優しい気持ちを持つことが、大人同士の恋愛につながるんです。それができない大人の女性は、『近づきにくい人』『放っておこう』と思われてしまいますから」

 澄香さん「それって最近の私そのものですね……」

 木村「それに、『せっかく出会えた人だから、向き合って話そう』というポジティブな女性を見ると、男性は“女性としてのかわいらしさ”を感じるものなんですよ」

 澄香さん「私って、そういう風にかわいらしく、下手に出るのが苦手なんですよね」

 木村「決して下手に出ているわけではありません。先ほども言いましたが、相手を尊重する穏やかな気持ちで、男性を癒してあげて欲しいんですよ。特に澄香さんは、男性を厳しい目で見てしまいがちなので、そういう気持ちを忘れないでください」

 澄香さん「おっしゃる通りで、元彼に『最初は癒し系かと思ったけど、オレのカンちがいだった』と言われたことがあります(苦笑)』

 木村「恋人ができた後も、それは同じです。『お互いを思い合い、歩み寄ることを幸せだと思わなければ長続きしない』ことを覚えておいてください」

 澄香さん「私に足りないところだと思うし、失敗を重ねてきた理由のような気もします。納得できました」

 木村「澄香さんは、もともといろいろなことに優れているのですから、そういうことができるようになれば、もっともっと魅力的な女性になれますよ。決して遠まわりな方法ではないですし、今後の人生にも役に立つと思います」

――その後も澄香さんは、なかなかプライドを捨てられず、出会いの場に行っても成果が出ませんでした。しかし、約1年半後、若手クリエイターを支援する団体の彼(42歳)と出会い、付き合い始めたそうです。彼女なりに試行錯誤を重ねた1年半が実を結んだのではないでしょうか。

 今回のテーマは、大人女性の恋愛とプライド。

 見た目やキャリアなどを磨き続けてきた人ほど、相手にもそれを求めたり、「勝った負けた」を比べたり、恋愛がうまくいかない人をよく見かけます。さらに、そんな人の多くは、「10代20代のころは声をかけられることが多かったけど、最近はなくなった」と言うのです。

 原因は、年齢を重ねるにつれて、その人を見る周囲の目が変わったから。大人の女性らしい優しさや包容力、安心感を求めるようになり、美ぼうやキャリアだけでは魅力的な女性だと思ってもらえない年齢になったのです。

 澄香さんのような人は、まず必要以上のプライドを捨てることから始めたいところ。それは、自分も、周囲の人も、出会った男性も、見た目やキャリアなどで判断しないことであり、自ら「恋人を探しています」と言えることです。

 さらに、大人の女性が自ら話すとしたら、長所ではなく短所。大人の女性は、笑って弱みを見せられる方が、モテるのです。逆に、相手に対しては、短所ではなく、長所を見るようにしてください。

 また、新たな恋の相手を探すのであれば、“見た目やキャリアが恋人選びの基準になりにくい”場所にしたいところ。恋愛以外の明確なテーマがあり、お互いの人柄を理解し合えたり、一緒に体感したりできる方が、スムーズに距離を縮めていけます。

 今まで培ってきた自分自身にプライドを持てるのは、素晴らしいことです。しかし、それは相手がいて成立する恋愛では、自ら主張するものではなく、時間をかけて相手に理解してもらうべきもの。相手を尊重することが、結果的にプライドを満たすことにつながり、恋心につながっていくかもしれません。
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(2011年11月14日 読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/otona/partner/love/20111110-OYT8T00606.htm?from=grank